大きな戦いが終わって -11-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
協会から新しい階級証明書が交付されて自分の行動の評価がされたわけで、伽里奈としてもなんだかんだでうれしくないわけではない。今のところは使う場所は思いつかないけれど、何かあった際は利用させて貰う事にしたい。
「特A級って国内にどのくらいいるんです?」
「吉祥院家の人間しかいねえぞ。あまりにも高すぎるハードルもあって、事実上あの家専用の特別なランクだ。それでも歴代で5位以上をとったやつはいないんだっけな?」
「霞沙羅、将来的には吉祥院家以外では多分君が歴史上初の資格者になるんでやんすよ」
霞沙羅のA級2位という事は、吉祥院家を除外すると、現在日本人最高ランクだ。
B級以上となると、必ず1~30の位それぞれに資格者ががいるとは限らない状態になる。A級となるとそれが顕著となって、飛び飛びになる。そして今は1位がいないのだ。
「1位とるのにあと何年かかるやら」
「3位から2位まで半年かかってないでござるよ」
「私の周りで事件が多く発生し過ぎなんだよ。そもそも大佐が前線に出ろってのがおかしいだろ」
「その大佐本人が積極的に出てきているじゃん」
まあそれだけ厄介な事件を解決に導く為に前に出ないとダメだったのもあるし、アシルステラに復帰した伽里奈と本格的に絡む事が多くなって、魔術的な知識量がメキメキ増えているのも大きい。
「それはともかく、あるデータを見て貰いたいんだよね」
吉祥院は2人を、協会建物内にある自分の執務室に連れて行った。
そこにあるPCを立ち上げて、吉祥院はそのデータとやらを見せた。
旧23区における、厄災戦からずっと残留しているマリネイラの魔力を地域ごとに測定したデータだ。
廃墟となってインフラも壊れ、入る事にも困難を要する旧23区内にセンサーを仕掛けてはいないから、各観測所からだったり、定期的に飛ばしている無人機が拾ったデータになる。
「面白いのがワタシらが2体の幻想獣を倒す前と後なんだけどねえ」
上野周辺と二子玉川周辺のその魔力濃度に大きな変動があった。早い話が事件の前後で大きく減っている。
「この2ヶ所だけだけどねえ、特に上野というか旧台東区を中心に予想値の十数年分が一気に減っているんだよね」
魔力は年々少しずつ薄らいでいっているから、寺院庁による浄化はここから除外して、計算された減少予定の12、3年後の数値と同じになっている。
「あの白い幻想獣が動くのにそれだけ消耗したって事か?」
「へー、すごかったんですね」
「二子玉川も5年分くらい使ってるよ」
「あ、ホントだ」
「連中が起こした事件が、逆に浄化を推し進めたって事か?」
「そうみたいなんだよね。これまであんまり旧23区には手を出してなかったから、あの魔工具を使って幻想獣が吸収したんだろうねえ」
その直前に一体潰しているけれど、そっちはそこまで大きな減少は起きていない。そっちは普通に成長しただけなのだろう。
まあ一概に完成態と言っても、その中でも質の違いが大きいので、今回の2体はかなりの性能だったという証拠だ。
「これで旧23区の復旧が早くなるかもね」
全域というわけではないけれど、復興については安全が確保できるようになった地区毎に瓦礫の撤去は行われる構想なので、まあ予定より少し早く旧23区には人が住めるようになっていくだろう。
リスク分散の観点から、町作りにも住民人口が制限されるだろうことが予測されている。それもあって以前の状態に戻ることは無いし、ある程度地方分散された首都機能が帰ってくるわけでも無い。一応地名はまだ「東京都」ではあるけれど、いずれ名前は変わるだろう
「そう考えるとここは異常ですね」
「新宿だろ。ここが日本の厄災戦の中心地だからなあ」
今でも無人観測機も飛ばしていないエリアがあって、ここは周辺からの観測のみに留まっている。
あまり近寄っても計器がやセンサーが壊れてしまうので、決まった距離からの観測値に補正をかけての、仮の数値ではある。
「ここに人が観測で入れるようになるにはあと50年でどうかってくらいだからねえ」
1回だけ調査隊を行かせたことがあったけれど、何の情報も得られないまま誰も帰ってこなかった。
だからといって霞沙羅達に行ってこい、とも言われない、そのくらいの場所。せいぜいが高高度の上空から見守ることしかしていない。
「ここは無視するとして、今回の件でちょっとは良くなったって話だよ。ぬか喜びもあるから国民にはまだ内緒だけどね」
まだ一週間程度の変化だから、確たることは言えない。このまま一ヶ月二ヶ月と長期に観測すれば、あるいはもう少し広くに発表できるようになるのかもしれない。
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