実行阻止に向けて -3-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「中々面白いことになっているようですのね」
カナタにとってはもう用無しとなった「安らぎの園」はあれから中々の粘りを見せたが、状況を調べさせていたソウヤからの報告では、一気に組織の存亡に関わるほどの追い込みを受けていることを知った。
とはいえあの魔工具は健在で、何とか動くような状態になっているようだ。
結局のところ、彼らは逃げ場を失った状態だから止まるわけにもいかず、もう前に進むしかない。そこに警察や軍が追いつけるかどうかといったところか。
「独立した組織間の共通の関係者も逮捕されたそうだ。そこからどこまで他の組織を追えるかもあるな」
「邪魔だったものね。これで数が減るか弱体化するかで、邪教徒達は身動きが制限されるでしょうね。それで何があってこんな事になってるのよ」
どこにも属していない個人の協力者がいるような話はアオイも雑談で聞いていた。でも誰かまでは聞いていないけれど、どうやって探しあてたのだろうか。
「解らないが、現場でその人物が急に口を割ったそうだ」
「お疲れで気でも触れたのかしら」
まさか同志が悪意の無い罵りを受けて、つい声を荒げてしまったとは知るよしも無い。
「そうとなれば、こちらも情報をリークしておきますか。どう転がったとしても彼らに勝ち目は無いでしょう。それなら早く滅んで貰った方が準備時間が稼げるというモノ」
カナタには自分が製造したあの魔工具「教戒の杯」がどこにあるか解っている。
それが動き出したら「近所の住民」として彼らが旧23区に入るところを通報すればいい。
通販会社については、あれだけの人間が捕まればもう終焉が近づいているだろう。そこは一応義理という事で、放っておこう。
今回は見てきた中でも特に頑張った方だ。彼らは焦らなかった。単に相手が悪かっただけだ。
「早々にご退場願いましょう。遠路はるばるやってくる旅人を出迎えるには邪魔ですものね」
今回の件は多少の嫌がらせにはなるだろう。
* * *
目指すは上野。
草加の方から陸路で繋がっている元足立区を通って、荒川と隅田川を越えて、と結構距離はあるけれど、この日の為にもう何度も通ったルートがある。
先日、軍によって幻想獣の大規模討伐があったけれど、北側は出現数も多いというわけでは無いので、ここしばらくは軍による大規模な作戦が行われた話は無い。
といはいえ荒川にかかる、破壊されずに残された橋などは軍に監視されているという話だから、ボートを使ったり、所々で地下鉄跡を通り、と中々面倒な行程ではあるけれど、ゴール地点は決まっている。
こうなればもう焦っても仕方が無い。
上野の公園に眠っている幻想獣達と合流し、この教戒の杯で融合し、旧23区を理想の場所とする。
「用意はいいか?」
「はい」
この日のために用意した道具類は全て持って来た。
そして神官役から{臣従恩寵}という、マリネイラの加護を受ける神聖魔法を掛けて貰った。こうやってマリネイラの魔力を纏うことで、人間であっても幻想獣に味方認定され、道中
襲われることはなくなる。
これが軍や警察とは違い、マリネイラ信者が旧23区を安全に探索出来る秘訣だ。
「では皆の者…、行くぞ」
仮面の男の元に集まった40人の集団は、時間をかけて自分達の手で掘り返した、今は使われなくなった地下インフラ用通路に潜り込んでいった。
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