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フラム王国での出会いと騒動 -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 冷凍箱でバニラアイスを冷やしている間は、各購入者達は食堂の席に座って、アリシアが作って持って来たカステラを楽しみながらお茶を飲むなどして完成を待った。


「して、これは何なのだ?」


 タウ達魔術師組は、ここでは使う事が無かった、外装が薄型の冷蔵箱に目が行った。


 少し大きめの炊飯器くらいの大きさしかないアイスクリーム用の冷蔵箱と違って、衣装ケース程度のサイズもある箱が二つある。


「これが魚を遠くに運搬する予定の冷凍箱ですよ」


 保冷力維持のために資材を改良して、薄い二重構造になっているので、軽くなって、その分大きくなっている。


 小さ目のマグロくらいなら問題無く入るサイズなので、これ一箱で多くの魚を運搬することが出来る。


「あとポーションとか触媒とか」


 温度の調整ももっと細かく出来るようにしたので、魔術に使う素材の保管だって出来る。


 植物素材も採れる季節があったりするので、破損しないように温度を調整すれば長時間保管出来るだろう。


「アリシアってこんなに研究熱心な人だったの?」


 クラウディアは冒険者時代のアリシアしか知らないけれど、魔工具製作についての話しをするような機会は無かった。


 確かに冒険中には色々と既存の魔法を冒険者目線でアレンジしていたけれど、ルビィから聞いた話によると短い職員時代にもあんまりこういう物作りはしていなかった。


「さっきの霞沙羅(かさら)さんが鍛冶をしてるし、もう一人の吉祥院(きっしょういん)さんは魔工具の研究をしてるからなのもあるかもねー。一番は定住したことなんだろうけど」

「こやつはいい経験をしておる。それもあって儂らの方も最近は研究心が触発されておるくらいだ」

「霞沙羅さんてさっきの人? 服装的にもあんまり物作りっていうタイプには見えなかったわね」

「ほお、今日も来ておるのか」

「ハルキスのハルバード用に改良パーツを付けたから、今はそれの実験をしてますよ」

「なに! しかし今日は…」


 少し前にルビィの杖を改良したのは、外付けながら制御機能を追加出来るのか、ととても興味を持つに至った。


 だからタウも今、あの拡張というコンセプトの装置を作成しているところだ。そうなると今やっている実験とやらを見たいのだが、今日はこのアイスがある。


 明日以降もアイスが食べたい。その為にはこの会から離れることは出来ない。


「ルーちゃんがいるから、そのツテで今度見せて貰って下さい」

「そうするか」


 クラウディアから見ても、以前の魔女戦争時に来た時を違って、アリシアはこの魔法学院に馴染んでいるような気がする。あの時は学院に帰ってくる気は無いような事を言っていた。


 冒険者時代は、魔術師としては優秀だったけれどあまり学者の道には向いていないような印象があったのに、変わったモノだ。


 服装センスは今日も相変わらずだけれど。


 さっき紹介してくれた霞沙羅もエルフに偏見が無いようなので、その内魔術談義でもしてみたいと思い始めている。


異世界の魔術師なんて珍しい存在だから、こっちの人とは考え方も違うのだろうし、技術に差もあるだろう。


 折角の機会だから、アリシア達の仲間に入れて貰えないかなと思い始めた。


  * * *


 生まれ変わったかのように機能がアップデートした愛用のハルバードの出来具合に満足して、ハルキスは上機嫌でお城に戻っていき、ルビィと霞沙羅は食堂にやってきてクラウディアと話をした。


