準備運動 -1-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
伽里奈が作った幻想獣感知装置は吉祥院が主導となって軍の方で少数だけ量産が行われた。それを持たせたメンバーに、土地の浄化が終わった安全エリアから危険区域を観測させたり、飛行機やヘリに乗せて旧東京二十三区の上空から観測したところ、金星接近の影響を受けてか、何カ所かに幻想獣の反応が発見された。
その位置情報から、成長態を中心にして幼態を率いているいくつかのグループを形成しているように見えているけれど、今の所はそれ以上の大きな動きは無いという。
この何とも言えない現象は珍しい話ではないけれど、何もせずに放っておいても何かの虫みたいにどこかにいなくなるわけではない。
それに時間を与えてしまうと、数日という短期間ではないとはいえ、いつかはそれぞれの個体が成長してしまう。
だから幻想獣のグループが発見された今、その予防のために討伐作戦が行われる事になった。
「時期的にはこっちに人を割くのもかなりキツいんだけどな」
寺院庁から手を回して貰って、神官も借りているけれど、首都圏周辺の軍であってもこの時期なので魔術師の数に余裕があるわけでもない。
霞沙羅の言ったとおり、今は日常的にに突然起こる幻想獣の出現に備えておく必要があるので、この討伐作戦にばかり人を割くことが出来ない。
だから魔術師では無い、普通に国防に関わる一般的な軍人も同行して、幼態に限定して対処して貰う。
「空霜にも支援をしてもらうで候」
「ふふん、ウチに任せるのだ」
このプロジェクトの司令は2人ではない。霞沙羅と吉祥院はいつもの丸子観測所から状況を見守ることになっている。
吉祥院は神奈川配属の人間なので、魔術師として観測所からこのプロジェクトに参加しているけれど、霞沙羅はただの助っ人なので、例えば完成態でも出現するような不測の事態が起きれば出撃するというバックアップ要員だ。
今日ここには来ていない榊は、横須賀基地に待機で、神奈川県内の幻想獣出現に備えている。そこまではいらないだろうという判断だ。
「そろそろ出発するようでありますな」
討伐用の装備を調えた兵達は、三組に分かれて装甲車に乗り込んでいく。
この討伐作戦は、反応のあった場所に近い調布観測所からも時間を合わせての開始となる。
ここからは見えないけれど、装甲車の中では各自時計を合わせて、開始時間となったとことで予め決められた順番で、多摩川にある橋を渡って旧二十三区に入っていった。
「ヘリとドローンも出ていったか」
あの小型感知装置は、この前に伽里奈が持っていた外部記憶装置の連結方法を応用して、ある程度離れた所からでも、前線で持っている機器と通信を行える魔工具を試作して、今、吉祥院の目の前にある。
試験という事で、まだ何個かにしか取り付けていないけれど、現場の状況を感知装置のデータで見ることが出来るようになった。
見た目はタブレットPCの様であるけれど、中身は魔工具。いわゆるUSBのような機械的な拡張スロットはないけれど、中の魔術基盤には接続用の、回路上の空きスペースがあって、そこに外部からの魔術基盤を干渉させて接続出来るようになっていた。
この辺は以前に霞沙羅が作った、ヒルダやルビィ用の魔装具の制御装置をヒントに設計されている。
「あいつの魔術師ランク、上げてやれよ」
「勿論この騒動が終わったら上げるでやんすよ」
あんまりランクを上げたら、伽里奈に義務感というか責任感が芽ばえてしまいそうだけれど、こっちの世界で生きる上で少しでも動きやすくなるのであれば、あって損は無い。
多分、本人の望むところではないだろうけれど、この春からは生活が変わってしまうだろうから。
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