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地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
大賢者タウ達「天望の座」メンバーには首をかしげられているけれど、アリシアは地球で使われている練習用魔法をアシルステラ向けに移植して、書類に纏めたレポートを持って学院にやってきた。
「実際、魔法としては役に立たなくても良いんです。ただ、剣士における毎日の素振り的な感じで、将来の魔術師としての基礎を作るような、基本属性と使う上での準備運動としての使い方でいいと思うんです」
その為に火水風土の基本四系統を揃えてきた。
魔術を学び続けると、多くの人間が将来的には得手不得手というモノが見えてきてしまうけれど、この魔法はそういうレベルに達していないから、全員が四系統を平等に使用出来る。
結局、ここ学院では多くの新入生が、先日の小樽校で見たような、授業で一発撃ったらハイ終了、という事態がしばらく続くから、魔法に体を慣らすという機会が少ないのでは無いかと思っていた。
「しかしこれではな」
タウが試しに室内で風の魔法を撃ってみると、壁には届いたけれどポフっと消えるようなレベル。
「子供達はこんなモノにも苦労するモノなのか?」
と同席していた中でも一番若いルビィに話しをふってみるが
「入学時には中級魔法に足を踏み入れていた私に言われましてモ」
そもそも物心着いた頃には、何の問題も無く当たり前のように魔法が使えていたわけで、ルビィにもその辺の感覚は解らない。
他にもこの会議室に集まっているのは、学生時代に大した苦労も無く魔法が使用出来た人間ばかりなので、ゼロから魔導士にまで駆け上がってきたアリシアの言っていることがいまいち解らない。
いや、実際アリシアだって入門当初以外はそこまで苦労してないからE組生徒のような地道な下積みはしていない。
けれど中瀬や早藤の苦労話を聞いているから、一般的な生徒に対して親身になっているだけ。
ただ、実態として、この学院でも新入生はまともに魔法が使えるまでは苦労しているわけで、下積みとして、日々魔法に触れる機会を増やしたいだけだ。
「まあ向こうの平凡な学生に混ざっている有能なお前が、こんなモノまで作ってくるくらいだ。あのカサラ殿もお前の平凡な学生向けの施策を後押ししていると言うなら、教員達を集めて意見を聞いてみるか」
「お願いします」
これまでとは違って随分としょぼい魔法を持って来たことはともかくとして、アリシアが学院の教育に口を挟んでくれていることは、タウだけでなく他の賢者達も嬉しかったりする。こっちの世界に帰ってきた頃は、なんか学院に関わるのが嫌々な雰囲気があったけれど、教育方針に目を向けてくれるくらいには興味を見せてくれている。
それに向こうの学校の実情を知っているというし、霞沙羅や吉祥院のような人の上に立つ、魔術師の上澄みとの付き合いもあるから、間違いは言ってないのだろう。
「先日やっていた、ゴーレムを使った授業は採用することにした。既にモートレルの騎士団相手にやっているようだし、それを通していくつかの仕様があるようだな。それを纏め、持ってくるがいい。すぐに教員達とも調整しよう」
「はーい」
「向こうの世界ではこれ以外にも何かしているのか?」
「今は練習場所を作る結界ですねー。放課後にも練習したいじゃないですか。ある程度以上の貴族の子は自宅で練習出来たりしますけど、特に平民だとそういう場所が無いですからね。ボクはルーちゃんに助けて貰いましたけど。まあ向こうの世界には貴族はいませんけど、大半を占める一般的家庭に生まれた生徒は同じ問題を抱えてます。校内でも場所が限定されてるので、それを考慮して設備を増やそうとして、教師や教授に協力をして貰っています」
「ほ、ほう」
向こうでは学校の設備運営にも関わっているのか、と驚いた。
結界自体は、学院の敷地内での勉強では使っているから別に新しい話ではない。例の触媒はこっちの世界では広く使われている。でも良いものがあれば採用することはやぶさかでは無い。
「モートレルの分校は狭いですからね。その発想を生かした設備を建造…」
「それはいかん!」
「えー、こっちは王都にあるから敷地も広いじゃないですかー。町の外にも野外演習所があるし」
「まずはこっちで見よう。多くの意見が出る本校なら改良点も見つかるかもしれん」
「えー、そうですか?」
お金の問題かな? 分校の件はヒルダからお金を貰うからいいのに、というのがアリシアの考え。事前に資材にかかる費用を計算したけれど、金額的にも別に大きくない。
ところがタウ的には分校に本校よりも良い設備を作られるのが困る。どうでもいい設備ならそのまま作ってよし。良い設備ならまず本校からという考えがあって止めたのだ。
「次にその企画を持ってくるのだ」
「じゃあそういう事で」
アリシアの番は終わって、次はルビィに移った。
ルビィの方はここ何日か吉祥院と設備の話をしていたので、宝物庫に代表されるセキュリティーについての提案だった。
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