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フラム王国での出会いと騒動 -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 霞沙羅(かさら)は以前にハルキスから預かっていた愛用のハルバードへ、追加の制御装置の取り付けを終えた。


 改造してやるぞと言ってからちょっと時間がかかってしまったけれど、それから仕事で色々あったのだ。


 しかし最近はその色々でイライラしていたので、それの解消のために作業は捗った。


 ハルバードも魔装具としては威力が大きすぎて、普段使いがはばかられるということで、あまり使っていないようだけれど、まあ完成したら早めに返してあげるのが良いだろう、とこのタイミングでフラム王国に行くことにした。


「さすがに制御系は三つ目だから、早く出来ましたねー」


 連絡を受けて、やどりぎ館から伽里奈(アリシア)がやって来た。


「制御だけじゃねえぞ。無駄に吐き出してる炎の魔力を固定化してやった。威圧感は無くなったが、実用的になったぜ」


 ハルキス自慢の魔装具、このハルバードは戦闘状態になると斧と槍から炎が吹き出る仕様になっている。


 これが攻撃時の追加効果となるのだけれど、周りにいる仲間にも、距離によっては炎を浴びせることになってしまうので、ヒルダのロックバスターとは似たような欠陥能力があった。


 まあ各々の戦闘力が解っている自分達がそんなガチガチに固まることは無かったので、狭い場所にでも入りこまなかぎりはあまり影響は無かった。


 それを霞沙羅は、炎の力を、斧と槍の、刃先の空間に、炎の刃として固定する改造を施した。


 これによってビジュアル的には威圧感が無くなってしまったけれど、周囲に影響が無くなったのでとても実用的になった。


 霞沙羅製作の外付け品なので、一応機能の解除も出来るので、前と同じように炎のエフェクトで威嚇したい時は機能をOFFにすればいい。


 それとついでにハルバードの全体的な整備も行っているので、新品のような輝きを取り戻している。


「お前の方は準備がいいのか?」

「ええ、出来た分はまとめましたよ」


 今日は、例のアイスクリーム製造用の冷蔵箱15個をまとめて納品する。


 それとは別に、もっと遠くの土地に魚介類を運搬するための、外装は薄型で大型化させた冷蔵箱も完成したので、それを2個乗せた小さめのリアカーを館の裏に駐めてある。


「明日は悪いが、吉祥院に付き合ってもらうぞ」

「解ってます」


 アイザック捕縛については、基本的には吉祥院と警察が現場を取り仕切るワケだけれど、伽里奈(アリシア)には一歩退いたところで待機してサポートして貰う。


 残念ながら石焼きラーメンは速攻で延期になってしまった。


「じゃあ行くか」


 霞沙羅はいつもの戦闘服を着て、そして改良したハルバードを持って、ラスタルに向かった。


   * * *


 学院の正門前に転移した二人は受付の前を通って敷地に入っていく。


 今日も学院は普通に授業をやっているので、中には学生の姿があるけれど、あのアリシアが妙な箱を沢山持ってきたのと、ハルキスと言えばこれ、という有名なハルバードを別人が持っているので、注目をあびた。


