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吉祥院の企み -5-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 霞沙羅(かさら)がぐだぐだな話しをしている間、吉祥院は人形とアイザックの繋がりがどこから来ているか探知し続けていた。


 人形を操るためには魔術で繋がっているのだから、当然それがどこから繋がっているのかを読み取ることは可能だ。しかも今は霞沙羅との腹の探り合いに集中しているので、一時的に吉祥院に対して油断をしている。


 これが伽里奈(アリシア)が作ったような、予め行動を設定されたゴーレムであった場合は出来ないけれど、日本にも昔から同種の技術はあるので、吉祥院を名乗る人間なら問題無く逆探知は出来る。


 霞沙羅が時間稼ぎをしている間に魔力感知で場所を特定して、榊を連れて東戸塚のマンションに転移をした、のだが。


「ちょっと遅かったかな」

「向こうもこれで飯を食ってきたわけだしな。引っかかったとはいえ、やはり警戒心は強いものだ」


 部屋の中にはほんの数秒前までアイザックがいた痕跡が残されていた。


 座っていたソファーはまだ人間がいた事が解る温度が残っていたが、コーヒーが入っていたコップは慌てて動いたからか、机の上で転がって、中身が床にポタポタと垂れている最中だ。


 イギリスからの情報でも空間転移が出来ると聞いていたけれど、さすがに中身の無い会話に違和感を覚えたのだろう。逃げ足は速かった。


「やっぱりちょっと古めの一般住宅は天井が低いねー」


 吉祥院はやや前屈みになった状態で部屋の中を見る。


 ホテルの一室とかだったらもうちょっと余裕がありそうだけれど、最近の新築はともかく、すこし古めのマンションの天井高は、身長220センチの吉祥院では照明器具に頭がぶつかってしまいそうで真っ直ぐ立つことが出来ない。


「ワタシらはこれ以上触らない方がいいだろうね。さっさと警察を呼んで、専門家にこの部屋がなんなのか調べて貰おうじゃないか」

「そうだな。しかしぱっと見、別の誰かの持ち物のようだ」


 二人は現場を荒らさないように短い転移を行い、部屋のドアの前に移動した。


 マンションの廊下からは、もう寝静まろうかという東戸塚の駅前の夜の景色が見える。横浜方面行きは終了し、久里浜方面行きもそろそろ終電が来るという時間で人影もまばらだ。


 マンションから逃げるための緊急の転移だから、あまり遠くには行けていないだろうけれど、今から行方を追うことは無理だろう。


「そっちはどうだ?」


 霞沙羅から連絡が入った。


「さすが向こうも警戒心が強かったね。タッチの差で逃げられたよ。長距離じゃないだろうけど、ここは田んぼが広がってる田舎じゃないから、徒歩で離れたとしても道の選択肢が多いしね」

「隠れ家は解ったんだろ?」

「それはね。駅前の、潜伏先にしては随分用意の良い部屋だったね。留守の家を使ったという考えもあるけど、用意されていたと言った方がいいだろうね。家具や家電は揃っているけれど余計なインテリアや書籍なんてのは無かったから、魔術師個人の別荘とかじゃないよ」

「俺の方で警察は呼んでおいた。すぐに来るだろう。東戸塚の駅前にあるマンションだ」

「そうか。まあここからはまた警察に委ねるか」

「霞沙羅もわざわざ来てくれて助かったよ。ワタシら2人じゃ手数が足りなくてねえ」


 実際、この時間稼ぎも有名人の霞沙羅だからアイザックも人形に留まって話に乗ってくれたんだろう。


 本来警戒すべきは吉祥院だったのだが、世界的にも霞沙羅の存在感は大きかった。


 遠くからパトカーのサイレンの音が流れてくる。すぐにこのマンションにやって来るはずだ。


「しかしホントにあの2人はあくまで道具屋としてしか付き合わないんだな」


 やっぱり今回もカナタは姿を現さなかった。


「まずは今日捕まえた彼らに何をやろうとしたのか、聞かせて貰わないとね」

「一時的とはいえ調布観測所の人間とすり替わっていたのが気になるな。そんな道具もあるのか?」

「これで二回目だからな。とはいえどうせまた旧二十三区関係だろうさ。上の連中にも言っておけよ。しばらくはあの中は警戒が必要だな」


 会見の時に捕まえた女からは組織の名前や拠点の一部が解ったけれど、また別のグループの人間も逮捕し、マンションの持ち主を調べることで、もう少し詳しく組織の内容がわかるだろう。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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