表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

388/525

追跡をしようじゃないか -5-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 モガミとユウトは2対2での鍛錬をやっている横でやろうとしたけれど、2人の『気』の使い方が気になるので、結局全員でモガミとユウトの戦いを観戦することになった。


「本来の使い方は殴り合い用だから」

「じゃあどうなるんだ? 楽しみじゃねえか」


 こちらも毎日鍛錬を欠かしていないくらいハマっているハルキスも楽しみだ。


 武器は使うけれど、基本は徒手空拳だという2人のやり方はちょっと独特で、いきなり息の合った演舞から入ってきた。


 もうすぐ一年ぶりという久しぶりな全力対決だから、その前にお互いに今の状態を探り合っているというところか。


 それでも相手のちょっとした動きを読んで攻守をめまぐるしく変更させていく様は、達人達の目には2人の秘めた実力を想像させるには充分だ。


「あのトンファーとかいう武器、面白いな」


 リーチは短めで攻撃力は低そうだけれど、攻守が自在に変わる。こういう武器はアシルステラには無い。


 作りはあまりにもシンプルなので、護身用としてどうかと、ハルキス達は考えた。


「お前はあの武器も使えるのか?」

「まあ教えて貰ったけど」

「そうか、じゃあ今度頼むぞ」


 そして2人が手に持った武器を放り投げると、突然素手での殴り合いが始まった。


 拳にも蹴りにも『気』が乗っていて、手足を光らせた男達が互いに猛烈な拳や蹴りを繰り出す。


「一撃一撃がすげえ重てえな」

「あんなのが当たってるのにお互い怯まないわね」


 ちゃんとガードや回避もしているけれど、しっかり攻撃は入っている。


 顔面にもボディーにもいいのが入ったというのに、お互いを真っ直ぐ見つめて、休むこと無く殴り続ける様は、刃物での戦いでは出来ない、ダイナミックさがある。


「全身に『気』を鎧のように纏わせてるから、筋肉が鋼鉄のように変化してるんだぜ」

「ホントかよ」


 霞沙羅の解説にハルキスが、そこまでいけるのか、と驚く。


「なんか手から飛んでいったけど、魔法?」

「魔法じゃなくて、『気』の塊だ。あの2人は俺と同じで魔法は一切使えない」


 双方の塊がぶつかり合って、2人の間で大爆発が起こる。


 爆発するのはともかく、イリーナは聖職者として、どんな悪人でもいきなり殺しを行うのではなく、まずは神の威光を押しつけ…、示すために屈服させることを第一とするから、あれはいいんじゃないかと、今は何も飛んでいくことはないけれど、何度も真似をするように拳を突き出している。


「『気』ってのは最終的にはああなるのか?」

「まあ、あの2人は極めすぎてるっていうか」


 着ている服もモガミはスポーツウェア、ユウトは道着で、装飾品の類いも付けていないし、武器は地面に転がったまま。


 魔工具も魔装具も聖法具も何も身につけていない。魔法の力なんてモノは全て放棄して、2人は自分の肉体だけを駆使して殴り合っている。


「すげえなっ!」

「あんな戦い方があるのね」


 『気』を変化させて肉体強化に作用させ、急に速度を上げたり、高く跳び上がったり、棒のように固めて殴ったり、壁のようにして防御したり、滞空してみたりとやりたい放題。


 でも本当に楽しそうに、今の自分の力を相手にぶつけている。


 もう今後は、お互いにそんなに頻繁にここまでのレベルで人間と相対することなんか出来ないから、本気でぶつかる機会があって良かった。


 結局年の功というか、ヤマノワタイの危機を救った英雄だけあって、モガミが競り勝った。


「いやあ良かった。さすが優勝を勝ち取っただけはある。ユウト君は本当に強くなった」


 最後のボディーブローがキマって、倒れ込んだユウトをモガミが引っ張り起こした。


「目が覚めました。一度優勝しただけじゃあやっぱりまだまだ怠けてもいられませんね。モガミさんは自分にとってはまだまだ目標ですよ」


 エリアスが結界を解除すると、モガミとユウトの2人は肩を組むようにして出てきた。


「す、すげえぜ、異世界の人達。良かったらあれを教えてくれよ」


 やっぱりこういうノリはハルキスは好きだ。初対面の人間であっても強者とあれば興味が沸いてくる。


「見たところ剣士のようだが?」

「一応、『気』の鍛錬はしてますし、技も幾つか教えたんですよー」


 アリシアがフォローする。


 そもそもモガミからアリシアに『気』を教えているから、そう言うのなら基礎は出来ているのだろうと予想出来る。


「ほう、そうなのか。誰が希望するんだ?」


 あれだけいいものを見せられては黙っていられない。ヒルダとイリーナに続いて、あのライアまでもが挙手をした。


 彼らは一体どこまで強くなる気なんだろうか。


「いいんじゃねえのか、もうこんな機会は無いぜ」


 アシルステラ人がこの2人に会う機会はもう無いから、良い影響を受けてもいいと思う。


「そうするとライアが強くなっちゃいますけど」

「いいだろ、こっちだって対策立ててんだ」

「しかし魔法使い組はどうなったんだ?」

「ずっとあっちにいますよ」


 吉祥院とルビィは休まずにずっと魔力の押し合いへし合いを続けている。


 吉祥院としてもこんなに長く自分と拮抗出来る人間は少ないから、まだまだやめる気は無いし、ルビィの方も面白がってまだ続ける気満々だ。


 だからあっちはほったらかしにしておこう。


「小僧、この金で羊肉を買ってくるがいい」


 あれ、まだいたの? というフィーネがアリシアに現金を渡してきた。


 ぬいぐるみを渡しに行ったところを子供2人に捕まっていたのだが、ようやくお昼寝に入ったので館から出てきたところだ。


「我には未来が見えるのを忘れたか? あの異郷の者共だけでなく、アリサとエナホの分も忘れずにな」


 この金でやどりぎ館でやるジンギスカンパーティーの準備をしろと言っているのだ。まあ、この雰囲気だ。間違いなくこのまま終わらないだろう。


 館の運営者が言っているのだから、また招いても問題のある行動では無いのだろう。


 エリアスはモガミ達の話しを聞いて、まだ結界なり壁を作ると言っているようなので、やどりぎ館への帰り方の案内は任せることにした。


 アリシアはエリアスにその旨を伝えて、夕飯の準備のために一足先にやどりぎ館に帰った。


 その後本当にユウト達と一緒にヒルダ達がやって来て、またやどりぎ館で賑やかなジンギスカンパーティーが行われる事になった。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