あとはぶっ潰すのみ -1-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
草加市の警察署に市民から、40人ほどの人間がとある公園の一角の地下に消えていったという情報が届いた。
時間的には深夜だったけれど、場所が旧23区の境界線がある近所なだけに、すぐさま現場の調査を行うと、あるはずの無いハッチから伸びる地下への入り口が発見された。
その先にあったのは、厄災戦の被害を受けて閉鎖されたはずの地下通路。この通路の先には東京がある。
そして埋めたはずの通路は人が一人通れる程度の穴が開けられていて、通り抜けが出来るようになっていた。多数の足跡も残されていて、ここから抜けて旧23区に入ったのだと断定された。
「結局ダメだったか」
やどりぎ館で待機していた霞沙羅達に、軍の本部から呼び出しの連絡が入った。
それでも一日はゆっくりと休めたからいいか、とは思う。
「最終目的地は吐いたそうでやんすよ。上野、上野公園でありんす。新宿から離れているから上空から少し前から監視を始めたっぺ」
あの辺は上空からの監視の邪魔になるマリネイラの魔力は無いから、航空機も使っての警戒が始まっている。
しかし、旧23区を囲んでいる境界線からは離れた位置にあるので、追跡のための兵隊を送り込むにも、普通の手段では途中にいる幻想獣を撃破しつつの進行となってしまい、時間がかかる。
「金星の虜は、例の魔法があったな」
「そうなると徒歩とはいえ、向こうの方に分があるな」
その事は榊も知っている。
今の所、すぐさま自分達に行け、という話ではない。そうならないために、軍はヘリや空間転移を使い、あまり多くは無い追跡部隊を上野公園に送る準備をしている。
3人はあくまでも阻止に失敗してからの出番。その為の後方待機だ。
「気をつけて下さいよ」
さすがに伽里奈は軍から呼ばれていないし、今回は霞沙羅達からも来いとは言われていない。
来てくれれば霞沙羅がもう一人増えるようなモノだからとても助かるだろうけれど、軍という組織的な作戦ともなると、教育係の契約をしているとはいえ部外者。そういう人間は邪魔だ。
「まあ余程のことがあれば、我も少し手を貸さぬ事も無い」
館の住民に関わる事だから、どうしてもどうにもならないようなら、モートレルの時のようにフィーネも目立たないように手を貸すつもりだ。
「動く気が無いという事は、私らでどうにかなるって事だろ?」
モートレルの時と違って、霞沙羅には組織がついている。ゲリラ戦的な事にはならない、軍公式の作戦にトカゲ人間を繰り出すようなマネはしたくない。
「だからといって気を抜くでないぞ」
「それは嫌ってほど解ってるよ」
「一つ忠告じゃが、後ろのことは気にせんで良い。お主らは目の前のことに集中するのじゃな」
「あー、解ったぜ」
北海道であっても国営局のテレビ番組は旧23区に関しての特別放送を始めた。上空からの映像はないが、多摩川や江戸川、その他境界に近寄らないようにと警告文が流れ始めた。
「行ってくるでありんす」
そして3人は横浜の軍本部へ転移した。
「小僧、小娘女神を呼んでこい」
「エリアスですか?」
「あやつがまたへこむのも嫌じゃからのう。それに我にも義理というモノもある」
この女神様の言うことには従った方がいいなと、伽里奈は部屋にいたエリアスを連れてきた。
「小娘、今は川崎に跳んだ方が良いぞ」
「それがフィーネの未来視?」
「まあそうじゃな。あの吾妻には先日の恩がある。それに得意先じゃしな」
「川崎市って、吾妻社長の家族が住んでるねー。でも今回は上野だから随分遠くないですか?」
「我の言葉であるぞ」
さっき霞沙羅に言っていた「後ろ」とは神奈川方面の事なのかということが解った。
フィーネが言うなら、上野から距離のある川崎の、確か、吾妻社長の家族は溝口に住んでいるから、その周辺が被害に遭うということか。
エリアスがどうとかという意味はそれだろう。
「そうですか。伽里奈も連れていくわ。こっちの世界で上手に力を使えるか不安だから」
「折角だから私も行きましょうか?」
戦いの話を聞きつけてシスティーがウキウキでやって来た。空霜も起こしたので、大きな事件がありそうだと期待していたのだ。
「システィーか、それも有りじゃな。剣になるかどうかは現地で考えい」
「夜はどうします?」
「そんなモノは適当に済ますわ。金ならいくらでもある。貴族の娘のことは気にせんでよい。今はこの家の人間に関わる事件に対処するのじゃ」
夕飯のことなど気にしなくていい。何なら明日の夕飯を頑張ればいい。
「じゃあ、明日はちゃんと作ります」
「うむ、期待しておるぞ」
だとしたら、あんまり伽里奈=アーシアだと解らないようにした方がいいかもしれない。テレビやらネットやらに姿が映る可能性がある。
「じゃあ服を変えて行こうかな」
だから久しぶりにあれを出そうか、と決めた
「我に白を勧めておいて、今更小僧は黒を着るのじゃな?」
「せいぜい盛って行かないと、下手にシスティーを使う事になったら大騒ぎですからねー」
地球に存在しないはずのもう一本の星雫の剣の持ち主が自分だと小樽の人間に知られるワケにはいかないから、盛り盛りで女性的な姿をしていくのがいい。
「それに、白も似合っているじゃないですか」
フィーネは先日札幌で買った例の服を着ている。服自体はフィーネが選んだモノだけれど、気に入っているのなら勧めた意味もあるというもの。
アマツも膝の上でくつろいでいる様子。余計な飾りの出っ張りがないし暖かいので、座りやすいのだろう。
「さ、さっさと行くがよい!」
褒めたのになんか急にキレられた。
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