白昼の札幌にて -5-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
伽里奈の手助けで蟹型幻想獣が全滅している頃、霞沙羅の方はというと、部下達を引き連れて広い中島公園を進撃していき、さほどの時間もかからずにこちらの幻想獣も全滅した。
公園の方に集まっていた幻想獣は幼態が殆どだったけれど、その替わりに数は多かった。その中には成長態も混ざっていたけれど、それらは全て霞沙羅によって一刀両断された。
「よし、後は道警に任せて私らは駐屯地に帰るぜ」
「はっ!」
やっぱ大佐は強いなー、とこんな人の元で働ける隊員達も誇らしげ。
多くの幻想獣がはびこる中を英雄と一緒に駆け抜ける。こんな素晴らしい経験は他にない。北海道に着任したけれど、やっぱり良かった。
所属組織の違う警察官達も英雄と呼ばれる霞沙羅の強さを目の当たりにして、一列に並んで敬礼して、帰っていく霞沙羅達を見送った。
ただ、その様子を公園横にあるタワーマンション屋上から見ている人間がいることには気が付かなかった。
「やはり声をかけるなら彼女でしょうね。前大戦での日本の誇る英雄の一人。確か自分達の魔工具や魔装具も自作していましたね」
「吉祥院千年世、榊瑞帆の3人組のリーダーね」
見ているのはカナタとアオイとソウヤの3人。
そこまで強いの幻想獣がいたわけではないけれど、成長態を紙のように切り刻む腕前と、それを可能にするあの長刀を作った腕前。タイプとしてはカナタと同じだから、説明はし易いだろう。性格が合うかどうかは解らないけれど、実力としては申し分無い。
「以前にソウヤが軍に忍び込んでいる時に、新城霞沙羅から提出された、喝采の錫杖に通じるヤマノワタイの魔術らしき情報を見たようですし、最近の軍の技術にはアシルステラのものが混ざっているようですわね。複数の魔術にも通じていると考えていいでしょう」
「ウチのはちょっと前からあるでしょ」
「そうでしたわね。喝采の錫杖を使ったアシルステラの事件に触れたという事は、間違いなく館の関係者と見ていいでしょう。その位の知識がなければ肝心の話しをすることは出来ませんからね」
喝采の錫杖…、王者の錫杖の情報を持っているという事はここでは無い、他の土地に出入りをしている。
それにこれはカナタの勝手な考えかもしれないけれど、ひょっとするとしばらく姿を見なかった純凪夫婦とも絡みがある可能性がある。
霞沙羅が住んでいる、と見てもいい館は元々純凪夫妻がいたのだろう。そこでヤマノワタイのことを教わった、そういう流れのハズだ。
「もう一人の、あの子はどうするの?」
さっき空中を飛んだり、河原の方でサポート役をしていた伽里奈の事だ。勿論こっちの方も一部始終を見ている。
「アレは確定ですね、ここの地元の人間ではないですよ。新城霞沙羅の側にいるようですので、巻き込みたいところですわね」
あの強そうではない容姿でありながら、剣の腕ではアオイとまともにやり合えるし、魔術の腕もかなりの物。その上、すすきのの一件で星雫の剣も持っているようことは解っているので、一人でも多くの戦力を揃えたい。ただネックになっているのは、カナタ達はこれまで散々悪事に荷担したという事実だ。
カナタから数えて6代前が喝采の錫杖を渡して建国され、魔女によってどさくさ紛れに潰された帝国の、その残党が企てた再興計画もあの少年とおぼしき人物に潰されたと聞いているので、何と言われるか解らない。
だがそんな事は言っていられない。
「接触するには機会を待つしかありませんね。まあそのチャンスはあの輩達が作ってくれることでしょう。依頼の道具も渡して後は知ったことではありませんから、事件に乗じましょう。ソウヤ、貴方がすり替わっていた女性は元の場所に戻しましたわね?」
「ああ、戻しておいたぞ」
「そうですの。では今後の準備を整えつつ次の事件を待つ事にしましょう」
見るモノを見て、やることを決めた3人は、横浜に帰っていった。
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