大きな戦いが終わって -8-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
週が明けてシャーロットは再び国立小樽魔術大学付属高校の生徒として帰ってきた。
結果のことは知っているけれど、1年E組の生徒はシャーロットの結果を知っているけれど、本人の口からの説明を聞いてから、大学への飛び級進学を祝ってくれた。
「ラーメン、ラーメン食べに行こうぜ。俺たちのおごりで」
「お薦めはこのあたりなんだけど」
休み時間には中瀬達数名が前から計画していた、シャーロットにラーメンを奢ろう、を実行するために話題を振ってきた。
伽里奈は館の管理があるからと同行することは断ってあるので、シャーロットにはこういう機会を使って学生同士で放課後に食事をするという体験をしてほしい。
こんな事が出来るのは小樽にいる間だけだろう。
ロンドンの大学に入ればまた毎日、講義や演習に研究にレポートにと勉強に追われる毎日になるだろうし、他の学生と関われるような環境かどうかも解らない。
伽里奈は料理自慢だけれど、こういう形で食べる食事は不思議と美味しいモノだから、ロンドンに帰るまでの思い出作りは積極的に行って貰っていいと思っている。
これは多分、霞沙羅がやたらとTRPGの話しをするのと共通している。飛び級のせいで短くなってしまった学生時代の隙間時間に体験出来た、普通の学生らしい時間は、霞沙羅にとっては大切なモノなのだろう。
だったら尚更、シャーロットだって普通の学生が当たり前に通る経験を、少しでもした方がいい。
「えー、お店って言われても解らないわ。地元の人的にはどれが一番お薦めか教えてよ」
スマホで小樽で味自慢のラーメン屋のページを見せられて選ぶよりも、地元民が行くお店の方が確実だろうと考えて、シャーロットは中瀬達に決めて貰うようにした。
「味噌ラーメンになるんだが、この店が場所的にも具合が良さそうだな」
やどりぎ館の場所もあるのであまり遠くには行かず、小樽駅近くのラーメン屋に決まったようで、早速今日の放課後に行くようだ。
天気も今日は晴れているのでちょうどいい。自分のことは気にしないで、存分に学生時間を楽しんできて欲しいモノだと、伽里奈は(アリシア)お店で何を食べるか盛り上がっているシャーロット達を微笑ましそうに見た。
* * *
「横浜校からの研修が明日から来るから、舐められないようにしないといけないわね」
シャーロット達が味噌ラーメンを食べに小樽の町に行ってしまった裏で、伽里奈達は今日も魔法の練習をしている。
今日は土のゴーレムを見に、教師や大学からは講師や教授達もやってきている。
暦はもう2月に入って、雪の季節も終わりが見え始めているので、いつまでもスノーゴーレムが使える気候ではなくなってくるから次を考えないといけない。
材質が違っては設定するパラメーターも変わるので、術式をそのまま転用することが出来無いということで、授業の教材として安全に使うためにも調整がいる。
「吉祥院にバレるまでに、形にしておこうぜ。いくらあいつでも、人形は使えてもゴーレムは素人だからな」
なんと言っても戦闘でいくつもの戦果を上げたプロ中のプロこと伽里奈がいる。このまま小樽校がゴーレムのフォーマットを作ってしまえば実績となる。
実際のところ、吉祥院はあんまり学校全体のの教育内容に興味を持っていない。それに今はダンジョン作成と人形作成という新たな玩具…、技術を手にしたので、そちらの研究で忙しい。
横浜校の他の教師や教授でも小樽校をライバルとして目を向けているようなのもいないので、この隙を突く。
シャーロット問題も解決したし、留学期間も終わりが近づいているので、小樽校の事で吉祥院が巡回に来ることはもう無いだろう。
なんと言ってもこちらには英雄アリシアとルビィだけでなく、その後ろには魔法学院というブレインまでいる。
霞沙羅vs吉祥院では、魔術の分野ではさすがに勝ち目は無いが、別世界の学校に関わっている2人の技術をここで利用したい。
ルビィもこちらの初級魔術をマスターしたのであれば、中級上級と理解するまでにそう時間はかからないだろう。使っている教材は苦労して習得した伽里奈が作成したモノなので、とても解りやすく作られている。
飛び級の上に歴代トップクラスの成績を残した卒業生ではあるけれど、霞沙羅にとってはいつまでも横浜校が幅をきかせるのは面白くない。
こちらにはこちらのいい点があるのだから、互いにその土地故のいいところを融通し合って補えばいいと思っている。
そして予算を小樽校に、一円でも多く奪うのだ。
「ほら伽里奈アーシア、早くゴーレムを作りなさい」
「あーい、じゃあ今回はサラマンダーってところで」
「だからなんだってこんなゲームのキャラばっかりなのよ」
威嚇の為に後ろ足で立ち上がったら全高三メートル程度にはなる、翼の無い大型トカゲ、ドラゴン系統のモンスター。
学習用ゴーレムなので勿論口から炎を放つことは無いけれど、今回は幻術を組み込んでいるので、攻撃をイメージさせた赤い明かりを照射してくる。
「ただの明かりだけど、あれに当たらないような感じで攻撃してねー」
そんなわけで攻撃力は皆無だが、わかりやすい。
「お、面白そうじゃない、伽里奈アーシア」
「へー、こういうのありじゃないのか」
今林3兄弟も、今回は今までに無いギミックがある事に興味を示した。
教材なので攻撃をしてこないのはいいけれど、それに安心してしまっては、さすがに緊張感が足りないなと思っていたところだ。
ゲーム感覚ではあるけれど、これを有効に使っていければ攻撃を避けるという体験も出来るかもしれない。
「攻撃を受ける体験については、私の方でちょっとやり方を考えておくか」
当たっても被害が全く無い、というのは安全ではあるけれど、上級クラス生や大学生に対してはもう少し攻撃をしながら避けるという事を生徒に意識させたい。
特に大学では学生の将来のために、より実戦に近い経験を積ませる方がいい。本気で避ける事を意識させる何らかの設備を作るかと、霞沙羅は考えた。
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