金星の影響 -1-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
今日はモートレルの騎士達向けに神聖魔法の講座をしに行ったついでに、久しぶりにヒルダと、また来ていたイリーナと話しをすることになった。
イリーナは本当にあの転移装置を頻繁に使ってるんだなと思う。
それで今日はラザニアと辛味チキンを作り、デザートとしてアイスクリームをアフォガードとして食べる提案をした。
「アイスってこんな食べ方があるのね」
まずはアイスクリームに、濃いめに煎れたコーヒーをかけた。
これの次はワインをかける予定。
やどりぎ館だと、フィーネがワインを飲む時にたまにやってたりする大人な感じの食べ方だ。
「イリーナにあげた冷凍箱はどうしてるの?」
「一応私の神殿で管理してるわよ。たまにその、教皇様がお客様のおもてなしで使うからって持っていくけど、返しては貰っているわ」
王都ラスタル周辺ではようやくエバンス家やファースタイン家といった上級貴族から納品が始まっているけれど、イリーナというアリシアに冒険者仲間というコネがある人物から最初に回ってきているので、貴族の邸宅で食べられるようになるのに先駆けてアイスクリームは礼拝にやってくる有力者や著名人向けに、接待として使われている。
冷凍箱が高価なだけで、材料は超高級品ではないから、大神殿では重宝されているとか。
「こういう食べ方だと、ちょっと時間をかけたくなるわね」
珍しくヒルダがアイスを味わって少しずつ食べている。溶けて柔らかくなった甘いアイスクリーム、濃くて苦みの強いコーヒーとの融合をじっくり味わって楽しめているようだ。
「アイスクリームは神殿で作ると子供達は喜ぶけど、やっぱりちょっと高価かしらね」
「アイスクリンていう、廉価版みたいなのもあるよ。今いる日本の、ちょっと昔にアイスクリームの代用品的に作られたみたいなんだけど、味はちょっと薄くてクリーミーじゃなくてシャリシャリした食感になるんだ」
今の日本ではスーパーのアイス売り場の隅っこに静かに並んでいる食べ物だけれど、主に四国や西日本ではアイスキャンディーと同じように、お祭りや観光地なんかの露店でも売られているような食べ物だったモノ。
それでも砂糖を使うのでフラム王国ではまだ高価だけれど、ほんの少し安価。
「アーちゃん、今度はそっちを作りましょう」
「なんでヒーちゃんのところで?」
「あっさりしてそうで、それはそれで美味しそうじゃない」
「ヒルダはあいかわらずね」
アリシアが持ってくる料理なのだから美味しいに違いない。その位アリシアを信用している。
「でも果汁を使ったアイスキャンディーの方が安いかな」
「あれも良かったわね」
「果物だったら気軽に作れそうね」
「それ用の型でも作ろうかな」
ワインのアフォガードを食べ終えたところで、アシルステラの話に入った。
「あれから前王様は大夫体調が良くなってきたのよ。歩く時にはまだ杖は持っているけれど、お城の中を見て回ったり、領内を見にいくことも増えたわ。湯ノ花の影響もそうだけど、足裏マッサージも効いているようね」
「あの湯ノ花はいいわね」
「ほんと、カサラさんの話しを聞いてなかったらこれから先もずっと捨て続けていたのね」
あの人は本当に上手いこと、神、を織り交ぜた話をしてくれたので担当者も真剣に聞いてくれた。
そして効果もあることが解ったので教団内では、オルガンの件という土台にあって、霞沙羅の評価はかなり高いモノになっている。
「オリエンス教からの貰い物なのが複雑だけど、お父様達も気に入っているわ」
「結局セネルムントではどういう運用にしてるの?」
「今はカサラさんが指導してくれた回の物がようやく出来上がって、寄付をしてくれた信者に配るように容器を作っているの」
「寄付って、商人とか貴族みたいな大口向けなんじゃないの?」
「まあその辺はさすがに」
湯ノ花はどのくらいのペースで採取が出来るのか解っていないので、目処が付くまでは貴重品としての扱いとなっている。
まあ実際、日本の方でもお土産品としてはまあまあの金額はする。
とはいえ構想としては、遠くからも来てくれるような巡礼者にも手が出るようなお気持ち程度の寄付金でどうにか出来ればと、教皇は思っているけれど、それはいつになるやら。
「アーちゃん、ギランドルでも温泉が見つかったとか、教団から届いた手紙に書いていたわよ」
「これまで何も無かったのに? 急に見つかったのね」
今はもうイリーナがギランドルに行くことはないけれど、少なくとも冒険中にはそんなモノは無かった。
「アリシアが何かしたの?」
