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女神様はお買い物をする -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 予定にはいない部外者の磐田(いわた)が事務所内にいたけれど、彼もお客として過去に何度か占っていることは覚えている。それに実は彼は新年を祝うイベントで霞沙羅が着ていた赤いドレスのデザインをしていたという話しを聞いて、フィーネは興味を示した。


 勿論、本来の依頼である吾妻社長の新居の候補については幾つか提案した上で、フィーネの方からも名のあるデザイナーと元ファッション誌の編集者に、自分にはどういう服が合うのかと聞いてみたりした。


「フィーネさんは黒が似合うのはわかるけれど、たまに生活の中で気分を変えるためにも、色違いの服も用意しておくのがいいわね」


 磐田は色々な色の布を持っていて、それをフィーネの肌に当てたりして、服の色を変えた時の効果を見せてくれた。


 それもあって、フィーネは磐田の悩みを一つ、お返しとして無料で占ってあげた。


「吾妻さんも無事に家族3人で生活出来るようになればいいわね」


 それは大丈夫であろう、とフィーネには見えている。見えているから今日は新居の相談に乗りに来たのだ。


 でもその結果は言わない。それを言ってしまうと受験勉強をしている娘の勉強意欲を削いでしまい、さらに魔術師としての未来が変わってしまいかねない。


 あがくがよい、人間よ。


 だからフィーネは良い結果を招く方向性しか言わない。


 そうしていると伽里奈(アリシア)が会議室から出てきた。


「勉強は終わりました」

「ありがとうね、伽里奈君」

「くん?」


 ここまで伽里奈(アリシア)を見ていなかった磐田がその容姿に驚いた。


「ああ、彼は男性なのよ。さっきエリアスと一緒に下宿を管理している子がいるって言ったでしょ。それが彼よ」

「ええっ、そうなの?」

「ここだけの話、狸小路の、イスゴって言うブランドショップの女子高生向け新ブランドイメージキャラが彼なのよ。HPにも載っているのよ」

「イスゴって、聞いたことあるわね。女子高生向けって、彼がそんな事してるの?」

「ウチのタレントじゃないし、一回だけよ。以前エリアスの撮影に着いてきて、それで社長さんが伽里奈君の姿を見てブランドイメージが沸いたって、急遽撮影したの。新城大佐の実家でも、女子用の袴のモデルをしてたりもするのよ」

「へー、こんな子がいるのね」


 HPは後で見ることにして、磐田は伽里奈(アリシア)の頭のてっぺんからつま先までまじまじと見た。


 男としては背が低めだけれど、女子としたら低いという事は無いから、男子っぽい女子として見ることが出来る。


「へー、さすが吾妻さんね、面白いものを見たわ。彼、ちょっと一枚いい?」

「え、ええ?」


 吾妻とは知り合いの業界人なんだろうけれど、業界人でも何でも無い伽里奈(アリシア)の写真を撮ってどうするのだろうか?


「私の昔からの友人なのよ、この前の新城大佐のドレスのデザインをやったりしてるの」

「昔なじみの業界人なんですねー。ならまあ、いいですけど」

「普通に立ってていいわよ」


 磐田は伽里奈(アリシア)の立ち姿を結局数枚撮った。


「へー、面白いわね」


 顔立ちもぱっと見の体格も立ち方も女子寄り。どの角度で見ても女子として破綻が無い。自分も女だと思っていたのだから、イスゴの社長が女子として見ていたのも納得出来る。


 非常に稀な人材ではあるけれど、こういうタイプもいいモノだなと、デザイナーとして新しいと扉がちょっと開いた。


 この事務所からそんなに離れていないし、このあとちょっとイスゴのお店にでも行ってみようかと磐田は思った。今回の旅行は中々面白い。あの魔天龍様にもプライベートで会えたし儲けものだ。


「それではのう」


 それぞれ用を済ませて、伽里奈(アリシア)とフィーネは次の目的地に移動した。


  * * *


 事務所を後にして、伽里奈とフィーネの2人はまた地下鉄を経由して、雪降る札幌の町を行く。


 目的のお店は人通りの多い大通公園周辺にあるので、伽里奈(アリシア)とフィーネが腕を組んで歩く姿に振り返る通行人もいたけれど、そんなことは気にせずに、エリアスが紹介してくれたお店に入り、買い物を始めた。


 美女が少女にしなだれかかるように腕を込んでいるけれど、会話からすると美女の方が格上という態度なので、どちらを立てればいいのかと店員達も戸惑いながらも接客に努めてくれた。


