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侍にご褒美を -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 今日は、前々から言われていたウキウキ常務という番組に、占い師としてフィーネが登場する回の収録日だ。


 とはいえフィーネは事前の打ち合わせで決められた、トレードマークでもある黒いドレス姿に身を包み、いつもと変わらぬ様子でお店に出掛けて行ってしまった。


 出演者は堂々としていたのだが、なぜかソワソワしているのは、テレビの収録には関係の無い(さかき)の方だ。


 番組MCが推しのバンドのボーカルだから、何かちらっとでも見にいきたいなと、誰にも口にする事も無く、静かにやどりぎ館の外を見ては、時計を見たりとを繰り返している。


 地方局のローカルで規模の小さな番組だし、いやいや、そうなるとスタッフもそんなに多くはないだろうし、見に行ったら迷惑なんじゃないだろうか。


 自慢の身体能力で気配を極限まで消せば誰にも気が付かれない自信はある。


 だが収録するお店は小樽の観光エリアにあるから、失敗したりする可能性はある。そうなると。やっぱりバンドマンの仕事の邪魔はしたくない。


 その落ち着きの無い動きを背中に感じながら、伽里奈(アリシア)は後で持って行くフィーネのお弁当を作っている。


 これがあるからロケ弁はいらないと断ったらしい。それもあって動いている車の中でも食べやすいだろうとサンド系がメインのお弁当を指定された。


 情報によると収録の進行としては、午前中はお店でのロケをして、午後はロケバスに乗って、事前にスタッフと決めていた4箇所のラッキースポットに向かって、それぞれの場所でロケ。


 収録は今日一日で、番組的には3週分だとか。3回にわたってフィーネの姿が全道に放映される。


「フィーネさん、ただでさえお店の予約が取りにくいくらい人気占い師なのに、大丈夫かな?」


 占い師として有名で、関東や関西からもわざわざ政界や財界、芸能界関係者もやって来るから、これ以上顔を売る必要もないのに、全国的にはマイナーな北海道ローカルな番組ながら、放送後には見逃しネット配信もするので大丈夫なのだろうかと心配になる。


「見に行きたいみたいね」


 榊の落ち着かない様子にはエリアスも気にしている。


 折角北海道に引っ越してきて、小規模ながら横浜でも行われているライブにはこれまで何度も行った、推しのバンドのボーカルが割と近くでテレビ番組の収録を行っていて、同居人がそれに参加している。


 ライブでは(さかき)中佐だと解らないように、後ろの方で他の観客に紛れるようにひっそりと忍んでいたり、サインや握手の機会にも解らないようにしたり、あまり目立たないようにしている。


 バンドの方は「榊中佐が自分達のファンだ」という事が解っているようで、SNS等でもたまにその事に言及されているから、会えば喜んでくれるかもしれない。


 いやーでもそういうのはフェアじゃない、と思うと、またソファーに座り、いやしかし、と立ち上がり、を繰り返し始めた。


 そんな榊がいるやどりぎ館に霞沙羅(かさら)が隣の家からやってきた。


 霞沙羅は榊の方をチラリと一瞥すると、軽く舌打ちを一つして厨房に入ってきた。


「おい、フィーネに弁当持ってくついでに余市まで歩こうぜ」

「ええ、いいですけど」


 運動のために、たまに魔法談義をしながら霞沙羅と歩くことがある。それをやろうぜと言っているのだ。


 館からの距離は20キロくらい。2人はかなりの早足で歩くので3時間もかからない。


 住民からのリクエストだ、と思っていると霞沙羅はチラッと榊を見た。


「みず…、おい、部屋の中でウロウロする暇があるなら余市まで歩こうぜ」


 そろそろ「さかき」じゃなくて「みずほ」って言っちゃいなよ、と伽里奈(アリシア)もエリアスも思っているけれど、今日も霞沙羅は言い淀んだ。


 なぜこの人は乙女な部分を出してくるのだろう。


 こんなにも態度が大きな自信家なのに、と吉祥院(きっしょういん)もイライラしていると愚痴ってきたことがある。


「俺か?」

「余市に酒でも買いに行こうぜ」


 コンビニに行くような口調だけれど、さすがに霞沙羅がなんでこんな事を言い出したのかという考えは察しがつく。


「ついでに知り合いに弁当持っていくだけだぜ」


 正直なところ、霞沙羅の方が有名人だ。それに霞沙羅は局のテレビクルーにも慣れているし、つい最近も生放送に出演した地元のテレビ会社だし、その情報番組と同じディレクターがやっているから、自分よりはそっちに注意が行くだろう。


「お、おう、解った」


 しかたないな、という雰囲気を出して霞沙羅の提案を受ける事にした榊。


 一人で行くのはあれだけれど、クッション役の霞沙羅と、いざという時に何かの役に立ちそうな同性である伽里奈(アリシア)もいる。


 そうと決まれば、榊はソファーに座ってお茶を飲み始めた。


 やがてちょっと大きめなお弁当を包み終えると、3人はまずは小樽の町に出掛けていった。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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