実行阻止に向けて -1-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「本当にあのアイザックを捕らえたというのか!?」
取り調べ結果待ちの霞沙羅と吉祥院は、今イギリスで一番連絡の取りやすい有力な魔術師、シャーロットの父親であるジェイダンに一報を入れた。
ロンドンはまだまだ空も全然明るくないような早朝だというのに、あっさりとコンタクトが取れた。
その上、ジェイダンはしっかりとしたスーツ姿でPCの前に現れた。まさにジェントルマンの鏡である。
そんなジェイダンも霞沙羅達から届けられた情報に対して前のめりになっている。
「これでシャーロットが日本に来ても安全になったと思うが、帰ってくるのはもう少しだな。日本のどこかで大騒動が起きる。それを事前に防ぎたいが、それも五分五分だな」
「ああしかし、我々の方としてもアイザックの尋問のために協力したい。すぐにでも専門家を送る準備をしよう」
欧米の魔術師や警察を長きにわたり翻弄し続けた人形遣いがついに捕まった。これはまた各国がすぐに動くだろう。
この通信の後には被害を被った各国の協会に連絡をしなければ。
「ここ最近の日本は、あの傭兵団の時も加えてすばらしい動きを見せるものだな」
「いや、今回ばかりはチートを使わせて貰った。いわゆる異世界人の技術を頼った」
まあその傭兵団も2回とも異世界の英雄様と手を組んだのでチート行為だけれど、あるモノは利用する。これがやどりぎ館に住む人間の特権だ。
「アリシア君のところの賢者様がいいものを作ってくれましてね、それでアイザックのところにたどり着けたわけであります」
「そうか、それでも素晴らしい。早速遠い日本へ転移の準備をしなくてはな」
「そこは館にいるエリアスがやってくれる。メンバーが揃ったらまた連絡をくれ。何人でもいい」
シャーロットなら何人かを客人として、この館経由で埼玉に送ることが出来るが、それはやめた。館の事は部外者にあまり知らせない方がいい。
「娘の話では管理人の一人とかいう?」
「ああ。転移のプロだ」
「そ、そうか」
エリアスが高い能力を持っているという話は聞いていないけれど、霞沙羅がそう言うのであればそうなのだろう。
戦闘が苦手なのかもしれないし、適材適所というところか。
「なるべく早くメンバーを決めよう。しばし待って欲しい」
「ああ、待っていますぜ」
通信は一旦終わった。
* * *
通販会社や仮面の男が参加している他の企業の施設はもう使えないと踏んで、農家とは別の協力者のところに転がり込んだのだが、どうやらここも危ないらしい。
どういうわけかあの農家、田坂がマリネイラ信者の協力者だということがバレて、警察の取り調べを受けている、と情報が入った。
それにより彼が持つ関係者のリストが漏れ出したと考えた方がいい。
そういう事となると、ここであってもあまり長居することは出来ない。
通販会社にも捜査の手は迫っているし、そうなると社員や関係者の素性はバレる。
まずいことになった。
一体何があったのか、「安らぎの園」はどんどん追い詰められてきている。
警察でもないのに、新城と吉祥院2人の動きが異常に早い。そうなると魔術協会もついてくる。そのツテから寺院庁もそろそろ動き出すだろう。
しかし誰なのか、想定もしていない人物がバックについているのか? 欧米からの増援か?
それとアイザックはもう頼ることは出来ない。三郷で結界に閉じこもってからマンションの周囲には一切の捜査の手は伸びていなかったというのに、どうやって強襲することが出来たのか。
一度はアイザックを追い詰めたあの吉祥院が、それから何日も見つけることが出来なかったのにあまりにも急だ。
そしてどうしてあの飯能の農家までその日のうちに手が回ったのか。早すぎる。
だが仮面の男も、アイザックへの連絡の後すぐに飯能をたったのは運が良かった。
この作戦最大のカードはまだこの手にある。
予定からは早くなってしまったけれど、今集められるだけのメンバーを揃えて最後の作戦を始めるとしよう。
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