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追跡をしようじゃないか -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 盗み出した宝物にいつの間にか仕掛けられた罠になんとか気が付いて、ようやく逃げ込んだと思った厚木の研究施設から埼玉の飯能にまで移動する羽目になった「安らぎの園」メンバー達は、個人的に支援してくれている隠れ金星の虜の持っている土地に設置されている建物に逃げ込んだ。


 彼は表向きは普通の農家で、農作物である芋の耕作のために山を所有している。そこを一時的に借りることにした。


 もし警察に嗅ぎ付けられても、まだ未開の部分だからとか、今は休耕しているとかで管理がずさんになっていた所に、自分達が転がり込んでいたことを適当に言い訳すれば誤魔化せると、快く受け入れてくれた。


 その為に、最初の挨拶だけを済ませると、この後は会わないように決めて山の中に入っていった。


 自分達がダメでも、また後に続く別の組織が頼れる場所を残しておいた方がいい。だから極力無関係を装わなければならない。


「しかしあそこまでの用意をしているとは思わなかった」


 メンバーは一息ついたところで、これまでを振り返ることにした。


 テレビ局社員だった同志が捕まったのは解っている。ただ、彼女から次の行動が漏れた事を示すような動きは無かった。


 漏れるとすれば今回の盗みの話なのだが、逮捕されてからも警察は全然動かなかったから、知らぬ存ぜぬで粘っているのかと思っていた。


 横浜大の研究者同志からは、あの吉祥院も大学内でも通常営業で、元々あった宝物庫には触れずに、新しく作ったダンジョンの方に入れ込んでいると聞いていた。


 大学構内の警備もこれまでと変わらずに普通。


 その上、警察に相談するようなことも無く、大学の様子も全く変わっていないという事だったから、予定通りに決行したというのに、こっそりと準備が進められていた。


 そのせいで傭兵団を含め、作戦に参加した同士達も捕まり、アイザックは居場所を特定される事になった。


 しかも何とか持ちだした魔工具にはどこかに設置されていた探知用の虫がついているという徹底ぶり。あれは明らかに襲撃があることを知っていた。


 結局はとっくに情報は漏れていたのを、そうでないように隠蔽されていたのだ。


 集める魔工具は2つは手に入ったが、状況的にも残りがダンジョンに移動させた中に混ざっている事が解ってしまったので、一纏めにして宝物庫のセキュリティーレベルの高いエリアに持って行かれてしまうだろう。そうなると再び手に入れることはもう無理だと言ってもいい。


「あの、何とかいう魔術師から受け取った器は動くには動くだろうが」


 当然このままでは設計したとおりの動きはしないだろう。


「あの2人への連絡はつくか?」


 仮面のリーダー「カワホリ」と名乗る男は、これまで窓口であった同志にカナタ達への連絡を取らせようとするのだが


「出来ません」


 連絡が取れない。


 昨晩のことは今朝のニュースとしても取り上げられていたので、あの2人もこの失敗を知ったのかもしれない。


 そうなると今はコンタクトを取りたくはないだろう。


「仕方ない。会社の人間にそれとなく店を訪ねさせよう」

「仮面殿」


 声がしたところには、西洋的なドールが立っていた。人形の向こうにいるのはアイザックだ。


 アイザックには器についての相談の仕事もあったから、失敗の連絡があった時に、セーフハウスとして、三郷の倉庫近くにあるマンションを案内してある。今はそこから人形を操っているわけだ。


「たどり着けたか」


 初来日という人間には横浜から三郷は少し面倒くさい移動になるが、何とかたどり着けたようだ。


「マンションには倉庫の人間に案内して貰った。しかしやはり吉祥院家の人間というべきか。私も活動が欧米を中心にしていたから噂でしか聞いていないが、まさか居場所を逆探知されるとはな」


 日本にも人形を操る術がある事は知っていた。だが千年近くの歴史がある家だ。その経験から、最初から術者を特定する技術があったから、霞沙羅に時間稼ぎをさせていたのだろう。


 術者と人形は、本当にか細い魔力的にな接続なのだが、あの油断していた短時間でたぐってこられるとは、さすが日本最強の魔術師一族だけある。


「それでだ、まだ協力を願えるか?」

「器のことだろう? 私もマリネイラ信者ということもあり、この結果を見てみたい」


 幸いな事に、器の設計図は貰っているので、不足部分を、本来の魔工具ほどとまではいかないかもしれないが、代用品を組み上げることは出来るかもしれない。


 「安らぎの園」としても、プロジェクトの各所で多少は計画がずれることはある程度想定している。


 折角ここまで、何年も忍んでやって来たのだ。ほんの少しでもズレをカバーする心構えはしてある。


 それに次の金星接近の時に延期するとなると、新たな同志の募集と計画の大幅な修正も必要となってしまうので、次回どころか何年後になるか解らない。


 しかしここまでやられてしまえば会社の方もどうなるか解らないから、次は来ないかもしれない。


「人形越しにはなるが、早速設計図を見せて貰おう」

「ああ、それをもって指示を貰おう。必要な素材があれば集めようじゃないか」


 まだ諦めるわけにはいかない。


 集まった同士達の為にも、この作戦を続けるしか無い。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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