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追跡をしようじゃないか -3-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 正規の軍人でもないし、今は事件対策の主導権が軍から警察に移ってしまい、アリシアもやることが無くなったので、今のうちにアシルステラの用事を済ませてしまおうと、今日はモートレルにやって来た。


 今後の構想では運搬用に大型化を狙っている軽量型の冷蔵箱の製作のために大きめの箱を頼んでいたので、まずは鍛冶工房から受け取り、そのついでに冒険者ギルドの建物にも足を運んだ。


「霞沙羅さん、また来ようって言うから」

「いいじゃねえか。冒険者気分に浸りてえんだよ」


 霞沙羅の方は今後の大事件を予感して、準備運動のためにまたヒルダ達と鍛錬をする予定だ。


 今は霞沙羅しかいないけれど、あとで吉祥院と榊もやって来る。アリシア側も全員が集まってくる。


「冒険者ギルドはいつ来てもいいもんだな」

 今日も冒険者達が依頼書の物色や、仕事の受領、完了報告をやっている。その様子を霞沙羅は羨ましそうに見ている。


「近場に荷物を運ぶ依頼でもいいから受けてみてえな」


 まだ午前中だというのに、完了報告が終わって、報酬を貰って、ホクホク顔で引き上げていく一団がいた。


 どういう依頼を受けたのかは解らないけれど、護衛していた商隊がさっきモートレルについたとか、昨晩に終わっていたけれどギルドが開いている今になって報告に来たのか、そんな感じだろう。


 となると、前者ならばは宿泊する宿でもとって、その後貰った報酬を使って一騒ぎするのかもしれない。


 どそんなことを想像するとアリシア的には懐かしさがこみ上げてくる。


「こう、依頼を見てるだけでも私も冒険者っぽいよな。色々あるぜ」


 色々あるのが良いことなのか悪いことなのか解らないけれど、掲示板には数々の依頼の案内が貼り出されている。


 霞沙羅は一軒一軒その内容を確認していく。


「こっちにも人形関係の依頼が来てるなー」

「なんだよ人形って」

「同じ依頼を見たのは少し前のラスタルなんですけど、魔工具か何かの人形を使った殺人が起きてるみたいなんですよね」

「今の日本も似たようなのがうろついてやがるな」

「まあ珍しくはないですね」


 その人形からの護衛、という依頼がいくつかある。


 その一枚を5人組の冒険者グループが剥がして受付に持って行った。


「おうおう、まあまあ経験者ってところか」


 霞沙羅は彼らの装備品を見て、何年かの経験のあるパーティーだと判断したようだ。


 単純な魔物や盗賊の討伐ではなく、正体不明の殺人事件絡みという事もあって、お値段も初心者の受ける金額ではなくなっている。そうなるとそある程度の経験者が求められる。


 アリシアも冒険者達を目で追って確認したところ、魔術師もメンバーにはいるし、人形への対応は出来るだろう。だから全員殴り倒して止める必要は無い。


 どうぞご自由に依頼を受けて下さい。


 5人のグループが依頼を受けて冒険の旅に出掛けていくのを見送ってから、2人はギルドから出ていった。


   * * *


 強者達が集まっての久しぶりの鍛錬は午後からやるとして、ユウトは引越関連で自分の世界にいるし、シャーロットは卒業試験で実家に帰り、アンナマリーは通常勤務と、やどりぎ館にはあまり人がいなくなってしまったので、お昼ご飯はヒルダの屋敷でバーベキューをすることにした。


 使用する鉄板は以前にヒルダにバーベキューの話をしたら鍛冶屋に作らせたものを出してきた。


 そして鉄板の下には4台の調理盤を敷く。これなら火が出ないから安全だ。


 今日は両英雄パーティーが全員揃ったのでかなりの大人数になる事が解っていたから、アシルステラ版のつけダレを作りつつ、魚介類もささっとエリアスと一緒に港町ブルックスまで買いに行ったりと、お肉を含めて、色々と食材を揃えた。


