表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

404/525

粛々と準備は進む -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「とりあえず出来たでござるよ」


 どこかに逃げてしまったアイザックを追跡するための人形は、まず試作品が出来上がった。


 ルーシーから貰った提案書を自宅に持ち帰った吉祥院が検証し、地球向けに翻訳してすぐに作成に入っていた。


「ちゃんと動いたのか?」

「回収した人形をつかっての実験はやったでありんす。後は探知人形の感度を出来るだけ上げて案内をして貰うでござる」


 感度を上げるにはまた一手間がかかるけれど、これでアイザックを追い詰める可能性が見えてきた。


「そもそもあいつには結界があるんじゃないのか?」

「今の所は結界から外には出てはいないようでありんすが、製造者との縁を利用した探知になっているのでそれは防げないで候。結界とは言ってもありとあらゆる全てを防ぐような結界を使ってはいないざんす。光りも空気も通さないのであれば中で死んでしまうでやんすから」

「まあそうだな」


 その辺も考えて、いくつかメジャーな結界を使っての検証はしてある。それで突破しているのだから成功というわけだ。


「そういやアイザックの野郎は人形は自分で作ったって言ってたな。あの賢者…、ちょっと話をしただけで怖い人形を考えつくな」

「専門家だけはあるでありんす。もともと研究していた技術なのでありましょう」


 検証品の人形はその辺を確認するために、新たに作ったのでは無くて、アイザックが残していった人形を改造している。完成品は更に改良した魔術基盤を使用して、魔術師とその手から作り出された人形という魔術的な縁を辿って、アイザックの居場所を発見するようになる予定だ。


「ある意味、私が自作の魔装具にたどり着けるのと同じか」

「そんな感じでござんしょう」


 以前に霞沙羅が学院の宝物庫で見せた技をルーシーはヒントにしてこの呪術を作り上げたのかもしれない。


「すげえな」

「賢者と名乗るだけはあるざんす」


 ルーシーは長い人生でそれだけのものを見て聞いて、経験してきたのだろう。まだまだ自分達は若いなあ、と思ってしまった。


「それで警察の方はどうなった?」


 「安らぎの園」を資金面で後ろからバックアップしている組織がある事は、先日解ったことではあるけれど、横浜大窃盗事件で捕まえた別のメンバーと4人の傭兵団の取り調べで、一つの会社が浮かび上がった。


 その会社は横浜市内に本社を構える、ごく普通の通販会社。


 大会社では無いけれど、輸入家具を取り扱って、それなりに売上を伸ばしている、資金的には余裕のある組織だ。


 創業からこれといって犯罪どころか違反行為も無いような、ごく普通の会社だけれど、アイザックとキャメル傭兵団が潜んでいたマンションとアパートの持ち主が浮かび上がり、トンネル会社である事が判明した。


 そしてその会社の複数いる関係者の中から通販会社関係者が浮かび上がった。


 今はまだ裏を取っている最中で、準備が整い次第、捜査員が乗り込む予定が見えている。


 当然向こうも警察の手が伸びるであろう事は解っているだろう。


 今は会社や倉庫周辺に見張りを配置して、動きを見ているところだが、変わったところは無いという。


「それもあってアイザックの居場所はある程度予想ができているでやんす」


 金星接近の時期もそう長くは無いので、いつ「安らぎの園」が動き出すかという不安材料もあるので、警察と連携して、軍も最悪の事態を想定した準備を進めている。


「何かを起こす前に潰せればいいんだがな。そういや連中の魔工具についての推測は出来たのか?」

「何かを操る魔工具であろうという予想が出たでやんす。それが何かと言われると、組織の特性を考えれば大体察しはつくのでありんすが」


 組織の性格的に、操る対象は幻想獣だろう。幼態を群体とするのか、成長態や完成態をごく少数支配下にするのかまでは解らない。


「まあデカいのを一体だろうな」


 言ってみてそういえば、と霞沙羅はずっと前に解析したとある杖のデータを思い出した。


 あの杖は破損していたので完全とは言えないけれど、あと少し補助してやれば再現するのも難しくない。


「神降ろしの杖ってあっただろ?」

「あー、あの、アリシア君のところで使われた。そんなモノもありましたなあ」


 本来の名称は不明で、その性質から名付けられた仮の名前。


 実際は神を降ろす事は出来無いけれど、それの直下にいるような大物の魔族は呼べて、召喚した人間はコアとして取り込まれるものの、融合した魔族に対して、ある程度の意思を反映出来るという魔工具だ。


「今回もあいつらが関わっているだろうし、技術的に延長上にあってもおかしくはないんじゃないのか?」


 あれは一部の人間にだけ公開した情報で、この世界のモノでは無いので最初は盛り上がったけれど、地球には召喚する魔族がいないのでいつしか忘れられてしまっている。


 吉祥院も同じく、数多ある魔術書の中に埋もれさせていたけれど、霞沙羅がそう言うのであればもう一度見返すのも悪くないと考えた。


「早速家に帰って見返すとするでやんす」

「出てこなかったら私に言えよ。データは持ってるからな」


 関わっている相手が誰かなのかを解っていれば、何が起きるのか多少は判断出来るだろう。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