新学期 -3-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
魔法学院を出て、また冒険者ギルドの依頼掲示板を見に行こうとしていると、城門から騎士達の一行が出てきた。
馬に乗ってその先頭を行くのはハルキス。
騎士団での仕事の当番が回ってきたようだ。
そして装備品的には隊長といった人間がハルキスの横にいて、その後ろには馬に乗ったルビィもいる。
「何があったの?」
人数的には20人。全員馬に乗っているから、身分というか、騎士団での位は高い人間が多いのだと思われる。
そんな一団がこれからどこかに行こうとしている。まだギルドにはたどり着いていないけれど、やけに物々しい面々に嫌な予感がする。
「おう、アリシアじゃねえか」
そんなアリシアの心配を余所に、ハルキスは気楽そのもので声をかけてきた。
「ど、どこに行くの?」
「アーちゃんが作った魔物探知機の性能テストなんダ。東にあるサンロニまで行く街道で目撃情報があった」
「実験には丁度いいって事でな」
「ああそうなの、それならよかった」
そんなものなら騎士団の通常業務だ。地球の方では金星の接近があるので、こっちでもまた何か起きているのかと思ってしまった。
「ヒルダの所じゃもう使ってるんだろ? 作れるならオレの所にも作って欲しいぜ。金は払うぞ」
「まあその位ならいいけど」
「あとアーちゃん、これ用の重力系魔法の手引き書があれば欲しいのだガ」
「ヒーちゃんにあげなかったっけ?」
モートレルの騎士団は魔術師が少ないから、分校の魔術師向けに作ったハズだ。
「写した物じゃなくてちゃんとしたのが欲しイ」
「まあいいけど。印刷するだけだし」
「じゃあ行ってくるぜ」
「あーい」
ハルキス達は意気揚々と街道へ向けて去って行った。魔物達もあんなのが迫ってきてるとか運が悪いことで。
「それなら何も無いかなー」
王都ともなると人も多いから、冒険者の人達と思われるグループの姿はいつものように見ることが出来る。
とはいえ、ハルキス達は魔工具の実験で動いているだけだし、これといって大きな事件は無さそうだと思いながら、やっぱり冒険者ギルドに入った。
掲示板にはそれなりに依頼が貼り出され、冒険者達はいいものはないかと物色しているいつもの風景。
「普通かな、これは」
盗賊、山賊、魔物退治、人捜し…、中にはやや小さめな地方領主から強めの魔物討伐依頼も混ざっている。
それと依頼ではなくて、情報提供を求める文書が掲示されている。
「人形殺人にご注意」
北方面からの街道沿いで魔工具であろう人形を使った殺人が何件か起きているとかで、その注意喚起と事件の手がかりを探している旨の張り紙があった。
「たまにある類いの犯罪かなー」
犯罪の背景が解らないから魔術師系暗殺者による殺しか、魔工具の暴走か、そんなところか。
これに関する商隊の護衛依頼も何件かあるので、最近になってそれなりに騒ぎ始めているのだろう。
ここラスタルはその事件が起きている街道沿いにあるから家族のことは気になるけれど、別にお金持ちでもないから狙われるような事はないだろう。
遠く離れたモートレルは関係なさそうだけれど、お嬢様のアンナマリーには一応言っておいた方がいいかもしれない。
* * *
まだまだ全然冬本番で、雪が積もっているいつもの道を、国立小樽魔術大学付属高校に向かう生徒達が歩いている。
「おはよう」
「久しぶり」
約三週間ぶりの朝の風景。普通科の生徒は小樽周辺自治体の生徒ばかりだけれど、魔法術科の生徒は出身地がバラバラなので、本当に久しぶりな顔ばかり。
スマホもあって、連絡を取り合うのは簡単だけれど、実際に久しぶりに会ってテンションが上がっている生徒もいる。
伽里奈達もE組の生徒に挨拶をしながら、教室に入った。
ガヤガヤと、お互いに久しぶりに帰った地元の話しに花を咲かせている教室に担当教師が入ってきたので、仕方なく全員席について、朝のホームルームが始まった。
「折角のところ邪魔しちゃったと思うけど、ホームルームを始めるわね」
「あーい…」
急にテンションが低めになった生徒達に苦笑いしつつ、新学期の簡単な挨拶をした後に、これからの三学期に何をやるのかの説明が始まった。
やっぱりここから初級魔法の勉強が始まるのが一番大きい。
教科書は明日からの一回目の授業時に配られるようで、今日は課題を集めてから、普通の生徒であれは久しぶりとなる練習魔法の魔法実習で、明日からの体を作っていく予定だ。
ようやく本格的な魔法の勉強に入るところにこれは仕方ないけれど、長い冬季休暇で感覚も鈍っているだろうから、明日からの新しいカリキュラムの為に、勘を取り戻して貰わないといけない。
自宅でも魔法の練習ができるような生徒はA組くらいにしかいないから、多くの生徒は本当に久しぶりだ。
「それと、皆さんも知ってのことだと思いますが、金星の接近期間となっています。小樽はまだ安全ですが、例年出現率の高い札幌に行く事がありましたら、警報アプリの活用をお願いします」
それからシャーロットの今後の予定も言及された。
正直、留学生なのでクラスの枠からは外れているけれど、それでもクラスメイト。もう来週からはしばらくいなくなってしまうので、一応の連絡が行われた。
最初から事情を聞かされてはいるけれど、まだ14才で大学に行くというような子がクラスにいるんだなという事を生徒達は、改めて認識することになった。
「それじゃあ課題を集めるわよ。左の列から順にこの箱に入れなさい」
生徒達は出されていた冬季休暇の課題レポートを提出して、その後は早速魔法実習に向かっていった。
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