フラム王国での出会いと騒動 -9-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
ラスタルに帰還すると、あの場で唯一生き残った残党一人と、反抗したが故に将軍に成敗された遺体は城に運ばれていき、騎士達でラスタル周辺と町中の警戒と確認が始まった。
アリシアも実家の家族が無事だったのを確認して、お城に帰ってきた。
「しかしこいつは強かったな」
今回の活躍に対しての報酬を受け取りには冒険者達だけでなく、ソニアを名乗る女、水瀬カナタもやって来ている。
実際のところ、本人は今更お金など欲しいとは思っていないのだけれど、事件解決の中心人物として目立ってしまったので、アシルステラ住民を装うためにとりあえず受け取る事にした。
もういらない金だけれど、扉を閉じる前にでもどこかの宗教施設に寄付でもすればいいだろう。
「一人者ですからね。ある程度強くなければやっていけませんよ」
「霞沙羅さんもお金貰えるんですけど」
「使う機会がねえよ」
霞沙羅は身分が解っているので、受け取りを拒否しても問題にはならない。
子爵ということで、土地無しの代わりに定額で報酬を貰っているアリシアにも何もくれない。
ただ、今回の件は評価にはなるし、これまでの料理とか甘蕪の砂糖とか、今後のお茶の件もあるから、まあいずれ回り回ってくるだろう。
「無事に終わったのね」
避難していたクラウディアとクリスも出てきた。
「事情は聞いたけど、帝国が滅んでもう4年近くも経ってるのにまだ残党がいたのね」
「ヒルダのモートレルを襲った時に皇帝の血筋の子がいて、それもちょっと前に処刑されちゃって、もう王者の錫杖もガラクタになっちゃったのにねー」
「アレはもう使えないの?」
「最初に使った人の、ある程度の血筋の人じゃないと機能しない作りになってたんだー。だから関係ない人が持っても作動しないの」
「そんな事までよく解ったわね」
「ここにいる霞沙羅さんが魔工具とかに強いから、割とあっさり」
「それもあって学院もほっとかないのダ」
「あら、聞けば聞くほど面白そうな人なのね」
「ああ、エルフのお誘いならいつでも受けるぜ」
やはり彼女か、とカナタも納得した。
こっちにいる栗栖の状況を確認しに来ただけなのに今日はかなりの収穫があった。
普通に接触を仕掛けたとしても、自分の悪評を色々と聞いているようだから拒否される事は目に見えている。
だからタイミングを待つとしよう。その為に新宿周辺に仕掛けをしてある。
「それでは私は出ていくとしましょう」
報酬を受け取り、カナタは槍を三つに分割して、懐に入れた。
「いい作りだな。誰かの作品か?」
「私ですよ。自分で使う物は自分で作らないと安心出来ませんからね。ましてやド素人の手で作られた物などとても命を預けられませんよ」
「ああ、解るぜ」
自分で作れるから、自分に特化した武器を作れる。修正するにも何を直せばいいのか解っているから簡単だ。
「そこのお嬢さんはこんな場所まで来て、何か思うところでもありましたの?」
「え、私のこと?」
「こんな場所に来て色々と見聞きしたでしょうが、誰も遊んでなどいないのですよ。魔術師になるなら日々の研鑽を忘れてはいけませんわ。ではね」
それだけ言ってカナタは城を出ていった。
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