「ほれ、あれだけ言ったのであれば、お主の考えを見せてみよ」


 このお店ではさすがにドレス系は売っていない。背の高い、女子高生をしているにしては大人の姿をしたエリアスが利用するお店なので、大人向けの服ばかりが売られている。


 なのでフィーネの外見にも丁度よい年齢層の服が多い。


「ワンピースとか、ちょっと気軽な感じで」

「我であるぞ?」

「近いとはいえコンビニにドレスで行くのはどうですかね? 霞沙羅さんみたいなラフな服装も面白いと思いますけど、これなんか」


 伽里奈(アリシア)はタートルネックの白いワンピースを手に取った。


 模様も装飾もなくシンプルな外見で、裾は膝よりちょっと上くらいでミニ過ぎない程度。


「これが小僧の選択か。あの小娘の方が似合いそうではないのか?」

「エリアスはちょっと違う気がしますけど」


 エリアスは舘ではホットパンツかミニスカートなので、脚をハッキリと出していて、活動的な印象がある。


 フィーネはドレスなので下半身はいつも長いスカートであり、デザインにもよるけれど、たまにスリットがついている時に足が覗いている程度という落ち着いた大人な感じの色気がある。


 少し前にエリアスに編んであげたニットワンピは裾が短く、ミニ状態で、ホットパンツの延長上のようになっているけれど、フィーネにはそれは似合わない。


 ある程度までは露出を守りつつ、そこから先は脚が見えた方がたまにはいいような気がするのだ。


「し、仕方がないのう。あの小娘にしているように、着替えるのを手伝うがよい」

「最近はたまにですよー」


 やどりぎ館に来た当時は、エリアスは人間の生活が解らなかったから着替えを手伝っていただけ。最近は甘えてきた時だけだ。


 早速、伽里奈(アリシア)が選んだ服を試着するにしても、今着ているドレスが脱ぎにくいデザインなので、伽里奈(アリシア)が手伝って脱がせることになってしまった、けれど、まあ実際のところ、フィーネのマッサージをする際に、ネグリジェ姿などの軽装状態を見ているので、気にもならない。


 それにほぼ裸の霞沙羅を、朝起こしにいっては高頻度で見ているし。


 そんなわけで、試着室でフィーネのドレスを脱がし、ワンピースを着せる。ワンピースは背中側にファスナーがあるだけなので、脱ぐのも着るのも簡単そうだ。


「ふむ、悪くは無さそうじゃな」


 着替えたことでアクセサリーも外し、シンプルな服装なのでゴージャスさはなくなってしまったけれど、元々良いスタイルが飾りの無い服のラインとなって現れるので、大人の美女らしいお色香が強調された。


「とてもお似合いだと思いますよ」


 接客してくれたお店の店員も、試着室に入る前とがらりと印象が変わったフィーネに見とれるように言った。


 兎にも角にも独特の圧が無くなったのが大きい。


「こ…、ふむ、伽里奈よ、我にはこの色に合う履き物は無い。再度お主のセンスを見せるのじゃ」


 試着を手伝って貰ったこの状況で「小僧」はまずいかなと、フィーネは伽里奈(アリシア)を名前で呼んだ。


 今日履いてきたブーツも、さっき着てきたドレスと同じ黒で統一されている。


 美脚のシルエットを損なわない、ぴったりとしたデザインだ。


 伽里奈(アリシア)はやどりぎ館では洗濯もしているだけに、フィーネがどういう靴を持っているのかも知っている。


 そう考えるとフィーネはドレスで見えないにしても、自分の美脚なラインを損なわないようにするのが好みのようだが


「ならこれにしておきます?」


 伽里奈は白とやや茶色のブーツを持ってきた。膝下までのロング、それもややゆったりとした、足のラインを消してしまうようなデザインだ。


 横に転がっている、履いてきたブーツに比べてルーズさがある。ヒール部分もシャープなピンヒールではなく太めのモノ。


「上も下も、ちょっと余裕のある感じがいいと思うんですけど、休日って感じの」

「脚回りで印象も変わりますね。ドレスの時と比べて全体的に柔らかさが出ましたね。…あの、ひょっとして占い師の魔天龍さんですか?」

「い、いかにもじゃ。こやつが家用の楽な服を買うてはどうかと、前々からぬかすのでな」

「占い師としての妖艶な雰囲気も良いですが、こうも印象が変わるのですね。お店から離れた所での明るい色もお似合いだと思います。お肌の色とのコントラストが綺麗ですね」


 フィーネは伽里奈(アリシア)が選んできたブーツに足を通し、近くの姿見で自分の姿を確認した。


 霞沙羅の実家から白系の服は貰っているけれど、あれはタイトなデザインで、仕事中のデキる管理職な感じで休日的な印象がやや足りない。


 とはいえ伽里奈(アリシア)が選んできた服は自分には似合わない。女神としてこんな、ゆるくて真っ白な服は似合わないはずだ。


 だというのに伽里奈(アリシア)もいい仕事したみたいな顔で自分を見ている。


 似合わないハズだと思っているけれど、何か悪くない。


「こ、これで、家の者から…、似合わんと言われたら、お主は八つ裂きじゃぞ」


 顔を真っ赤にしてフィーネはまだ抵抗する。幸いな事に肌が褐色なのであまり顔色が変わったようには見えないのが救いだ。


「こ、このようなモノ。き、着て帰る事は可能か?」

「はい、ご用意しますよ。こちらのドレスとブーツはお持ち帰り出来ますよう準備致します」


 店員は満面の笑みを浮かべた。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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