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吉祥院の企み -3-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「これがダンジョンなのか」


 ダンジョンはマンガとかゲームとか映画の中くらいにしか無い架空の産物だけれど、過去にあった都市のような遺跡はあるのである程度イメージはつくけれど、これは最近出来たという新築なので入り口も綺麗だ。


 夜なので、持って来た小型ライトの明かりで照らしてみると中々いい雰囲気で、3人とも魔術を学んだ人間としてちょっと興味が沸いてしまった。


 アイザックだって魔術師の端くれ。専門外であっても、見たことも無い魔術の産物となると気になってしまう。先程の偽研究員から聞いたけれど、建材を持ち込んだわけではなく、ここにあった土だけを材料に建造用の魔術のみで形作られているとか。実物を見るとすごいモノだと感心してしまう。


 吉祥院家は自分のような闇に生きるている人間にとっても有名だ。もし自分が大学や研究所等で純粋に魔術を研究するような人間だったなら、すぐに見せて欲しい、と遠く離れたイギリスにいたとしても連絡を取ったことだろう。一体どういう経緯でこんな魔術を作ったのだろうか。


 それはさておき


「この順でカードを入れていくんだな」

「そのようだ」


 カードの挿入は傭兵団の一人に任せた。人形は小さいので壁のスロットに手が届かない。


「おお」


 一枚目のカードを使うと、石作りの重そうな扉がもったいぶったようにゴゴゴとスライドして、深淵に包まれた地下へと続く通路が見えた。


「それでこれ、と」


 中に入ってすぐにあるスロットにまたカードを使う。すると地下に延びる階段に、電灯も無いのに明かりが灯った。階段は結構長いようで、明かりが点いたといってもやや暗めなので、奥までは見えない。


 しかしこれぞ宝物庫、と言いたい。犯罪行為を行っているというのにワクワクしてしまう。


「では行くか」


 傭兵団の2人とアイザックの人形はダンジョンの中に入っていき、開く時はゴゴゴと重そうな音を立てた扉はなぜか静かに閉まった。


   * * *


「そんな黒子みたいな服、どこから持って来た?」


 3人の男が乗り込んだ車と近くにいた車の2台が走り去るのを吉祥院と榊が見ていた。


「随分前に歌舞伎を見て、面白そうだと作っておいたこの服が役に立ったようでありんすな」


 榊は迷彩服、吉祥院は黒子の服を着て、窃盗行為の一部始終を物陰から見ていた。


 アイザックが周辺に配置した人形による監視の目があるようだけれど、吉祥院の妨害魔術でそれも無効化されている。


 魔術の目で視ているので、光学迷彩ならぬ、幻術迷彩で人形の視界には2人の姿は映らない。


「ダンジョンの話をした時に一人だけ魔術じゃなくて、入り方にだけ興味を抱いた男がいたでやんすが、予想通りでありんした」


 あの研究員は大学卒業後にそのままゼミで師事した魔術師についてきた人間だった。


 魔術だけでなく宗教学にも明るいけれど、時々言動が怪しいところがあって、この数年間泳がしていたのだが、とうとう尻尾を出した。


 これまで他の金星の虜やバングルが動いた時にも反応が無かったから気のせいかなと疑問符が湧いたのだけれど、職員としては結構真面目だっただけにこの結果はとても残念だ。


「目の付け所が怪しいのがいるのでダンジョンの入り方は嘘を教えたでござる」


 カードの順番を変えて教えたのだが、入り口の扉はどのカードでも動くようにしてあった。2個目のギミックは明かりだけは点くけれど、その先には進めないようにしてある。


 ルビィに聞いたのだけど、学院の宝物庫にも同種の罠が仕掛けてあるというので、急遽改良をしたのだ。


 入っていった2人と人形は無限に続く階段に閉じ込められているところだ。気が付いて引き返してもその空間がループするので、入り口にたどり着く事は無い。


 再び外から扉を開ければ罠は解除されるが、中からは出来ない。


 そして逃げた方だが、相手が人形だと解っていたので、宝物庫に小さな虫を仕掛けておいた。


 アイザックの人形に取り付いて、その魔力をほんの少し拝借して位置情報を発信し続ける。


 ついでに他の侵入者の服や持ちだした宝物にも取り付いている。逃げても無駄だし、どこに逃げ込むのかも追跡させて貰う。


「我が家をなんだと思っているでありんすか。舐められたものじゃん」


 千年近くも魔術の研究をひたすらに続けている家だ。人形魔術などこの国にだってある。そしてその対策法も持っている。


「では警察を呼ぶでありんす」

「そうなると俺の出番はなさそうだな」


 ちなみに、ダンジョンに適当に運び込んだ宝物が全部外れだったら、この場で一網打尽にするつもりだった。


「捕まえる時が一番油断出来ない、と何かの刑事ドラマで言っていたでやんす。中にいるのは傭兵団なので、榊の出番はまだあるじゃん」


 以前に霞沙羅と伽里奈(アリシア)にあっさりと捕まったとはいえ、そこは名のある傭兵団。


 罠にかかったと悟って、ドアが開く時を待っている可能性が高い。その場合は、恐らく決死の覚悟で出てくるだろう。


 それにアイザックの人形がついている。そうなると何か魔法を仕掛けてくる事は警戒したい。


「まずは外の人形だっぺ」


 そろそろ罠にかかったとバレるだろう。


 吉祥院は魔力探知と魔術解析を行い、アイザックの人形の位置を割り出すと、警戒用に配置された人形に落雷をくらわせた。アイザックはこれで吉祥院の存在に気が付くだろうけれど、もう遅い。


「下手をこくと生き埋めだわさ」


 ダンジョンの壁は圧縮した土からなる岩だし、その上に十メートル程度の土被りがあるから、魔法か何かで下手に壊そうものなら、その全てがその身に被さってくることになる。


 所詮は人形。転移のような大きな魔法は使えないけれど、それでも自爆くらいは出来る。


 とはいえ地中でそんな事をやろう物なら自殺行為だ。


 それは傭兵団も同じで、爆発物を持ち込んでいたとしても仕掛けることはしないだろう。


 ここまで来れば、と吉祥院は警察を呼んだ。


 捕らえたのはキャメル傭兵団の片割れだと伝えたら、電話の向こうのテンションが変わった。


 それと逃走中のもう片割れのことも話をして、そちら用の人員も手配した。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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