 霞沙羅としてはエミリアとは落ち着いてエルフについての話しをする時間が無かったので、ここぞとばかりに聞いていた。


 アリシアがお勧めしてくるだけあって、クラウディアは人に対しても穏やかな性格をしているので話はしやすい。


 それとエミリアと違ってそこまで戦闘向けではなく研究者気質なので、魔術の意見交換は楽しそうだなという印象だ。


 ただこちらはラシーン大陸側に来てからはずっと王宮に出入りしている魔術師なので、エミリアの冒険者時代のようにエンタメとして聞きたい話は多くなさそうではある。


 冒険者をしているエルフは少ないとエミリアから聞いているので、それは仕方が無いだろう。


 ならば今度、鎮魂の儀でエミリアに会うだろうから、その時にでも異種族間ののろけ話と一緒に何か聞かせて貰う事にしよう。


「いつかエルフの土地に行ってみたいもんだな」


 美の神ヘイルンの眷属であるシーリンとかいうのが管理している空間がエルフの本拠地であるが、ここに人間が勝手に入ることは出来ない。


 条件はシーリンの子という種族であるという単純なモノなので、魔術でどうにかするようなことは出来ない。エルフでないと門を開くことも通ることも出来ない。


「お前達は知り合いのツテか何かでそこに入れるのか?」

「ボクらは全員クラウディアとエミリアの許可があるから、条件付きで入れるんですよ」

「どんな条件なんだよ」

「とある種類の木がラシーン大陸とエルフの大地を結んでいるから、私かエミリアがこれと決めた木から出入りが出来るようになっているの」

「辺鄙な場所にあるから、今となっては私かアーちゃんしかそこに行けないんだガ」

「そんなに用も無いしねー」

「さすがに制約はあるんだな」


 そういうのが良いんじゃないかと、霞沙羅はうんうんと頷く。


 さすがエルフ。ミステリアスな要素がある方が種族としての魅力があるというモノだ。


 自分がやっていたTRPGのエルフは妖精の一種という設定だったけれど、ルール上に妖精界というフィールドの設定は無かった。同じ世界観を持っているライトノベルでも描写がなんかフワッとしていたし。


 だからエルフの大地とはどういう所なのか、それは気になる。


 ただまあ今日出会ったばかりだし、気に入られているエミリアにだって2回しか会っていない。


 今度また鎮魂の儀で会うだろうけれど、それでも3回目。


 この程度でそんな秘密の場所まで通して貰えるとは、さすがに霞沙羅も思っていない。


 しかも自分は余所の世界の人間。


 でも一度だけでいいので、見てみたいモノだ。


 恐らく見所は何も無い。それでもいい。行ったという満足感だけで今後の人生を過ごせるだろう。


「ところでアーちゃん、折角学院に来たのだから、例の、ミストシャワーを教えるのダ」

「ルビィ、なんですかそれ?」

「冒険者時代にアーちゃんが作成したシャワーの魔法があっただロ? あれの上位版ダ。温かい霧を発生させて、少ない水量で入浴効果を得るのダ」

「こっちの軍では符術の方を使ってるぜ」


 シャワーの方はクラウディアも教えて貰っているので、エルフらしく綺麗好きなのもあって結構重宝している。


 リバヒルにある家の方では管理が面倒なお風呂ではなくて、シャワーで済ませているくらいだ。


 この学院には寮に住んでいる人向けのお風呂があるけれど大浴場というようなことはなく、湯船は大人が5人入れればいい程度のサイズしか無いので、時間制であんまりゆっくりとしていられる時間が無い。


 今はクリスもいるので何とかならないかなと思っていたところだ。


「どっちの方が便利なんダ?」

「術の方はその時の気分で調整が効くが、個人差が出るからな。符術の方も調整は出来るが、規格を作ってしまえば同じ現象をコンスタントに発生させられる。大勢に使うのであれば符術が良いだろうな」

「それってお部屋の中でも使えるの?」

「どうしても湿気が発生するけど、範囲が限定されてるからね。布でもいいから仕切りで囲えば何とかなるかなー。そもそもの水量も少ないしねー」

「どのくらい?」

「桶一杯あればいいかなー」

「それは少ないわね」

「室内で使うなら床もタイルにしないとダメだろ」

「まあそうですねー」


 となると、珪藻土的なタイルが作れないだろうか。そういう土系の素材作りが得意な賢者がいたような気がするので、今度提案してみよう。


「ちょっと雑談気味な話をしたが、あそこにいるエレオノーラ子爵が乗り気だったゾ。あの人は女性騎士団の相談役だからナ。この後話をしに行こうじゃないカ」

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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