 アリシアがまた女子の服を着ているけれど、その事については誰も気にしていない。この辺は現役の学生であってももう常識だ。


「おお、先生。それが俺のハルバードですか」


 正面の広場にはハルキスとルビィと、この機会に紹介するからと言われたクラウディアが待っていた。


 でもハルキスが待ちきれずに駆け寄ってきた。


「おう、ここについているのが制御装置だ」


 斧部分と柄の接合部には今までは無かった部品がついている。ハルキスがハルバードを使う姿を何度も見ているので、この位置は動きの邪魔をすることはないと解っている。


「スゴイ綺麗になっているゾ」

「さすが先生だな」


 まるで新品のように、特に斧と槍部分が輝いている。


 そもそも冒険中にダンジョンの中で見つけたモノなので、正しい姿は知らないけれど、多分これが新品だった時の状態なのだろう。


 手にすると今までとほぼ変わらないのだが、なんだか新しい武器が届いたかのようだ。


 これはこれまで以上に毎日整備をしなければと思える程の価値を感じる。さすが先生。


 ハルキスも満面の笑顔でもって構えてみた。


「どうなったのかを早速見せて貰おうじゃないカ」

「何でお前が率先して見ようとしてるんだ。お前はお前で付けて貰っているんだろう?」

「先生が作った物となればどういう出来なのか気になるじゃないカ」


 これから霞沙羅とこの2人で、場所を借りてハルバードの出来を確認するのだ。


「あのー、霞沙羅先生、こっちがクラウディアなんですけど」

「お、そういや、エルフがいたんだったな」


 霞沙羅は足下から頭頂部まで舐めるような視線でクラウディアを確認した。


 エルフとなればその評価はしっかりやらねば。


「これもまたエルフらしいエルフだな。ツンケンしていたエミリアと違って、高貴な感じのする上品なエルフだ。合格」

「何が合格なんですか?」

「エルフとして合格だ」


 エルフがいない世界出身なのに、どういう基準なのだろうか。


 でもとにかく合格だ。


「この人が異世界の英雄さん?」

「新城霞沙羅だ。霞沙羅が名前だ」


 霞沙羅は握手のために右手を出すと、クラウディアも右手で握手をしてきた。


「背が高いのね」

「私は背が高いか?」

「日本人女性としては高い方だと思いますよ」


 霞沙羅の身長は174だけれど、エリアスが178ある。更に吉祥院が220もあるので、霞沙羅も時々感覚がバグることがある。


 でもいつもアリシアが言うとおり、霞沙羅は背が高い部類に入る。


 150と少し程度のクラウディアとは頭一つ分くらい違うので、これでも結構な身長差がある。


「今日はキッショウインさんはいないのカ?」

「あいつは人形作りをしているからな」

「ああ、あのルーシー様のカ」

「気になったら見せて貰え。触るのもはばかられるくらい不気味だぞ」


 クラウディアから見た霞沙羅の第一印象は、面白そうな人だ。


 待っている間にハルキスとルビィから話は聞かせて貰ったけれど、能力的には非常に高いという事だし、外見的にはレミリアも気に入っているというくらいには美人と言える。


 背が高くて、ちょっと筋肉質という事もあってやや体格がいいので、エルフ基準の美人路線とは少し違うけれど、格好いいのは確かだ。


 身長が高めなのが涼やかな印象を演出している。


 そして、確かに女性人気は高そうだ。


「この後、クラウディアはどっちにつくの?」


 これからアリシアは食堂に行って、そこで冷蔵箱の受け渡しと、アイスクリームの作り方を教える。


 これをしないと、この世界には無い食べ物なので、箱だけ受け取っても誰も何も出来無い。


 受け渡しには貴族の家から代表者とその料理人が来るそうなので、少々大人数になりそうだ。


 でも高いお金を払って買って貰ったのだから、ちゃんと使って貰いたい。その為には今日という日を欠かすことは出来ない。


「アリシアの方がいいわね」

「あれ、そうなの? まあいいけど」


 霞沙羅達の方がスゴイ物が見られると思うんだけどな、と思うけれど、ハルキスもまだしばらくラスタルにいるから、別の日に見せて貰うのも手だ。


「この間食べたパフェの元になる食べ物を作るのでしょ? 今はこの箱の方が気になるわ」

「じゃあ私らは後でそっちに合流するぜ」


 霞沙羅達はルビィが予約をしていた実験スペースに行ってしまい、アリシア達は食堂に移動した。


 この間にも今日受け取りとなる貴族達が続々と学院にやって来ていた。


 少し前からボチボチ学院に納品している分を合わせて、今日で25個になる。その内の17個が予約をしていた貴族に納品され、残り8個は学院の序列順に渡されていく。


 これでまだ地方領主なども待っているので、生産が終わるのはまだ先になりそうだ。


「よくこんなものを考えたわね」

「別にアイスを作りたかったわけじゃなくて、モートレルみたいな内陸の町に魚介類を届けたかっただけなんだけど」


 あとは単に季節物の保管だったり、後々は料理そのものを保存するのが目的。


 デザート作りは単なるデモンストレーションだったのに、そっちに好評が集まってしまった。


 まあ解るけれど。


 アリシアだって日本に行って、最初にアイスを食べた時は衝撃だった。それを思い出せば、魚介類の運搬は二の次にもなろうというモノ。


 ヒルダも渡してしばらくは、運搬のことなど忘れていた。


 たどり着いた食堂には、これがあれば自宅でアイスを食べることが出来るぞと期待している貴族達が集まってきている。


 仕事があるので必ずしも家長がいるわけではなくて、引退したご隠居さんだったり、奥さんだったりするけれど、それぞれが調理担当を連れて来ている。


 それもあって、エバンス家からはランセル将軍ではなくて、その父親のモーゼスが代表として来ている。


「やあアリシア君。これでようやく我が屋敷でもアイスクリームが食べられるようになるな。何と言ってもエリックが心待ちにしておってな」


 おじいちゃんとしては、本人が食べたいというよりも曾孫が喜ぶ顔が見たいといったところか。


 他の貴族達もアリシアが引っ張って来たリアカーに沢山乗っている冷凍箱を見て、早く欲しいといった目を向けてくる。


 でも箱だけ持って帰っても意味が無いので、調理実習が先だ。これさえ終われば今日からいつでもあのアイスを食べることが出来る。


 思う存分食べてしまおうじゃないか、と思っている人も少なくないのではないか?


 食堂にはこれまで納品されていた分も運ばれてきて、購入者のタウ達、魔術師もやってきた。


「じゃあそろそろ始めましょうか」


 アリシアは箱の説明書と、基本となるプレーンなバニアアイスと、それを応用した簡単なパフェなどのアレンジレシピを纏めた小冊子を購入者それぞれに配って、実習を開始した。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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