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  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「バングルは開店休業状態らしいぜ」


 勤務から帰ってきた霞沙羅に札幌駅での事件の話しをすると、そんな答えが返ってきた。


「幹部の一人は私らの手で死に、お前が数人とっ捕まえて、実験場でも何人か捕まえただろ。そこから警察に主導権が渡ってからも幹部を含めて数名が捕まって、組織のデータも一部手に入れたから、そいつらも指名手配されているらしいぜ」

「金星の虜関連は、どれも組織が小さいからな。上を抑えられると簡単に瓦解してしまう。全員が実行部隊というわけではないから、戦力を失えばなおさらだ」


 その辺は警察に知り合いが多い(さかき)も詳しい。


「なんで札幌なんかにいたんですかね、組織も終わりかけなのに?」

「わからんが、おおかた私の動向でも見に来たんだろう。恐らく、どこか別組織に吸収されたかなんかで、とりあえず使われたんだろ」

「北海道にいるはずのお前が、最近はやたらと神奈川に顔を出しているからな」


 軍が第一に出ていくような事件はあまり起きていないのにも関わらず、バングルの幹部の一人を仕留めたのは霞沙羅と吉祥院だ。


 何か大きな事でもやろうと考えれば、厄災戦の英雄3人が揃うのを危惧するだろう。


 当時のリーダーである霞沙羅が北海道にいるのであればまだいいのだけれど、また神奈川に復帰ともなれば計画が大きく狂ってしまう。


「例の窃盗団4人も脱走して、妙な人形遣いの話もある。また何かを盗む気のある奴がいるのかもな。それともまた寺院庁絡みか?」


 幻想獣の封印をまた隠しているのかもしれないけれど、それは軍の機密データとして提供されている。

それは将官のごく一部のみが知っている情報なので、大佐・中佐でしかない霞沙羅や榊は知らないけれど、何かあれば作戦が発動され、情報を開示されることにはなっている。


 でもそれは今のところないので、軍とは関係の無い、単なる窃盗事件が起きる前触れなのかもしれない。


「今は警察が動いてるんだろ? じゃあそっちに任せるしかないだろう。今日捕まった奴にしてもな」

「警察も情報をくれるのは有り難いが、もう少し早くくれるとな。それはともかく、伽里奈君の方はどちらかというと金星接近の影響がこの館周辺に出たらどうするかだけを考えて貰えればいいと思うぞ」

「軍隊の訓練だの、よくわからん魔術だののサポートは欲しいがな。何度も言うがお前が率先して出ていく必要は無いぜ。ただ、管理人としては国内にいる間のシャーロットの身の安全は確保しろよ」

「解ってますよー」


 エリアスもいるから、その辺は大丈夫だと思う。


 ホントに、もう三学期が始まるというのに、色々な面倒事が生えてきたものだ。


   * * *


「宵の明星とは言いますが」


 店舗兼事務所として借りている建物の屋上から、カナタは日没後に西の空に沈んでいく金星を天体望遠鏡で見ている。


「ここに来て2回目ですけどね、今回はのんびり見いていられませんわね」


 金星が近づけばマリネイラの力が強まるワケだけれど、金星の接近を楽しみにしている人達もいる。純粋に、星を見るのが好きな人間が。


望遠鏡で見るとこれからだんだん大きくなって、欠けていき、太陽の前に来る頃には見えなくなり、そして最接近。それからは時間が変わり明けの明星となる。


「何か見えてるの?」


 中々部屋に帰ってこないので、アオイがやって来た。


「見えるわけはないですね、物理的に近づいているわけではないのですから」


 カナタは望遠鏡の向きを少し変えて、銀河の一つを見た。でも見えているのはずっと大昔の光。


 子供の頃から魔術と鍛冶ばかりをやっていたから、じっくり空を見上げるというようなことは無かったけれど、こうやって見るとなかなか感慨深い。


 今自分がここにいる銀河の光りは、あの銀河に届くのはずっと先の話。向こうからこうやって観測したらこうやって見えるのに、見えているのは大昔の光。とても遠いのだ。


「まったく、我が一族というのはとんでもない事を思いつくモノですわね。何代もの時間をかけて。ですがその最先端にいる私はその知識の集合体ですの」

「終わったらホントに捨てるわけ?」

「いらない物ですよ。使い物になりません。全てが平等であるから、対抗策さえ備えれば現行技術で対応出来てしまう。上位に位置するわけではないので、有利なのは最初だけ。あのバカを片づければ役立たずですからね」


カナタは望遠鏡を片付け始めた。


「これでようやく完成しましたので、対抗策は私の手にありますわ。ただまあ、この私がいるとはいえ3人だけでは不足していますわね。我が家に何かを感じている元英雄さんご夫婦は人数オーバーですしね」

「ここには星雫の剣持ちが2人いるから、タイミングかしらね」

「なぜ一つの星に2本の星雫(せいだ)の剣があるのかは解りませんが、星堕(せいだ)の剣の邪魔をするには、コンタクトを図るしかありませんね」


 一人はどうでしょうねえ、とカナタは思う。一度会ってやることをやってしまっているから、話しを聞いてくれるかどうか。


 まあそれは、事が起きた時に考えるか。


「とりあえずは、お手並み拝見でしょうか。どっちもどっちも」


その時に備えて魔術書でも編集するかと、カナタとアオイは屋上から降りて行った。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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