吉祥院家の剣 -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「今度クラウディアが来るから施設やら寮の案内をしてやって欲しイ」
「折角のエルフだから霞沙羅さんに紹介しようと思ったんだけどねー、今は色々忙しいから残念だなー」
今は幻想獣の出現に備えておかないといけないから、ちょっとタイミングがあわなかった。でもクラウディアはこれからラスタルに2年も滞在するから、焦らなくてもいつでも紹介出来るだろうから無理に誘わない方がいい。
「うん、いいじゃないか。これなら外に出ても大丈夫だね」
さすがにルビィをアシルステラの服で歩かせるわけにもいかないから、こちらで着る服は、招待した吉祥院が用意してきた。
今はそれを着せて、エリアスが髪をセットしているところだ。
黒基調のゴスロリセットは、背が低めなルビィにとても似合っている。それに髪はアッシュブロンドなので服とのコントラストがなかなかいい。
その髪も今はウェーブをかけているところ。
「向こうで着るにはちょっとって感じですけど、まあルーちゃんは貴族の家出身の、一応お嬢様だしこういうドレス的な服も悪くないかなー」
「あんまりお嬢様という気は無かったゾ」
魔法学院に入れば、もっとお金持ち出身の生徒はいるし、そもそも王都育ちだからエバンス家やファースタイン家のような超一流の貴族の大きなお屋敷を見ると、自分はそんなにお嬢様では無いと感じる。
それに学者というか、勉強ばかりしている魔術師の家なので、家の中は地味で、贅沢をするような事も無かった。
ドレスは持っていたけれど、イベント事以外では着ないので、その数も少なかった。
さて、髪のセットが出来上がったところで、エリアスがデジカメを出してきた。
「お人形さんのようでありんすな」
「ルビィさん、折角なので写真を撮りましょう」
エリアスも満足のいく出来だ。モデルの練習もいいけれど、ファッションセンスを磨くのも大事な勉強だ。それにしても吉祥院は良い服を選んだモノだと感心してしまう。
自分が着る着ないはともかく、エリアスもその辺のセンスはまだまだだなと、この後ネットを漁ってみようと決めるのだった。
「うーむ、我々はちょっと大きめだから、大体の売り物を着ることが出来るルビィ女史が羨ましいでありんす」
吉祥院が着れるサイズの市販品なんか世界中を探しても売っているわけもなく、180手前のエリアスでも国産ブランドの服は選択肢が少ないし、海外品を頼ることも多い。
ルビィは150くらいしかないけれど、日本人女性の平均から見れば問題無い身長なので、国産ブランドなら選びたい放題。
「私は大きさを間違えたかしら」
「エリアスの身長が低すぎたらモデルの話が来たかどうか解らなくなるから、今のでいいんじゃない?」
背が低めなエリアスというのは伽里奈にはもう想像が出来ない。やっぱりこの身長も含めての魅力なので、並んだ時に身長差でちょっと自分がアンバランスに見えても、エリアスはこのままでいいと思う。
「そういえば魔女時代から変わってないんだナ? 実物に会ったのは割と最近だが、空中投影された姿からは大きめなのは解っていたゾ」
「悪役として威厳ていうものがあるじゃない」
「システィーはなぜそのサイズにしたんダ?」
「この館の人達は大きめが多いですから、それよりは低めにしたんですよ」
システィーの人間態は164の伽里奈よりやや大きくて、170くらいのフィーネよりやや小さいくらい。
少し離れれば伽里奈とあまり変わらないくらい。
「二人には身長を10ずつあげたいところでありんす」
「王都サイアンで魔族を後ろから素手で掴んだのには驚いたものダ」
「羽が生えてたから、それを掴んで宙づりにしただけだっぺ。こう見えても昔から護身術で古武術もやっているし軍人の訓練も一応しているから、殴り合いをしても並の兵隊なら一発KOだったりするでやんす。ルビィ女史は魔術師専門でありんすか?」
「いや、アーちゃんに護身術は教わって、その辺のゴブリンなら一撃ダ」
「見た目から判断して、直接戦闘が弱そうなルビィさんを狙うように仕向けたことがあったけど、意外と強かったのよね」
刃物は持てないけれど、実はアンナマリーでは相手にならないくらいには強かったりする。
「そのくらい強いのであれば大丈夫でやんす。それではこの指輪を渡しておくっぺ。これを付けないとアシルステラ人はこっちの魔法を使えないから付けておいででやんす」
霞沙羅が作った、魔法の発動体の変換装置だ。ルビィが元々身につけているアクセサリータイプの発動体では、折角覚えた地球の魔術が使用出来ない。
ダンジョンを見て貰うのにもこれがあった方が便利だろうと、伽里奈のモノと同等品を作って貰っておいた。
「まずはワタシの実家に行くので、そこでちょっと練習をしてみるでありんす。ルビィ殿なら問題ないでありましょう」
住宅で混み合っている鎌倉の一角にある吉祥院家本宅だけれど、何百年も前から土地を確保してあるから敷地は広いし、当然のように魔術練習施設は備えている。
「魔術を覚えても、現地仕様の発動体をつけた現地人でないとダメというのが面倒だナ」
「それを誤魔化す為の指輪でやんす」
早速渡された指輪を付ける。これでルビィも疑似地球人になった。
それにしてもこんなものを作ってしまう霞沙羅はすごい。逆バージョンはアシルステラでたっぷりとその効果を見せて貰っているので、信頼出来る魔工具だ。
自分だけじゃなくて学院上層部の天望の座メンバーまでもが興味を示すのも解る。
「先生は今日はいないのカ?」
「霞沙羅は軍の勤務でやんす」
「幻想獣っていう魔物とか魔獣みたいなのの発生時期だからねー」
「その為に空霜を起こしにいくんですけどね」
「ルビィ女史の準備も終わったところで、じゃあそろそろ行くとしようじゃん」
「エリアス、留守番お願いねー」
「ルビィさんに何かあったら私を呼びなさいね」
エリアスは何枚も撮ったルビィの写真に満足して、何枚も何度も拡縮させるなどして見ていた。
準備がすんだところで、伽里奈達は鎌倉に向かった。
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