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金星の影響 -7-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「まあ実際のところ、結構な数の魔術師は自分のやった事を誇りたいわけで。長い時間をかけて研究してまとめ上げて、必要なモノを集めて、計画して、実行したとして、誰にも知られずに終わるのって嫌じゃないですか?」

「それは…、解らないでもないね」


 新しい魔術、新しい使い方、謎だった過去の遺産の解明、封印された何者かの復活等々、研究するからこそその成果を誰かに知ってもらいたい。


 ただの知的好奇心だけなんて事は無く、人里離れた山奥に塔をこさえて研究をする偏屈魔術師も、わざわざ文献に残すだけでは意味が無い。


 それらしいダンジョンまで作って、その奥に魔術書を置いておくような魔術師も、結局いつか、自分の研究を誰かに見て貰いたいからやるのだ。


 この前のエルナークだって、平均レベルの魔術師なりに自分の研究を見て欲しいという衝動はあったのだろう。


 こういうのは吉祥院が一番よく解る話だ。


「【戦意高揚(せんいこうよう)】っていう普通は戦いに赴く兵隊とかの恐れを取り除く、大した事の無い後方支援魔法なんですど、それをちょっと意地悪な方に弄った魔法でして」

「こっちを下げて、相手を上げてドヤ顔状態にさせるまでが面倒なんだよな」


 モートレル占拠事件の時に使った【戦意高揚(せんいこうよう)(ひかり)】という精神を高揚させるという部分を切り取った魔法だ。それの地球移植版。


 人にもよるけれど、戦闘でちょっと苦戦するような状況を演じることで、気持ちよく口を開いてくれる剣士もいた。


 それは伽里奈(アリシア)達が冒険者として名を上げれば名を上げるほど引っかかる頻度は上がっていった。


 名のある冒険者を倒せる。それで自分の名を世に知らしめることが出来る。そう思う心に大きな隙が生まれる。


 霞沙羅はマスコミ関係者なら誰もが注目しているし、吉祥院と榊も顔が売れている。それに加えて軍の将官が3人もいる場所となれば言わずもがな。


 そんなわけで、自分の知っている全てを語り尽くしたカメラマンの女は、座っていた椅子から床に崩れ落ちて、自分がやってしまった行為にがっくりとうな垂れている。


「まあ実際、お前達のリーダーはかなり慎重だぜ。しかも組織を情報毎のユニットに分けるとはな。それはマジで褒めてやる」


 全体人数は掴めなかったけれど、数十人以上は間違いない実行役を抱える大きな組織である事は解った。


 その名は「安らぎの園」と言った。


 マリネイラによる理想郷をこの地上に作るのが目的の組織だ。


 上層部の素顔は殆どが知らないようで、そのリーダーの男は自分のことを「カワホリ」と呼ばせている。


 後ろ盾というか、資金源となる会社があるそうだが、それは教えて貰えていない。彼女はその会社に関わっていないからだ。


 この女性は最終的に何をするのかまでは教えて貰っていなかったけれど、彼女のユニットの別の人間が次の作戦に参加している事は知っていたので、早急に動くべきだろう。


 それは横浜大に保管されている魔工具を奪取する事。残念ながら彼女とはグループが違うので、どれかまでは教えて貰っていないが、魔工具はあくまで部品だという事は知っていた。


 ただ、これからやって来る警察へは、情報はまだ得られていないという体裁をとるように言い含めなければならない。あくまで彼女が中々口を割っていないという状況を作って、彼らに次の行動を誘発させるのだ。


 そうなると目立たない数の人間で「次」に対処をする必要は出てくる。


「確認は取れそうか?」


 組織について、将官の3人がそれぞれの管轄へ連絡を取っている。さすがに得たばかりの情報の確認がすぐに取れることはないだろうが、時間の問題だろう。


「横浜大の方はどうするんだ?」

「来るのが解ったから備えておくよ。それとコレが知らない誰かが紛れている可能性があるのも考えて、罠でも仕掛けておくとしようか」


 いつ頃実行するのかの情報は喋って貰った。そして組織の外から雇った4人の協力者の事も。


「お前一人で大丈夫か?」

(さかき)中佐は今の所、部隊を率いているわけではないから、千年世(ちとせ)様の援護に回るといい」


 魔術師としては世界有数の実力者な吉祥院だけれど、襲撃者との相性を考慮すると白兵戦の出来る人間をサポートに入れた方がいい。


 その中でも榊は吉祥院にとって誰よりも信頼出来る人間なので、軍としても護衛としてつけておいた方がいいと判断した。


 勿論それとは別にサポートはつける。


「新城大佐は何事も無かったように北海道に帰りたまえ。キミがいつまでもここにいると我々が情報を掴んで対策を練っている事を悟られる」

「おいっす。新城大佐は札幌に帰るぜ」

「いやー、作ったダンジョンが早速役に立ちそうでありんすな。すぐにお仲間を連れて行ってやるだっぺ」

「お前は臭い飯でも腹一杯食ってゆっくりそいつらを待ってればいいぜ」


 女性は悔しそうに霞沙羅を見上げたが、さすがにもう出来ることはなさそうだ。


 じきに警察がやって来て、その身柄を連行していった。

読んで頂きありがとうございます。

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