フラム王国での出会いと騒動 -5-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
王都ラスタルの北方面から多数の魔物達が現れて、突然のことだったので門を閉める間もなく、町の中に入られてしまった。
今は門の前には騎士や魔術師が並んで、これ以上入れないように壁になっているけれど、入ってきた分をどうにかしないといけない。
中を任された騎士達だけでなく、勇気ある、もしくは小遣い稼ぎで謝礼でも貰えないかなーと考えている冒険者達も出てきて討伐に加わっているけれど、実際は少数ながら空からも飛来しているので、門の前を封鎖しても入り込んできているという状態となっている。
「仕方ないですわね」
正直この程度の数ではいずれ収まるだろうけれど、カナタ的には道具を渡した張本人なので、一応始末は付けようと思う。
「魔繰の鈴」は証拠隠滅のために、ある程度以上鳴らすと鈴が壊れるように出来ているので、調子に乗っているといつの間にか壊れてしまう。
それは渡した残党達にはちゃんと説明してある。でもそれを忘れるのが欲に駆られた人間というモノ。
何ヶ月か前は選抜された6人が、この町の騎士と魔術師がモートレルへ救援に向かうことを抑える為に魔物達を先導する役目を負ったが、それもあって生き残った旧帝国残党が仇討ちか何かをしようとしているのか。
カナタは三つに分割していた棒を一本にくっつけて、その先端に穂先を取り付けて、簡易的な槍を作成した。
そしてバレないように共通魔法で髪の毛を銀色に染めて、歩き出した。
そうこうしているうちに、城の中からも準備を終えた騎士や、魔術師達の第二波が出てきて、町に散っていく姿もあった。
この辺はさすが王都というだけはある。
「外に始末に行くのは後ですわね」
とりあえず近くで苦戦していた5人組の冒険者に加勢して、3体のコボルトの首を組み立てた槍でもって一瞬ではねた。
そしてコボルトが手から落とした、どこかで拾った物であろうショートソードを空に投げて、あれはハーピーであろうか、翼を生やした半人型の魔物の胸を正確に貫いた。
「足を止めている場合ではありませんよ」
カナタのあまりの手際に呆気にとられる5人組に声をかけてさらに前進すると、3人の人影が空から降りてきた。
「おや」
降りてきたのは新城霞沙羅、札幌でアオイと斬り合った妙な少年、それとこの国の六英雄の一人ルビィだ。
ルビィはともかくとして、この土地にいるはずの無い2人の姿を見て、カナタは館の関係者だろうと判断した。
ということは、新城霞沙羅は小樽に住んでいると聞いたので、館は小樽にあると見ていいだろう。
「お前、やるな」
3人は今の一連の動きを上空から見ていたので、この女性、実は水瀬カナタが事件の関係者ではないだろうと判断した。
「ちょっと協力してくれないカ?」
近くにいる5人の冒険者は無理だとして、この女性なら自分たちに付いてこれるだろうと声をかけた。
「ええ、構いませんが、この王都で何が起きているのです?」
カナタは新城霞沙羅が何を言うのか、ちょっとカマをかけてみた。
「魔物を操る魔工具を使ってやがる奴がいてな。訳あって私らしか道具の機能を理解出来ないのだが、まずは町の魔物をどうにかしたい」
なるほど、この言い方。やはりこの新城霞沙羅はヤマノワタイの魔術を理解している。
「なんか、鈴みたいな音で操ってるみたいで」
そういえば札幌でもこの少年は自分達の魔術を理解していた。
という事はこの2人は最低でも「ヤマノワタイ」「地球」「アシルステラ」の三カ所の魔術を理解出来ていると考えられる。
それであれば…。
「そうですわね、人の死体を見ながら食事をしたくはないですしね」
「旅人ですか? すみません」
「構いませんよ、旅をしていればよくある状況ですもの。ソニアと申しますわ」
カナタは偽名を名乗っておいた。
「そうか、私は霞沙羅、こいつはアリシアとルビィだ」
「英雄が2人もいるのですね」
少年はこの国の…、この世界を救ったという英雄の一人だったのか。それならアオイと互角なのも納得がいく。
となると、かなりの人物が日本に顔を出していたものだ。それがこの新城霞沙羅と一緒にいたというなら、自分の立てた計画があまりにも早く潰されたのも納得出来る。
「お前の得意は?」
「まあ、見ての通りこれですわね」
槍を見せる。
「お、見た目はシンプルだが結構なしろもんだぜ。よし行くか」
霞沙羅は先日作った、魔力結晶を発生させる槍を持ってきている。やっぱり部外者が王宮のような所に入るには、刃物を持ち込むのはあまり良くないと作っておいた。
ホントにいいものを作ったものだ。
折角声をかけて貰ったのでカナタはこの3人に混ざることにして、間近で霞沙羅と少年の実力を見せて貰う事にした。
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