「ボクじゃなくて、ギャバン神がセネルムントが温泉で成功してるのを見て、じゃあ自分のところもってギランドルの大神殿の裏まで温泉の水脈を引っ張って来たんだよ」
「何それ?」
「エリアスがそう言ってたし。それでカサラさんが温泉の使い方をアドバイスして、今は浴場を作ってるところなんだ。吹き出してる湯量はセネルムントほどは多くないから温泉街は作れないみたいだけど、ゆくゆくは同じように礼拝とか巡礼に来た人にも開放するそうだよ」
普通に聞くと荒唐無稽な話だけど、エリアスの名前を出されると、まあそうなんだなと納得する。
「それで鎮魂の儀に来た折には入っていって下さいって書いてあったのね」
「カサラさん、ギャバン教でも大活躍ね」
「ちょっと変わった温泉で、鉄分を含んでてお湯が赤茶色で温度も低かったから、最初は王子様達はがっかりしてたんだけど、その辺は霞沙羅さんが浴場の作り方から提案したから」
「ギャバン神もやるものね。そこは湯ノ花は採れないの?」
「多分茶色の湯の花が出るだろうって言ってたけど、まだ溜まってないから様子見だって」
「それは楽しみね」
イリーナには悪いけれど、ヒルダとしてはギャバン教からの湯の花であれば遠慮なく寄付してでも貰いたいところだ。
「ギャバン神もやるわね」
たまにやどりぎ館にお酒を飲みに来る知り合いだから、霞沙羅が温泉にある程度詳しいのを知っているのだ。それで鎮魂の儀の準備で霞沙羅がギランドルに来る事があるから、そのタイミングを狙ったらしい。
「あとね、地球の方だけど、ちょっと面倒な神様の影響力がしばらく強くなって、霞沙羅さん達が忙しくなるかもしれないから、こっちに来れなくなるかもね」
「それは残念ね」
「期間的には一ヶ月もないけどね。霞沙羅さん的にはライアに再戦したいみたいだから、それが終わればまた来るよ」
「ライアとやったのね。まあ、ライアの動きはちょっと特殊よね」
「完敗だったから」
「ライアはまずは何をしてくるか解らないとどうにもならないわね」
冒険者仲間だから、ヒルダもイリーナもあの動きは出来ないけれど対応は出来る。だから仲間内での勝敗についてはどっちに転ぶか解らない状況。
それがあるからこの2人も霞沙羅が負けたことは解る。結構柔軟な感覚の持ち主だけれど、アレは規格外。
冒険中も、真面目な騎士であればあるほど、初見では殆ど相手にならなかったな、と思い出す。
あんな動きをするライアであっても何度かやれば対応も出来るのだろうけれど、冒険中に二度も三度も会うような敵対者は殆どいなかったから、本当に猛威を振るった物だった。
「負けたのがよっぽど悔しかったみたいだから、今度ボクがあの動きで鍛錬に付き合うことになっちゃって」
なにせ腹いせにひっぱたかれたから。
「サカキさんも楽しいけど、カサラさんともまたやってみたいわね」
榊よりは腕は落ちるけれど、鍛冶としての知識があって色々な武器が使えるそうなので、今度は自分と同じバスタードソードで戦って貰えないかと思う。
それにもう少しゆっくり話しをする機会があれば、人の育成について意見を交わしてみたい。
「それとアリシア、教皇様が簡易の転移装置を幾つか作って欲しいって言ってたわよ。あれを作れるのは貴方だけだからね」
こう何度もモートレルとの往復をしているから、その安全性も充分に確認出来たわけで、もう何カ所か、転移設備の無いある程度大きな町と開通させたいというのが、教団の考えだ。
そう頻繁に、とまでは言わないけれど、信者である地元の商人や商売人達も、たまには聖都にいる位の高い神官の話を聞きたいと思っているだろう。
製造に関するお金は勿論教団が出してくれる。宝石代だってバカにならないから。
「あの技術は、他の教団には伝えていないわよね?」
「あれはやってないよ。そこまで仲のいい神官がいないしねー」
エリアスにも確認して他教団向けの神聖魔法も確立してあるけれど、さすがにあれを教えたら怒られるだろうな、とは思っている。
勢力の小さな場所はどこの教団も施設や人員が手薄になってしまうけれど、簡易転移装置の設置が増えれば、聖都からの人材派遣が出来てしまうので、アピール力は大きくなる。
そもそもフラム王国の王家が信者だから、他教団なんかに教えたら別方面からも怒られるだろう。
やるとしたら、オリエンス教に充分にいき渡ってからだ。そこまで来ると他の教団もオリエンス教がやっている事が影響力が大きかったと気が付くだろうし。
「あとはまた新しい料理を持ってきてね」
「教団の方もね」
「はーい」
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