あとはぶっ潰すのみ -7-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
新宿周辺での作業を終えたカナタ達3人は、物見遊山のために、溝口の多摩川沿いにやって来ていた。
上野の方は霞沙羅達が行ったのでいいとして、幻想獣が多数発生した二子玉川付近が気になった。
旧23区を囲むように軍も展開しているから、対処は出来るだろうけれど急な事なので、どの程度の被害が出るのかなと思っていたけれど、どうやらそんな事は無い。
被害は全く出ていない。
そんな事情もあって、集結した軍に邪魔されて多摩川沿いには出られないし、安全のために多摩川から先へは民間のヘリやドローンも飛ばせないけれど、マスコミ各社によるテレビやネットでの動画やらの中継が続いている。
「札幌でちょっとだけ出てきた星雫の剣の本体はいるし、そんなことよりなんで神がいるのよ」
最前線にいる3人の姿は遠すぎて殆どカメラには映っていないし、エリアスの力はちょっとまぶしいだけでまともに肉眼で見えるようなことも無い。
それでもこれまで色々な場所に行ったカナタ達は離れたところでもそれが何なのか解る。
少人数とはいえ、ここまでぶっ飛んだメンツが揃っていれば被害が無いのも納得だ。
「神と言っても神に作られた神のようですが、あれはこの場所のではなく、アシルステラのアーシェルとかいう大地神の関係ですわね」
「この場所にはあんなのがいたのか」
バレるのを嫌ってか、強大な力を振るっているわけではなく、一緒にいる人間のサポートをしている程度。とはいえその力の規模は人間レベルではない。
「あんなのをパートナーに手に入れた人間がいるのですね。となると、やはりあのアリシアとか言う少年ですか。先日のラスタルにいたのと同じ人物のようですから、彼の持ち物なのでしょうね」
持ち物というと言い方はおかしいけれど、女神と共に生きることを選び、神からも承諾された人間だ。
世界を救った内の一人、というのならそういう資格があってもいいかとは思うけれど、本当にやってしまうとは。ヤマノワタイに伝わる過去の記録にも、そういう人間がいたことは確かに残っているけれど、現物は初めて見た。
しかしこうなってしまうと、作り物の幻想獣が可哀想だ。あの英雄だけでも相当の強さなのに、それ以上のが2人もいるせいで、まるで相手になっていない。
本当はそれなりに高い能力を持った幻想獣なのだろうけれど、3人の前には雑魚と言ってもいい小者達はあっという間に駆逐されて、いつの間にか完成態一体だけになってしまった。
番組実況も、信じられないっ、といったハイテンションとなっている。
多摩川を越えていたかもしれない熱線も見えない女神の力に阻まれてしまった。あれがこっちまで来ていたら、威力は大夫落ちていても、人が多く住む町にそれなりの被害が出ていただろう。
「ダメそうならちょっとくらいは手を出そうかと思っていましたが、必要は無いようですの、おかげでいいものを見ましたわね」
* * *
東京で起きている騒動を知って、吾妻社長は溝口に住む家族に連絡をした。
本番の作戦が展開中の上野はともかく、別の事件が起きている旧二子玉川と言えば夫と娘のいる溝口の近くだ。
特別番組の映像でもかなり大きな幻想獣の姿が映し出されている。歩を進めているのは当然、人が住んでいる川崎市方向なので、二人は無事か、とこれは慌てた。
こんな時だし電話での連絡はつくのか、とかけたけれど、案外あっさりと繋がった。
「大丈夫なの? 避難はしているの?」
「避難はしているよ。ここから肉眼では見えないけれど、ネットの映像では幻想獣達は東京側で食い止められているようだ」
安全圏にいるようで、夫の声も落ち着いている。
避難先の大型テレビでも、軍のすぐ側まで近寄ることが出来た国営放送が、一番臨場感のある画像で放送をしている。
その中でも、軍人が持っているという感知器には、高いカメラのズームで機能を使って生中継されている怪獣のような大きさの幻想獣しか残されていないという。
その大きな幻想獣は熱線を吐いたけれど、強力で見えない壁に阻まれたとかで、川崎には一切の被害は出ていない。
「上野には新城大佐達が行っているようだけれど、別の人間が少人数で対処しているらしい」
「なんか見た人がいて、女の子が3人であっちに行っちゃったんだって」
とSNSに書き込みがあった。
横から会話に入ってきた娘は興奮気味。
「女子が3人なの?」
「なんかすごいよね」
魔術師志望だから、自分と同じ女子が活躍しているというのが堪らない。霞沙羅や吉祥院も憧れの人だけれど、誰も知らない新しい人間の登場となると気になる。
高校の試験まではあと少し。やる気が出てきた。事件が終わって家に帰ったら、すぐに勉強を再開するのだ。
そういえば、小樽校に行けば、少し前に勉強を見てくれた伽里奈とかいう人の後輩になるのか。
あの人はとても優秀そうで、それで優しかった。女子っぽい男子だったけれど、頼りになりそうでもあった。
それに母親の会社のHPで見た、所属モデル達の座談会で話にあがっていた料理を作ったのもあの人らしいから、一度食べてみたい。
「だから大丈夫だ」
「そ、そう? それならいいけれど」
吾妻社長が見ている報道番組では、大きな幻想獣が多摩川を越えた位置まで轟音が響くような大きな爆裂系の魔法を受けて、バランスを崩して倒れた。
テレビからも軍人や報道陣からの大歓声が聞こえる。
「そんな感じね」
霞沙羅か吉祥院が育てていたのか、それともあまり知られていない傭兵か。
あれがたった3人の女子の仕業とか、一体どこからやって来たのだろうか。
とにかく家族が無事で良かった。
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