「単純だが、なかなか良さそうな料理じゃねえか」


 ただただ食材を鉄板で焼いて食べるだけ。


 でもそれだけに揃えられた食材を見るだけで味の保証は出来ているといってもいい。


「ドラゴン退治の時に食べたっけカ?」

「まあそうなんだけど」

「アーちゃん、私はまだ食べていないわよ」

「だって王家の領地の事件だからってヒルダはいなかったじゃない」

「イリーナまで?」

「まあまあ、だから食べようって前に話をしたんじゃん。霞沙羅さん達が来るようになったから、こうなるんじゃないかと思って。それにあの時と違って貝とエビもあるよ」


 買ってきた貝は牡蠣の互換品。だから鉄板の一角を使ってワイン蒸しをする予定。


 そこにレイナードと子供2人もやってきて、かなり大人数でのお昼ご飯になった。


 まあすぐ側で働いているアンナマリーにはちょっと悪いかなとは思う。でも向こうの弁当にはビーフシチューパンとチーズステーキが入っている。


 特にビーフシチューはオリビア達には初めて口にする事になるだろう。


 加熱用の札も渡してあるから、温めて食べられるようにしてあるから許して欲しいところ。


「これは劇場では出せなさそうね」


 さすがに鉄板を劇場に広げるわけにはいかない。ステーキハウスのようなライブキッチン的な施設を作っての料理提供を提案しても、観劇の邪魔だし。


「あの、こう、良さそうなのがあったら個々にフライパンで提供すればよいのでは」


 出来上がれば美味しそうなのにと悩むライアに、お肉や魚介が分けられて、小さなフライパンを幾つか使って出している画像をシスティーが、持って来ていたタブレットPCで見せてあげた。


「おー、いいわね。こういう提案が出来るところまでシスティーは変わったのね。システィーも今度相談に来てよ」

「通行税とか取られませんかね」

「あなたは剣だもの、それは無いでしょ」

「ぱぱ」

「まま」

「あら、あなた達は危ないからそこに座ってなさい」


 2人の子供、メリルとライアンがバーベキューの方に近づいてこようとしていたので、母親のヒルダが静止した。


「ほれ、そこな赤子共。こちらへ来るとよい」


 尊大な態度で来いと呼ぶ、見ず知らずのフィーネだったが、なぜか2人は誘われるように向かっていった。


「だ、大丈夫なの、あの人?」

「フィーネ殿は先代の管理人の子供の乳母をやっておったでありんすよ。あれでおむつ替えも寝かしつけるのも巧いのでやんす」

「そ、そうなの?」


 来いと言いつつも、わざわざ椅子から立ち上がって子供2人をどこからか現れた子供用の椅子に座らせるフィーネの慣れた手際を見て、一応ヒルダは安心した。それにレイナードも側で見ているから大丈夫だろう。


「ところでお前は何をやっているんだ?」


 エリアスは水の入った鍋を金属の棒のようなモノでかき混ぜている。


「浄水よ」

「かなり前に軍用に作って貰ったヤツのこっち版か。今でも被災地で役に立っているな」


 棒には神聖魔法が刻んであって、浄化ならぬ浄水の機能を持っている。あんまり飲料には向いていない井戸水に棒を放り込んでおいても浄化はするけれど、混ぜた方が早く満遍なく浄化が進むからエリアスは作業をしている。


 水害の後に残った泥水もペットボトル売りの天然水並みになるので、水道設備が壊れたような現地では好評だ。


「お前の力でやった方が早そうだな」

「それは意味が無いでしょう。人間は知恵を絞ることに生きる意味があるのよ」


 浄化した水はポットの方に移して、大きめの冷蔵箱に入れていく。この後鍛錬をやるので、あんまりお酒は飲まない方がいいのではとアリシアが作り置きしていたのを持って来た。


 鉄板の方ではジュワー、っと派手な音がした。早速アリシアが肉を焼き始めたのだ。


「貴族の家の前でバーベキューか」


 バーベキューというと川とか海辺、もしくはアメリカのようにホームパーティーで食べるような気がする霞沙羅。地方だけれど、領主の家の前でやっていいのかどうか、ちょっと考えてしまった。


「ウチではやらないけれど、ラスタルなんかだと貴族が趣味で整備した庭園を見ながらの立食パーティー、なんていうのもあるのよ」

「おー、そういうもんか」


 とにかくバーベキューが始まった。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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