金星の影響 -9-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
午後の2時頃に札幌市内で幻想獣が出たということで、対処中の今は小樽~札幌間の鉄道及びバスが様子見で一時的に運休になっているようだ。
そのせいで今日の授業が終わった附属高校では、すぐには帰宅が出来ない生徒が待機している状態になってしまった。
けれど金星接近期の風物詩みたいなもの。帰れない生徒は鉄道が動き出すまで図書館や、席だけ開放された学食で時間を潰している。
交通機関の再開が遅くなれば宿舎が開放される事になるのだろうけれど、状況的に多分そんな事は無さそうだ。
「二人とも帰れないよねー」
一ノ瀬と藤井の最寄り駅は手稲なので、しばらく校内で再開を待つしかない。
「寺院から呼び出しはかからないの? 警察案件だと思うけど」
「基本は寺院の職員でやるのよ」
「出るか出ないかは事件の規模次第ね」
以前の、すすきのの時には出てきていたから、学生ながら出番は多いのかなと思ったけれど、そうでもないようだ。
言われてみれば、確かにこういうのは寺院に常駐している正規の職員さんがメインでやるのが当然だろう。
「しばらく様子見して、小樽の駅前近くにても移動して、どこかのお店に入って待ってるわ」
「他の皆も同じ事考えそうだからなんか混んでそうな気がするけど。遅くなりそうなら転移で送ってもいいよ?」
「伽里奈君、そんなスナック感覚で空間転移の話をされても」
と言っても、何回か寺院に来て貰っているけれど、ここの所は毎回空間転移だ。
「シャーロットを家に送ってからになるけど」
アイザックが入国した事もあって、シャーロットの事はエリアスが見張ってくれているけれど、そんな女神様の力は内緒なので、帰国までのエスコートは伽里奈の仕事だ。学校からやどりぎ館までは大した距離があるわけでは無いけれど、念のため。
「でも伽里奈アーシアが管理してるっている家は気になるわ」
「そうね、いつも来て貰ってるから、見たことが無いわね」
あの館には、無関係な人間にはあんまり興味が沸かない、という神の奇跡が働いているから、誰も行こうとは思わないという現象がある。だから館に入れば、シャーロットは安全なのだ。
でも「住民に誘われてついていく」という話が決まれば、その力も弱まる。なので、二人とも一回くらい行ってもいいかも、という気持ちが芽生えてきた。
「伽里奈、ロールケーキが余っていなかった?」
話をしている最中にどこからかエリアスが現れた。まあ普通科も同じく終わりの時間だ。
「あれ、エリアスって放課後は直接事務所に行くんじゃ無かった?」
「電車が止まっているから、社長からは家で練習してなさいって言われたわ」
「まあ、そうなるよね」
エリアスに交通事情は関係ないけれど、行ったら行ったで「どうやって来たの?」となるから無理に行かない方がいいだろうと、吾妻社長の言葉に従って、家で映像を使ってイベントの練習をする事にした。
「エリアスさん、今ロールケーキって言った?」
「うん、昨日作ったんだけど、あげる人の都合が悪くなっちゃって」
ヒルダのことである。
相手の予定を確認しないで作ったのもあるけれど、今日はラスタルにいるハルキスに会いに行っている。王都の騎士団からのリクエストで、英雄同士の戦いを見せてくれと言われたので、見せてやるそうだ。
そしてそのままルビィの家に泊まるので、今日はモートレルに帰ってこない。
「余り物みたいになっちゃってるけど、その一本持って帰る?」
「か、伽里奈アーシアが作ったロールケーキなんて食べるに決まってるじゃない!」
「えー、貰っていいの?」
「どうぞどうぞ。館の人の分は別に作ってあるから」
「私のデザート!」
という事で、やどりぎ館に2人を連れて行き、別に今日は用が無いからとちょっとお茶をしていたら、幻想獣の駆除も無事に終わって、ようやく鉄道が再開したそうだけれど、ネット情報ではそれを待っていた観光客を含めた乗客達で車内はパンパンだという情報が溢れている。
それに列車の運行もしばらくは正常に戻る事も無いだろうから、しばらく駅には行かない方がいいと思われる。
「持つべきモノは友達ね」
高校の同級生に、正規の魔術師でもそう多くが使えない空間転移が出来る人間がいるという状況がそもそもおかしいけれど、ともかく良かった。
その後は、館でお茶をするという放課後を楽しんだ二人にロールケーキを持たせて、ついでにまたぬいぐるみをあげて、手稲へと送っていった。
夜には二人でロールケーキを食べている画像が送られてきた。
満足して貰えたようでで何よりである。
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