実行阻止に向けて -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「ここまで来て待機か」
ジェイダンが集めた魔術師達はエリアスの手でロンドンから横浜に送り、アイザック達の尋問に加わったとのことだ。
軍の方には例の魔工具の設計図を提出し、完成態の幻想獣への対応準備が始まっている。
完成態と言えば、大学襲撃の時に鐘の中から復活した事があったけれど、今回もあんなに処理が上手く行くとは限らない。
どこで何が起きるかについては、「安らぎの園」の活動場所からいって、恐らくは関東である事は予測がついている。
当然何かが起きる前に止める事を目指しているのだけれど、失敗した時の事も想定しなければならない。
その為の霞沙羅達だ。
「ワタシら3人は固まっていろとのお達しでやんす」
日本が誇る英雄3人組は何かあった時に呼び出しやすいようにしていろと、命令が下っている。それもあって霞沙羅は職場で余計な仕事を押しつけられることがないように自宅待機させられている。
ただ、空霜については鎌倉の実家にいてもらっている。
彼女ならどこにでも来る事が出来るので、今は鎌倉周辺に異変がないかの監視を命じている。
榊は雪が降るデッキに座ってイメージトレーニングをしている最中。その隣にはヒルダがやって来て、同じ事をやっている。
「お主らは少し働き過ぎじゃ。休める時に休むのは戦人の基本であろう」
軍が3人一緒にいろというので、やどりぎ館で一休みすることにした。
呼ばれるのはすぐか、それとも数日後か解らない。
「霞沙羅は結局ここにいても中央の事が気になるのね」
エリアスはヒマそうな霞沙羅の髪をといであげている。
「お前の伽里奈だってそうだろう。何だかんだで、モートレルの事件前も戻った時のことを考えていたからな」
「ガラは悪いでござるが、霞沙羅の正義感は強いでやんすよ」
「実際、実家があるからなあ」
家族と仲が悪いわけでも無く、地元に嫌な思い出があるわけでも無く、霞沙羅は高位の魔術師なので気軽に空間転移で行ったり来たりが出来るから、それ程までは、遠く離れた北海道は札幌の街で勤務しているという感覚はない。
だから横浜のことは気になるし、横須賀には吉祥院と榊もいるから何かあれば行くし、すぐに連絡を取る。
「その辺は小僧と同じじゃのう。毎日おるわけではないが、定期的に王都へ顔を出すから、上の連中も遠くにいることを納得しておる」
「近くでウダウダ言われたくないだけだよ」
アイドルもやらされて、この前は自分の影響力が解っているから自分からテレビ局に出向いたりする事も出来る。
この辺の感覚が会うのか、伽里奈と霞沙羅は姉弟のようにも見える。お互いに相手をフォーローをするし、この事件が終われば鎮魂の儀があるから、霞沙羅はアシルステラの儀式であってもちゃんと対応してくれるだろう。
「いい関係でやんすよ」
「まあ出来は良いぜ、あいつは」
「それはそうじゃろうのう」
「ところで今日の夕飯は何だ?」
「石焼き麻婆豆腐よ。ラーメンは落ち着いてからにするそうね」
霞沙羅達がいつ呼ばれるか解ったモノじゃないので、あんまり手の込んだ料理はやめた。折角石焼き鍋を出してきたので、何かに利用しようと考えての結果だ。
「あれはいつまで経っても冷めねえんだよな」
石焼きの容器と片栗粉のとろみが中々熱を逃がさないので、最後まで熱々のまま食べる事が出来る。
だから感覚的に、いつまで経っても辛く感じて、体が熱くなってくる。
「季節的に丁度よいではないか。我は気に入っておるぞ」
邪龍様は辛いのがお好きだ。
「酒は…、やめておくか」
冷たいビールを飲みながらもいいのだが、それは良くない。
いつ軍からの連絡が来るか解らないからさすがに酒は飲めない。本当に余計なことをしてくれたものだ。
現場で首謀者と出会うようなことがあれば、伽里奈のように愚痴の一つでも言ってやろうか。酒の恨みも深いのだ。
「風呂でも入ってのんびりしておくか。あいつらは生きてるか?」
「榊とヒルダ氏の周囲には雪が無くなってるだっちゃよ」
2人の体から静かに流れ出る熱のせいで、デッキの雪が溶けてしまっている。今日も雪が降りしきる小樽で、一体何をやっているのだろうか。
「あいつはここの所仲間外れだったからな。本番を前に、今のうちに体でも温めて貰うか」
霞沙羅は温泉に向かった。
まあ今は大人しくゆっくりしておくのが一番だろう。
酒がなくても伽里奈のメシは美味い。今日は酔う事無く、純粋に麻婆豆腐を楽しむとしよう。
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