吉祥院家の剣 -5-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
異世界まで来てくれたルビィのために何か参考になる物はないかと、吉祥院が横浜大の施設を見学させてくれて、その後に研究室にやって来た。
「どうだったでござる?」
「設備の形は変わってもやってることはあんまり変わらないんだなという感じダ。ただこっちはやっぱり紙が安いというのが羨ましイ」
「レポートなんかだとねー、アシルステラの方はPCで作って印刷ってワケにはいかないからねー」
「あの記録盤は、ワタシらから見ても、魔術師には最適な道具だと思うでござるが? 学生も持っているのでござんしょう?」
「あれは職員用や卒業生の研究員用ダ。作るのに結構手間も費用もかかるし、学生レベルではあれに記録するのは無理ダ」
「確かに値段の事は解るだっちゃ」
伽里奈の記録盤をカサラがコピーしたけれど、今のところ吉祥院の分との二台しか無いのは、代用品といえど素材が高いからだ。
それに地球側にはPCだのスマホだのがあってそっちの方が多機能で便利だから、魔術師の身でも記録盤は趣味の世界かもしれない。
「焦げた人形が置いてあるのだガ」
「ああ、それは窃盗集団の一人が使ってた魔工具なんだべ。偵察用でね、窃盗事件の時に壊したのを回収したでござる。他にもあるんだけど、それは警察やら軍に渡して、これの使い手を捕まえるために各署で研究中で候」
吉祥院はその内の2体を貰った。
それで大学関係者と魔術協会の2つのから協力してもらっている最中だ。
「これがアイザックの道具なんですねー」
「使用中に魔力を辿ることで本人の位置を逆探知する事は出来たんだけどね、向こうもさるもの、紙一重の差で逃げられてしまったでやんす。機能は停止してるから、何か手がかりがないか、これから解体する予定でありんす」
「自動だったり呪いで動いているわけではなくて、遠隔操作なのカ。窃盗となればこっちの方を選ぶナ」
「まあそうだねー。そういえばラスタルの方で人形殺人事件って起きてない?」
「そうそうあれナ。国から対策の指示ががあって、学院が動き出した。もう冒険者も関連した護衛の依頼をうけてるそうだガ」
「そっちも人形関連の事件が起きているでやんすか?」
「商人が一人殺されたのが始まりダ。実行後の目撃情報でしか無いが、殺しの現場には人形がいたんだそうナ」
「勉強のために、異世界の道具とあらば、どういうモノか見てみたいものでやんすな」
「何にも考えてない冒険者に破壊されないことを祈るしか無いですねー」
学院の関係者が見つければ人形の捕獲に走るだろうけれど、ボディーガードの依頼中に冒険者と遭遇したら、気が利く魔術師でもいない限り間違いなく壊されるだろう。
事件が終わるのでそれでもいいんだろうけれど、魔術師の身としてはどういう事件だったのかの検証くらいはしたいものである。
新たに作られたモノなのか、それともどこかの遺跡から出てきた過去のモノなのかとか。前者だったら事件は終わらないし。
「逆探知は出来たのに、そこからアイザックを追えないんですか?」
「これでやってみたで候。例のマンションに髪の毛も残されてたから何本か貰って、魔力と生体反応を追ってみたりして」
吉祥院は和紙で作られたペラペラの人形を見せてくれた。
これに糊を使って髪を貼り付けて、呪いの要領で本人の生体反応がある場所に誘導して貰おうとやってみた。
「向こうも恐らく結界内に閉じこもってるようで、対策されたでやんす。事件当日は結界の中からじゃ人形操作は出来ないから外してたけど、今は潜伏中だろうからね。まあずっと籠もってるわけじゃないだろうからタイミングを見て引き続きやってみるぞよ」
さすがに欧米にいながら多くの魔術師の追跡をかいくぐってきた人間だけある。多少迂闊なところはあるようだけれど、今回は中々粘る。
アイザックもこっち側に吉祥院がいるのが解っているので、一度でも居場所を特定されたこともあって、警戒をしているのだろう。
「こんな紙で何かが出来るのカ?」
和紙な事もあって、紙は薄いし頼りない。
「こんなのでも昔は色々な仕事をやらせていたのであります。先日教えた紙飛行機はこれの応用でやんすな」
「アーちゃんはこれを使えるのカ?」
「ボクはこういう古い日本の魔術まではそこまで触ってないんだよねー。吉祥院さん家は千年以上も時の政府と繋がりのある家で、色々国のために動いているから、引き出しが多いんだ」
「おおー、なら私が覚えるゾ」
「その前に紙をもうちょっと気軽に生産できるようにならないとねー」
「まあその辺は、どうにカ」
伽里奈的には和紙作りを参考にした、紙を作る魔工具を制作中だったりするから、習得するにしてもそれを待っている状況だ。
でもそれは出来上がるまで黙っておこうと決めている。
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