フラム王国での出会いと騒動 -8-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
アリシアと霞沙羅とカナタは馬よりも速く走り、ルビィはさすがにそんな事は出来無いのでハルキスの馬に便乗させて貰って、レオナルド将軍一行は現場へと急いだ。
「傭兵って所か?」
「まあそんなところですわね」
まだ戦っているところは見ていないけれど、ハルキスの目にも、このソニアを名乗るカナタは相当の実力の持ち主だと映っている。
年齢的には霞沙羅と同じくらい。女性としては背が高くて、カサラよりもやや高い。
一見、女性的な体つきをしているけれど、その中身はかなり鍛えられている。
この大陸にはまだこんなのがいたとか、最近も榊やモガミといった異世界の強者と出会ったけれど、この世界もやるじゃないかと思っている。
実際どの程度の腕前なのか、機会があればお手合わせ願いたいところだ。
「近いぜ」
気配と魔力を探ってみると、魔工具を持っている本人も、一応は安全のために自分の周辺に魔物を置いているようだ。
ただ数はそう多くはない、と感知器に出てしまっている。元冒険者アリシアの知識が入った道具のため、何が配置されているかまでバレてしまっているけれど。
「またバカな事をしますわね」
こんな世界なのだから、どこか別の場所に行って、静かに暮らせば元帝国人だとバレないでやっていけるだろうに。なぜわざわざ自分から命を捨てに来るのか。
向こうもやってくる馬の足音に気が付いたようだ。魔工具の魔力が少し遠ざかっていく。
それにしても魔力が弱くなってきている。もう終わりが近いようだ。
「先に行って、裏に回るぜ」
霞沙羅が『気』を脚にこめて、一気に加速して行ってしまった。
「仕方ありませんわね」
カナタもそれに続いて行ってしまったので、2人の姿は瞬く間に森の中に消えた。
将軍達は馬に乗って走っているというのに、2人とも圧倒的な速さで行ってしまった。
でもアリシアは案内があるのでそれをやらない。
「すげえな。俺も早くあんなのをやってみたいぜ」
「あんな芸当が、出来るのか?」
レオナルド将軍はハルキスの言葉に驚いていた。
「それをこいつが知ってるんですよ。俺やらヒルダは今、それを習う準備中なんですがね」
風系の魔法なんじゃないのかと思ったけれど、そんな素振りはなく、いきなり速くなった。
「個人差はありますけど」
現在アリシアが馬と並んで走っているのは身体能力のみ。確かにこれもすごいけれど、これよりも更に速くなるのか。
さすがにハルキスやアリシアには敵わないレオナルドもまだまだ現役。どういう技術なのかと興味がわいた。
「動きが止まりましたねー。前後で挟んだのでもうすぐ接敵しますよ」
気配でわかる。あの2人が迂回して後ろに回り込んだのだ。知らない人同士なのに、あのソニアという人は状況をよく察するモノだ。
「者共、戦闘に備えよ」
将軍からの指示で、兵達は武器を手にした。
それから20秒ほどで敵の姿を捕らえた。
「よかった、ちゃんと待ってくれてるよー」
霞沙羅もソニアという女性も、そこにいた男2人と魔物10体には攻撃をしていない。
とりあえず退路を塞いで、逃亡を阻止している状態だ。
人間が2人。片方が普通の槍を。もう一人が先端に鈴がついた杖を持っている。あれが魔物を操っている魔工具だ。
その2人を守るように、どこから集めたのか、コボルト5体とリザードマン5体それぞれが武器を構えた。
「帝国の残党共がっ! またも我らがラスタルを狙いやがった罪、許されると思うなっ!」
レオナルド将軍が吠えると、後ろにいた配下の兵隊達が突撃していく。
男が鈴を鳴らすように杖を振るうと、その途端、鈴が割れて地面に落ちた。
「壊れたようですの。使用限界だったのでしょうね」
あの時は増援を防ぐ時間稼ぎをすれば良かったから、証拠を残さないために壊れるように作ってあった。じきにあの破片は塵になる。
結局鈴が鳴ることはなく、魔法から解き放たれたリザードマン達は我に返ったが、訳もわからないまま襲ってきた騎士達に、まともに抵抗することも出来ずに蹂躙されていった。なんとなく可哀想ではあるけれど、こんな所で逃がすわけにもいかない。
「お前達の仲間も今は牢に運ばれた。大人しくするのであれば無傷のまま連れて行ってやろう」
レオナルド将軍は馬を下りて、2人の男に向かって、ブロードソードを抜いて歩いて行く。
抵抗すれば命はないという意思表示でもある。
「くっ!」
振り向くと霞沙羅とカナタがいる。2人とも背が高いくて威圧感がすごいし、レオナルド将軍の真後ろにはハルバードを抱えたハルキスもいる。
「最悪だナ」
ルビィから見ても絶望以外にない。
ソニアを名乗る女性はどの程度の実力かは解らないけれど、霞沙羅の速度についていっただけにかなりのモノだと予想出来る。
レオナルド将軍も猛将と言われるだけの剣の腕はあるし、しかもアリシアとルビィまでいて、この状況から逃げ出せる人間はまずいない。
「く、くそおっ!」
槍を持った方の男がレオナルドに迫っていくけれど、将軍は突き出されたその穂先を軽々と避けて、ブロードソードの一撃を腹にくらわせて斬り捨てた。
「いけませんわね」
カナタは持っていた槍で最後の男の頭部を殴った。
このままでは何かやるかもしれないと、将軍に斬られる前にとりあえず気絶させた。
どうもこの事件ののリーダのようなので、残しておいた方が国にとってはいいだろうと判断した。
カナタは残党全員に会ったわけでは無いし、あの時は記憶操作の魔術を使用していたから、自分の顔は誰も覚えていない。
何か言われるのを恐れたのではなくて、こういう謀反を働く人間を1人でも引き渡すためだ。
ご迷惑をおかけしましたの。
「これで終わりか。周辺はどうだ?」
「魔物の反応はもうありません」
感知器にはもう何も映っていない。ラスタルの方の魔物も全て処分したようで、そちらでも反応は消えた。
「しかし、杖の鈴が塵になってしまっタ」
「魔力結晶のような塊か何かだったんだろ」
残骸を拾おうとしたルビィだったが、地面に落ちた破片は塵になり、もう素材が何だったのかを推測することも出来ない状態となってしまった。
倒れた魔物の方は特別なモノは何も持っていない。壊れてしまったあの杖に操られていただけなのだろう。
「では撤収だ」
首謀者である人間はある程度確保したし、ここにはもうこれといって調べるようなモノは無い。
帰りはアリシアとルビィが連携した転移魔法でラスタルへ戻った。
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