みんな前に進んでいる -5-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「あれ、なんか反応が違うなー」
料理を出し終わったので、この後少し落ち着いて談話するために、食後のお茶と焼き菓子を持ってきたアリシアは、クラウディア周辺の反応が少し違う事に気が付いた。
「何か美味しくなかったとか?」
「そういう事じゃなくて、パフェは夢みたいに美味しかったわよ。でもなにかクリスの記憶が呼び覚まされているらしいの」
「そうなの?」
「なんかパフェすら食べたことがあるらしいゾ」
「えー、この世界でだよ。まあボクらだって島国とか東の果てとかには行ってないけど」
前に鏡で話した時に、この子は知らない料理を作るとは言われていたけれど、どういう事だろうか。なぜか記憶が戻っているのはいいけれど。
「アリシア、話を始めるぞ」
そこの所はまた今度聞く必要はある。
とにかくタウが話しをするぞと言うので、アリシアも近くの席に座って、ラスタルというかこの国についての、最近の話しを始めた。
高位の魔術師として二年間、この学院にいるのなら避けては通れないのが、霞沙羅と吉祥院の話だ。
アリシアの話だと、現在は向こうの世界で一波乱あるのでここしばらくは来られないだろう、というけれど、いずれ魔術的な意見交換をする機会があるだろう。
「王者の錫杖については、そろそろ同盟国へも話しをする準備をしておるところだ」
「あれの解析はリバヒルの学院からも賢者が協力しながらも、何も成果はなかったと思いますが、本当に終わったのですね」
「こことは違う世界から、何者かの手で持ち込まれた魔工具だということが解った」
「アリシアが今いる世界ですか?」
「いや、更に別の世界だそうだ。それでどうやっても解らなかったのだが、アリシアとそのカサラ殿が魔術を習得しておってな。世界が違って我々は同じ魔術を使用することは出来ないので、こちらの魔術に翻訳して、纏めておるところだ」
完全に解明されたレポートはあるけれど、オリジナルの魔術を使った悪用を防ぐために、タウ達の方で危険の無いように、あくまで対策方法を伝えるレポートに再編集されている最中だ。
「異世界の魔術とは…、すごい事になっていたのですね」
「もうしばし時間を貰えれば、同盟国の学院に案内をしよう」
霞沙羅という人物はエミリアを気に入っている変な人という印象があったけれど、大賢者からの評判からも魔術師としての能力はかなり高いようだ。それならば魔術師同士として会うことは悪くない。
「カサラさんの右腕のキッショウインさんは会う時には驚かないでやって欲しイ」
それについてはタウ達もうんうんと頷いている。
「どうして?」
「とんでもなく背が高いんダ。あのドアから入ろうとすると顔がつっかえるくらいニ」
「頭じゃなくて顔なの? 巨人族なの?」
「クラウディアがこのテーブルの上に立ったくらいの身長があるんだー」
「そ、そうなのね。会う時には気をつけるわ」
それから町の話や、これから学院の教育分野でアリシアがやろうとしている事があるから、それに参加して欲しいという話をして、食事会は解散となった。
* * *
もう少し町を案内した後に、今日の所はクラウディア達2人はリバヒルに帰っていった。
次に来るのは来週。予定が変わらなければ飛行船に乗って荷物と一緒に来るので、引越の手伝いは学院から何人か出すことになっている。
「あのクリスとかいう子に料理の事を訊いてみたいなー。得るものがありそう」
とりあえず記憶喪失が解決してからの方がいいだろうから、少し時間はかかるだろうけれど、クラウディアは面白い子を拾ってきたものだ。
* * *
「ところでエリアス、ラシーン大陸にパフェが食べられるところってあるの?」
ファッションイベントが近づいて、エリアスは初めての大舞台を前に変わらず熱心にモデルとしての勉強をしているけれど、ここのところはやっぱろ寂しくなって、ずっと伽里奈の部屋で寝るようになった。
寝る間も惜しむほどに何かに打ち込んでいる姿を見ると、この地球に連れてきて良かったなと思っているけれど、エリアスを側に感じて眠れるというのは伽里奈としては嬉しい限り。
「パフェなんてあの世界には無いわよ」
「でもさ、今日会ったクラウディアのお世話係の子がパフェを食べた事があるような反応をしてたんだー」
とはいえ魔女戦争の時にラシーン大陸全土を見ていたエリアスが言うのだから間違いはないだろう。
「えー、じゃあなんなんだろ。あとさ、日本人みたいな見た目の人が住んでる国ってあるの?」
「ヒルダさんみたいに黒髪の人はいるけれど、あの世界の人間は、こっちで言うヨーロッパ系の、白人的な見た目の人しかいないわよ」
「そうなのかー。クリスとかいってたけど、なんなんだろ」
「地球にはやどりぎ館しか無いけれど、他の世界にある館に住んでいるという可能性もあるんじゃない?」
「他の館にいる子が、クラウディアのサポートで、ちょっと前のボクみたいに顔を出しているって事?」
「でもそれだとクラウディアさんがアシルステラに住んでいる必要がないわね」
「そうだよねー、何だろうね。うーん、でもこの館があるって考えると、違う運用のところが、例えばクラウディアに目を付けた神様がサポート係をよこすとか?」
「私は運営の事は解らないけど、フィーネが言うには、運営側の彼女も他の施設の事は全部知っているというわけではないみたいだから、一応問い合わせでも送ってみる?」
「そうしてみようか。エリアス、変な話してごめんねー」
「私にも解らない事って多いのよね。でも貴方が気になるなら、その子への疑問は持っておいた方がいいかもしれないわ」
実際、助っ人を派遣するような運営の館があったとしても、やどりぎ館の管理人である伽里奈が知る必要は無いのかもしれない。
そうなるとクリスはその事実を隠そうとしているのだろうから、変にツッコミを入れて向こうの邪魔をするのは良くない。
記憶喪失と言っているのも余計なことを訊かれないようにしていたとしたら迷惑だろう。
「まあ、訊くタイミングを待っておくよ」
いつまでもこんな話をしていても、エリアスにも解らないだろうから、時間がある時にでも連絡をしてみようと結論づけて、伽里奈は寝る事にした。
今日は久しぶりに隣にエリアスがいるし、ゆっくりと眠れるだろう。
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