みんな前に進んでいる -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
幻想獣対策に沸く北海道のことはともかくとして…。
引越を前に、住むところの状況を確かめるためにクラウディアがラスタルにやって来る事になったので、アリシアも学院にやってきた。
クラウディアは宮廷魔術師だけでなく教職もやっている事もあって、両国の学院間の行き来をする機会が少なからずあって、今ではラスタル側にも結構顔が利くけれど、歓迎の意を表するために学院幹部が
懇親会的な食事をセッティングするというので、料理を作りに来い、という部分も含めてアリシアも呼ばれた。
呼び出されたという方が強いけれど、アリシアも歓迎しているので文句は無い。
「アーちゃんがいない間にも何度か、短期で泊まりに来たりはしているんダ」
「それならラスタルの環境に慣れてるって考えていいの?」
「まあそんなところダ」
「この国には結構長くいるんだろ?」
知り合いという事もあってハルキスも挨拶に来ている。今はラスタルで騎士団の業務に就いているけれど、これまではタイミングが悪くて会えていないという。
この後に騎士団への鍛錬があるので、とりあえず挨拶をするためにやって来た。
「2年の予定ダ」
「教師の仕事に来るからねー」
「リバヒルでは色々世話になったものね」
ヒルダも来ている。
ハルキスとは別件で将軍達から、アリシアがやたら絡んでいるモートレル騎士団の現状をヒアリングされてしまう事になっている。
クラウディアは当時から魔術師として王宮にも籍を置いているから、冒険者時代は王家との顔も繋げてくれた。
同盟国の地方領主の娘だといってもリバヒルではなにがしかの地位があるわけではないから、ヒルダ的にも助けられた。
「いやー、あのキッショウインとかいう魔術師を会わせてみたいぜ」
「ライアから情報は行ってるかもしれないけど、実物は会話だけじゃ解らないしねー」
クラウディアの身長はアリシアとルビィの中間くらい。女性としてもエルフとしても、まあそんなもん、という程度だ。
そうなると頭3個分以上違う身長の持ち主のビジュアルは、事前情報があっても中々想像はつかないだろう。
「異世界の魔術にも反応しそうだナ」
「そういえば王者の錫杖の、同盟国への解説ってどうなってるの?」
「近いウチにやることにはしているが、なんとかいう世界の魔法を教えても仕方が無いから、霞沙羅さんとアーちゃんがこっち向けに変換してくれた話をする予定ダ」
ヤマノワタイである。
「使えないならもう壊した方がいいんじゃないの?」
自分の領地であんな事件が起きて、ヒルダとしてはもう関わりたくない。
魔術師が何を考えているのか解らないけれど、皇帝の血筋が絶えてしまったからもう動かない上に、魔術の構造も解ってしまったのだから、役目は終えていると思う。
「硬いんだよねー。直接狙ったわけじゃないんだけど、システィーの攻撃に巻き込まれても傷一つついてないから」
「それはすげえな」
「素材についてはタウ様達が研究しているから、壊すならそれが終わってからだナ」
一応壊す予定にはなっている王者の錫杖の構造は内緒にしておいた方がいいような気がするけれど、かつて大陸を騒がせた一つのケースとして後世に残すことも大切でもある。
「先生に頼めないのか? 練習用のくせにヒルダとハルキスの武器がとんでもない堅さになってるじゃないカ」
「アレは学院には貸さねえぞ」
先日、モガミとユウトという2人の『気』の達人に出会って、ハルキスは今まで以上に『気』の鍛錬に力を入れるようになった。
随分前に普通の練習用ハルバードを霞沙羅に真っ二つにされた事もあって、『気』の鍛錬を視野に入れて作って貰った代用品の段違いのクォリティを信頼しているから、変な魔術師達に触られたくない。
「私としても道義的に、先生が作った武器をあそこの賢者様達に言う気は無いゾ」
あの堅さの正体は素材によるものなのか、本人の加工技術なのか。後者だったら魔術師にはどうにもならないけれど。
話をしていると、中庭の一角に転移魔法の魔術基盤が現れて、2人の人影が転送されてきた。
「わー、クラウディア久しぶり」
銀色の髪を後ろで結わえて、落ち着いたドレスのような服を着た、上品そうなエルフ。クラウディアがやって来た。
それともう一人、先日の話でも出てきたクリスとかいう、お付きの女の子がいる。
ちょっと地味な感じの、黒髪の普通の女の子だ。
そっちは付き人らしく、クラウディアからやや後方の位置に立っている。
「アリシア、あんまり変わってないわね」
「え、いやー、まあねえ」
まさかエリアスの意見でちょっと年齢を巻き戻されているとは言わない。
「奥さんもいるっていうから、もうちょっと男っぽい服にしてると思ったのに」
「そっち?」
今日はお城に行くわけではないから、エリアスが選んでくれた女子向けの服装を着てきている。
「いやー、でもアーちゃんもたまにはスーツ姿になったりするようになったんだゾ」
「え、そうなの? ハルキス的にはどう?」
「いや、なんかアリシアが男の服を着てるってのは、町で噂を聞くぞ。俺は見たことが無いが、意外と合ってるらしいぜ」
「アーちゃんは冒険中も依頼でたまに男の服装をしていたものね」
恋愛相手としては眼中になかったヒルダの目からしても、男装したアリシアはなかなか悪くなかった。
「そういう劇もあるみたいだから、実際に見てみたいわね」
アリシア達は魔女戦争を終わらせた英雄として名高いけれど、さすがに他の国に行くと、他国出身の人間をそこまで賞賛するわけにもいかないので、演劇をするにしても、当時自国で活躍した人間の活躍を増すのが通例なので、やや雑な扱いになってしまう。
ライアも自分達6人をモデルにした劇をやってはいるけれど、リバヒルには配慮しているのが現状だ。
「クラウディア、久しぶりじゃな」
転移したのを感じてタウもやって来た。
「はいタウ様、今日はよろしくお願いします」
「2年もの期間、ここにいて貰うのだからな、その間の住処をしっかりチェックしていってほしい。それから昼食はこのアリシアに作らせる。それを食べながらゆっくりと話をしようではないか」
「アリシアの料理はライアから話を訊いていますから楽しみです。じゃあアリシア、よろしく頼むわよ」
「はーい」
「では二人とも、クラウディアを案内するのだ」
「はーい」
挨拶が終わるとハルキスとヒルダは自分達の用がある場所に行き、アリシアはまだ食事の準備には時間が早いので、もう少しクラウディアに付き合う事にした。
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