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吉祥院の企み -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 今回の宝物庫襲撃は夜が選ばれた。


 小樽大の時は目標だった「鐘」が、夜間は宝物庫のセキュリティーが強固なエリアに入れられてしまうから、比較的侵入がし易い研究エリアに出ている時に襲撃をかけるしかなかった。


 今回の目的物も同じように大学の宝物庫に入れられているけれど、施設に詳しい内通者はいるし、管理上重要と言えるほどに貴重な魔工具ではないので、セキュリティーレベルは低めのところに収納されている。


 実行メンバーは大学研究員として入り込んでいた一名、アイザックの人形が数体、プロのキャメル傭兵団の4人だ。今回も実行は目立たないように少人数に絞られている。


 それとは別に、大学の外には逃走用の車数台に乗り込んだドライバーが待機している。数台用意してあるのは、逃走が始まった時に囮として、誰も乗せていない車を別方向に走らせるためだ。


 アイザックの使う人形はいわゆる女性型ドールで、全て自作した物。立ち上がった大きさは四十センチくらい。


 ゴシックな感じのドレスまで着せられて、西洋人形然とした顔は見慣れない人にはミステリアスというか、ちょっと気色悪い感じだ。


「この第二宝物庫が面倒だな」


 傭兵団のリーダーが言う。


吉祥院(きっしょういん)千年世(ちとせ)が主導で魔術で作られた地下ダンジョンだ。あまり広くはないが、目的の魔工具が一つそこに持って行かれてしまってな」


 昨日になってどういう偶然か、吉祥院が宝物庫の魔工具をいくつかダンジョンに移動させてしまって、その中に盗る予定だった魔工具が混ざっていた。


 一応そうなることも予想はしていたので、大学の研究員としてダンジョンの話はしっかりと記憶していて良かった。


 とはいえ、研究員の身では一度しか入れて貰ってないので不安はある。とにかく入るのに使うカードの順番を間違えるワケにはいかない。


「施設自体は実験中で、罠やギミックが仕掛けられてはいるが、それを解除する複数枚のカードについては保管場所を確認してある」


 今回は珍しい魔工具が入ったわけでは無いので、大学も通常の警備状態であって、強引に奪う必要はない。計画通り素早く奪い、逃走するだけだ。


 保管場所が二箇所に分かれているのがやや面倒だけれど、経験上そんな事例が無いわけではない。傭兵団としては問題と捉えてはいない。


「では二手に分かれよう」


 偽研究員と人形と傭兵団から2名、人形と傭兵団2名の二組に分かれる。


 アイザックの人形をそれぞれの組に置くことで双方の連絡と、魔術の解除や戦闘になった場合の補助を行って貰う。


 術者本人は例のマンションにいて現場にはいないけれど、アイザックは他の人形を大学内に配置していて、警戒網を敷いているから、不測の事態があった時の情報や指示も二組に教える状態になっている。


 教員達はもう帰り、吉祥院は今日は大学に来ていないし、今もその姿を確認していない。


 いるのは警備員だけ。


「人形遣いか。噂通り恐ろしい奴だ」


 恐ろしいというか慎重という言葉の方がいいかもしれない。


 アイザック本人は遠い所にいるし、それでもって人形を幾つも操るというのはかなりの手練れだと解るが、味方となるとかなり便利だ。


 しかし小樽では不覚を取った。あの転移機能を持った差し歯に気が付いたとは、どれだけ疑り深いのがいたのだろうか。そしてそれは一体何者だったのだろうか。


「この人形の後をついてこい」


 アイザックの人形が歩いて安全を確認したルートを案内してくれる。傭兵団の4人も魔術が使えるが、専門家はさすが頼りになる。


 それもあって誰にも会うことなく、一旦安全なところに誘導され、偽研究員が建物に入り、地下ダンジョンのカードを持って来て、作っておいた使用順のメモを渡した。


「では頼むぞ」


 それから二手に分かれた。


 目的の物を手に入れたら、片方を待たずに素早く逃げる。勿論連絡は入れる。ただ、逃げる方向はドライバーによって別だ。


 まずは宝物庫組。さすが研究員として長く潜り込んでいただけあって、宝物庫の扱いも手際が良い。ここでもたつく事は無かった。


「卒業生だしな」

「そうなのか」


 年の頃は30と少しいったところ。


 金星の虜には色々と表の顔あるが、ずっと何食わぬ顔で研究員を続けていたというから、この集団は大夫慎重に事を勧めてきたようだ。


 そして組織の上が今がその時だと理解して、行動を開始したのだろう。


「警備の巡回もある。素早くな」


 ここ何日もこの時間帯の大学構内を見ていたアイザックからの情報で、警備員の隙間を狙って宝物庫に侵入する。


 宝物庫内の機械と魔術のセキュリティーをかいくぐり、割と手前にあった目的の部屋に入り、素早く目的の魔工具を二つ手に取ると、さっさと脱出した。


 ここまでは合格だ。


「アイザック、常に一人だと聞いたが、やるものだな」

「…なんか虫がいるな」


 宝物庫を出たところで何匹かの小さな羽虫がいて、それが周辺をブンブン飛び回ってきたのを邪魔くさそうに振り払って、3人と人形は宝物庫のある建物を出て、車のところに向かう。


 目的は達成したともう一組に連絡を入れて、乗り込んだ車と囮の車一台がすぐに発進した。


読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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