大きな戦いが終わって -10-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
幻想獣感知器の件、ダンジョンの件、アイザック逮捕を初めとした金星の虜関係者逮捕、それから二子玉川の件を評価されて、伽里奈は魔術師協会からの呼び出しで、横浜にある本部へ出頭した。
「二子玉川の件て内緒だったんじゃ?」
「しょうがねえだろ、説明つかねえんだから。その前にも私とタッグで鐘の幻想獣を倒してるんだから、協会は納得してるぜ」
「もう今後はこういう大きな事件は起きてほしくないんですけど」
「一年以上はお前に出番が回るようなのは何もねえだろ」
当然霞沙羅も対象者だ。
「吉祥院はどうなんだよ」
「私も一つ上がるようでありんす」
「まあそうだろうな」
魔術師ではない榊は、所属している剣士の組織での段が上がるそうだ。
なお、剣も使える霞沙羅はそちらの組織には参加していない。その影響力から登録のラブコールを受ける事はあるけれど、今のところは断っている。
「アリシア君はここ数ヶ月で2回の昇格でやんすな。このご時世にはなかなか無い上がり方でありんす」
霞沙羅と吉祥院共々、厄災戦の時にいくつもの大戦績をあげたので、当時は何度も上がった。それこそ1ヶ月に2回も昇格したこともあった。
それに比べれば、たいしたことは無い。
「こっちの世界は、大きな事件が起きすぎですよ」
「それについては何も言えんなあ」
そこを突っ込まれるとぐうの音も出ない。町を出れば魔獣が歩いているようなファンタジーな世界よりも、なぜか事件が多い。それは妙な神が影響力を持っているからだ。
とにかく伽里奈はとてもよくやってくれた。ダンジョンの件はちょっと違うけれど、こちらは魔術の発展に寄与したからだ。宝物庫のあり方も今後は変わるだろう。
「まあ霞沙羅さんには鎮魂の儀があるので、おあいこですけどね」
そのくらいどうでもいいのに。
いいやつだよなー、と思いながら3人で新しい資格証明書の交付を受けた。
吉祥院が特A級の24位で、霞沙羅がA級の2位、伽里奈がB級の25位となった。
「小樽校に研修に来た他校の生徒には絶対見せるなよ。特に横浜校の奴らにはな。そのランクなら発狂するぞ」
魔術師B級になったとか、横浜校の大学の教授でも何人が在籍しているのか、というくらいだ。
「もうこうならないために、お前には軍の教育にもう少し手を貸してほしいものだな」
また約一年半後には金星の接近がある。それまでに人材を整えるのだ。そうでないと、霞沙羅がめんどくさい事に首を突っ込む事になってしまう。そろそろ部下達に全部任せたいものだ。
こいつ、なんでこっちの世界にいるんだっけ? と考えると、新城霞沙羅ともあろう者がちょっと善意に甘えているところがある。
やどりぎ館の管理人だから、というところをさっ引いても、ちょっとやりすぎかなと思う。それもあって、もう伽里奈が現場に出て行かなくてもいいようにという考えもある。
まあとにかく鎮魂の儀は真面目に対応しよう。
「これでアリシア君は指導者の権限がおまけでついてきたでやんすよ。だから教員資格が無くても、堂々と軍でも学校でも教師なり教官が出来るでござる。そう考えると横浜校にもたまに顔を出して欲しかったりしちゃったりして」
「え、なんですかそれ?」
「お前は『師』になれるんだよ。そっちもあるだろ師弟制度ってのが」
魔術師養成学校を卒業していなくても、『師』が教育して育てた弟子を協会に推薦して、規定の試験を
受験させて合格すれば、大学卒と同じ扱いで魔術師に登録することが出来る制度がある。あまり例は無いけれど、例えば僻地に居を構えた魔術師が地元で見つけた才能ある若者を育て上げるという事が何年かに一度ある。
吉祥院が伽里奈に試験を受けさせたのもこの権限を使ってのことなのだけれど、彼女は吉祥院家の特権を使ってる。吉祥院家の人間が目をかけたのであれば、間違いない、という事だ。
アシルステラでもたまに、塔なんかを建てて引きこもった魔道士以上の人間が、趣味だの好意だので育てた弟子を学院によこしてくることがある。
「たかだかB級ですよ?」
「B級は恐らくそっちで言う魔道士階位二十位くらいはあるぜ。A級なら10位以上くらいか」
特A級は賢者から天望の座クラスに相当するくらい。
「教える相手はいませんけど」
「まあとりあえず札幌駐屯地で文句を言うやつはいなくなったって事だ」
「文句を聞いたことは無いでござるが」
霞沙羅が伽里奈を連れてきた時に、いきなり2人での戦いを見せたので、部下達は黙ってしまったのが真相だ。
ただ、この春から新規に入隊するであろう大卒者には効くだろう。
「小樽大の教授陣でもお前を超える位置にいるのは片手で数える程しかいないぜ」
「えー、やな感じがしますねー」
春になったらシャーロットはいなくなるし、どうなるのだろうか。
少なくとも高校にも大学にもアリシアが教わるような事は何も無いから、授業を受ける必要など無い。かといって、もう普通科に戻れるような状況ではないから、さあどうしよう、と考えているところだ。
ただ、とてもやる気を出してくれている一ノ瀬達は今後も見守っていきたいから、学校をやめたいとは思えない。どうするのが正解なのだろうか、それが悩みどころだ。
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