大きな戦いが終わって -3-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
その晩はシャーロットから連絡が入って、明日にでもやどりぎ館に帰りたいと言い出した。
イギリスにも日本からの大きなニュースが入ってきて、それで安全を確認したからのようだ。
懸念事項だったアイザックは逮捕されたし、「安らぎの園」の事件も終わった。以降の大きな混乱もないし、これならもう危険は無い。
「試験はどうなったんだ?」
安全になったから、ではない。アンナマリーも試験のことは気になっていたから、まずその確認から入った。
「もちろん昨日に合格の結果連絡はもらってるわよ。これでもうこっちの高校に通う必要は無いから、まあどこかで形式的に卒業式に出なきゃならないけど、それはまた先の話ね」
「おー、そうなのか」
それなら今すぐに帰ってきて大丈夫だ。
「パパもいいって言ってたし、今日はこれからお土産を買いに行くわ」
「ロンドンは金星の影響は無いのか?」
事件が終わって、会見も終わって、霞沙羅が館に帰ってきた。
残念ながら、しばらくはテレビ局回りがあるようで、北海道での軍の仕事は無い。
明日はすでに国営放送の特別番組出演が控えているから、なにやら苦々しい顔をしている。
「グランパからは、金星の虜相手に小規模な逮捕劇があったって聞いたけど」
「首都だし、そっちもあったんだねー」
「まあ金星の接近は全世界的な話だからチャンスだとでも思ったんでしょ。それで、お茶とチョコを買って帰るわ。我が王国の本気を見せてあげるから、お茶しましょうね」
「チョ、チョコだと」
チョコと聞いてアンナマリーは喜んだ。日本のチョコもいいけれど、どんなチョコが食べられるのか楽しみだ。
「良いではないか」
ホールストンの家からは以前に紅茶をもらった事があったけれど、さすが本場という事であった。フィーネ的にも文句などあるはずがなかった。
今度はどこのブランドかわからないけれど、同じであっても文句は無い。お菓子共々楽しみにしておこう。
「それで高校にはいつから戻る気?」
「来週?」
「休みもあるし、そうだねー。じゃあ学校には言っておくよ」
「はーい。ネコちゃんにもセレブな高級ネコ缶を買って帰るからね」
「ニャーン」
話の意味がわかったかどうかはわからないけれど、シャーロットの「ネコちゃん」の言葉にアマツが反応したようだ。
スケジュール的には明日の夕飯前にやどりぎ館に帰ってきて、食事の後は深夜までちょっと夜更かしして、明後日は遅く起きるなどして時差の調整をするとのこと。
明日のやどりぎ館の晩ご飯は、時差の関係で朝食となってしまうシャーロットだけ軽めにして、夜更かし対策で何か夜食でも用意しておくとしよう。
自分で白クマちゃんの袋麺を作るとか言いそうだけれど、それならそれでいい。
* * *
「めんどくせえよなあ」
霞沙羅達3人は指定された時間通りに国営放送局の収録スタジオに入り、その控え室でぼやいた。
「別に私らだけで解決したわけじゃねえのによ」
「今回はアリシア君のありがたさがわかったでありんすな」
「まあそれもあるんだがな」
そうではなくて、今回は色々な人に協力してもらった。警察は、軍には無い捜査能力を発揮してもらったし、容疑者逮捕はさすがに彼らの仕事だ。
とは言っても最初に「安らぎの園」所属の人間を捕まえたのは間違いなく伽里奈で、あの時ありったけの情報を引き出せたのも、彼が得意とする{戦意高揚}による。
たまたまとはいえ、あそこからすべてが始まった。
所持していたたった一枚のシールを見抜くとか、どんだけ警戒心が強いんだと思ったくらいだ。
基本的には6人だけで旅をしていたからこそ培った警戒心なのかもしれない。恐らく習慣として自分のいる周辺の環境を疑っているのだろう。あの性格で大したものである。
霞沙羅も職業柄どこかしら疑っている面はあるけれど、その度合いはそれ以上だ。
軍人でもない伽里奈にそんな事をやられてしまったから、軍本部も警備体制を見直すと言っていた。あと教育も。
「お前がもう一人いるっていうのは、かなりの効果だったな」
榊が言っているのは霞沙羅がもう一人、というか、同じ事が出来る人間がもう一人いるという事だ。
普段ならいない場所に霞沙羅と同等レベルの能力を持った人間を置いておけるから、そっちの心配がいらず、やれる事が増える。
「能力は分割するとして、各分野に秀でた人物を育てる必要があるでござるな」
自分達や伽里奈と同じクラスの人材を育てるのは今のところ無理だろう。だから何人かに、それぞれ習得させる能力を分割する方法が良いだろう。
「ホント、そう思うぜ」
伽里奈がこっちにいる間に、スペシャリスト養成の教育方針をまとめたほうがいいのは確かだ。
それに伽里奈も故郷の魔法学院で何かをやろうとしているので、日本流とフラム王国流で互いに得たモノをそれぞれの場所に持ち帰ればいい。
そこにドアがノックされた。毎度毎度とっかえひっかえに来て、一体何人いるんだとツッコみたいくらいの人数がいる番組ディレクターの一人が顔を出して、そろそろ時間なので、と呼びに来た。
「じゃあ行くか」
霞沙羅達はスタジオに向かった。
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