大きな戦いが終わって -4-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
翌日の学校ではシャーロットが帰ってくることを報告した。勿論、大学入学が決まった事も報告すると、クラスの子達は喜んでくれた。
「出てくるのは週明けからなんですね?」
「帰ってくるのは今日の夕方なんですけど、時差とかありますからねー」
今回も空間転移魔法を使って帰ってくるという話になっている。
ここはむしろ変に飛行機と誤魔化すよりも、そっちの方が時差ボケの理由としては強い。ロンドンで朝に起きたら小樽はもう夕方だから、それは時間感覚がおかしくなるだろうなと納得してくれた。
「ゆっくりと調整してもらって、また元気な顔を見せてもらうとしましょう」
圧倒的に上位の才能を持つけれど、愛されキャラのシャーロットがE組に復帰する事に、クラスメイト達は喜んでいた。
「それと横浜校からの研修生達も来週から来るのよ。校内で会うことは無いけれど、まだ金星接近時期なので、町中で何かあったら誘導をしてあげてください」
授業時間中は小樽校敷地内から出ることは無いけれど、折角北海道に来たのだからと、門限の20時までは小樽の町に出てもいいという程度の自由時間は確保されている。
外出はグループ単位での行動という話だけれど、さすがにちょっとくらいは観光をさせてもらえる。
結局どこに行っても雪から逃れることは出来無いので、観光で出歩いても寒冷地の移動の勉強にはなるという意味もあるらしい。だから戦場になるかもしれない町を歩いてこい、と。方便のようにも聞こえるけれど、そう言って貰う方が学生も出かけやすいのではないだろうか。
たださすがに札幌まで往復で観光するような時間的な余裕は無いから、最終日には夕方のフライトまでの間はバスをチャーターして札幌の観光地に行くようだ。
「小樽は、何も起きませんでしたけどね」
一人の生徒が言ったように、今回は小樽では幻想獣が出ることはなかった。
「それはそれとして、可能性はまだ残されているのよ」
「はーい」
横浜と神戸からの研修生はこれを皮切りにしばらく続くので、学生同士が町のどこかで会うこともあるかもしれない。いくら何でも喧嘩になるようなことはやめてほしいところだ。
* * *
そして夕飯前には裏の扉を開けてシャーロットが帰ってきた。
「あーん、キュートな黒ネコちゃん発見」
「にゃーん」
ロビーで早速にアマツを見つけたシャーロットは、ソファーに座って、膝の上に乗せてなでなでし始めた。
アマツも久しぶりにシャーロットになでられて気持ちよさそうにしている。気まぐれなネコちゃんとはいえ、構ってくれる住民が帰ってくる事は歓迎しているようだ。
「ジェイダンさんはこっちに来た魔術師と合流ですか?」
それと父親のジェイダンがシャーロットについてきた。
今日もスーツ姿がきまっている。まさに英国紳士の鏡だ。
「いや、改めて娘の滞在についての挨拶に来た。それと新城大佐にもアイザックについての礼をと思ってな」
「そうですか、霞沙羅さんが帰ってくるまではもうちょっとかかりますから、座ってお待ちください」
「ああ、失礼するよ」
夕飯までにはもう少し時間もあるから、霞沙羅と榊が帰ってくるまで待って貰う事にして、伽里奈はお茶を出した。
「実の娘という事で、私は試験官からは外れていたのだが、評価をした人間達からの反応は軒並み良かったようだ」
今更言うのも何だけれど、シャーロットをこの家に預けた時は、大学進学後の研究テーマを持っていなかったから、小樽大の附属高校に通う事でこの子なりに方向性を見つけられて良かったと思うという話だ。
「提出したレポートもこちらの学校での経験が生かされていたようで、本人からの説明に大学の教授達も納得していたよ」
「そうですか、それは良かった」
「娘を支えてくれて大変助かった、伽里奈君。礼を言わせてもらおう」
やっぱり成績だけが合否判定ではないんだなー、と。それの手助けが出来たのなら伽里奈は管理人としての役割を果たせたんだろう。
「この子の希望としてはもう少しこの館にいたいという事だ。引き続き学校の生徒達を見たいというし、そこで大学の準備もしたいようだから、私としても頼みたい」
「ええそれは、いいと思いますよ。クラスの子達もシャーロットが帰ってくるのを喜んでいますしね」
言っては悪いけれどごく普通レベルの魔術師の卵達に囲まれて、天才と評される娘がうまくやっているのが父親としては冗談のようではあった。
明るい性格だけれど、イギリスでは個人授業で、他の学生との交流はほぼ無いから、年上の学生達との話題が無いんじゃないかと思っていた。
それに授業中は、授業に参加するというよりも、伽里奈の話を聞いては流れを俯瞰しているような話だった。
けれど伽里奈が行っている教育改革を手伝うことでクラスメイト達と交流して、料理授業なるシャーロットにアドバンテージが全く無い経験もして、クラスの中に入れている。
そうやって普通のクラスに溶け込んだことで、一般的な学生達の生の声と反応を見る事が出来て、それに基づいたしっかりとしたレポートの作成が出来たのだろう。
「時々は大学側から呼びつけることもあるだろうが、もうしばらくお願いする」
親バカかもしれないけれど、能力を考えれば当然と言えば当然の試験通過ではあるのだけれど、年齢的にはまだ中学生の娘が、この数ヶ月で将来の方向性を見つけられたのは、魔術師の親としてうれしい事だ。
将来的には、偉大なる王国の魔術師として次世代の子供達を導く存在になって欲しいと、親としては期待したいところだ。
そこにアンナマリーが帰ってきた。
「お、シャーロットじゃないか。やっと帰ってきたのか」
今すぐにでも隣に座って話をしたいところだけれど、訓練で汚れて帰ってきた事もあって、軽く挨拶だけしてアンナマリーはお風呂に行ってしまった。
「アンナも私が来た頃に比べても随分たくましくなってきたわね
「大きい事件はないけど、町の周りの魔物とか、この前はこんな小さい人形と戦ったりしてるからねー。色々と経験しているんだよ」
相変わらず強がったような口調のままだけれど、職場の話を聞いたりしてもある程度の余裕は出てきていると感じる。
腕の方はまあ、霞沙羅と伽里奈に相手をして貰っているのを見て、ジャンル違いとはいえ自分と比べてはいけないけれど、段々と形にはなっている。
「彼女が異世界の貴族のご息女か。娘から色々と話は聞いている。改めて礼を言わなければな」
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