女神様のフォロー -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「あとは温泉でもあればいいんですけどねー、女神様」
「調子に乗るでない」
兵隊達はややくたびれたテントを作って、外でも食事をしている。
それもあって、辺りにはカレー特有のスパイシーな匂いが漂っていて、料理を待つ行列からは新しい料理を期待する明るい声が聞こえる。
串カツも何種類か揚がっていて、単品で食べてもいいし、なんならカレーうどんに浮かべて具材の一つにしてもいい。
どうあれ、二度づけ禁止とはいわず何度でも好きなようにソースにつければいい。
食事は良くなっているけれど、やっぱり皆疲れている。怪我は治っても肉体の疲労はいかんともしがたい。
「…女神である我が掘れぬわけはない」
「日本の何とか大師みたいに、岩を割るとか地面でも小突けばいいんじゃないですか?」
何とか大師は称号みたいなもので、超有名な元祖を除いては、時代を変えて各地を旅したのが何人かいたという話だったりする。
どの何とか大師が見つけたのか定かではない温泉が全国にあるから、賢者フィーネ様はそれを真似てもいいんじゃないかなとは思う。
「その辺の昔話は霞沙羅さんが詳しそうなので、ネットで調べてどこかのを参考にしたらいいと思いますよ」
この砦は無くなるわけではなく、今後もずっとここが最前線であり続けるのだから、今のうちに作っておいてもいいと思う。
「やるのであればもう少し落ち着いてからじゃな」
今はそれどころでは無い。今後も続く防衛のために壊れた施設を修復する方が先だから、温泉を掘り当ててもお風呂一つまともに作れないだろう。
温泉はまた今度にして、これ以上いては邪魔そうなので、帰ることにした。
「あのカレーという食べ物はとても好評のようです。お師匠、アリシア君、また何かいい料理があればよろしくお願いしたい」
「おう、この小僧に任せておくがよい」
イザベラさんに挨拶をして、アリシア達は…、また邪龍神ネルフィナの背中にいた。相変わらず大きい。
「また少し付き合うがよい」
この女神様はどうしてもまだ2人でいたいようだ。仕方が無いので、その場に座ることにした。
「ところでフィーネさんの倒し方って何か手段があるんですか?」
「なぜそんな事を聞く?」
「こんな大きいじゃないですか。でもフィーネさんは結局最後には人間に負けないとダメですよね? でも人間ではどうにもならないような」
「小僧にシスティーがおるように、この星にも星雫の剣がおるのじゃ」
「星雫の剣で倒せるんですか?」
正直、システィーのマスターであるアリシアも、エリアスと出会ってみて解ったけれど、アーシェルが作った女神とはいえ、まともにやったら勝てるような存在ではない。
それなのにアーシェルに肩を並べる存在であるフィーネが、毎度毎度人の手で倒されるのは不思議だ。
「屑星のなれの果てでは、まあ、な。言ってしまえばやらせじゃよ。実際は我そのものが出るわけでは無く、もっと小さな分体にやらせるのじゃよ。まあ人間にとっては相当に大きいであろうが、暗黒の龍現れる時、星の海を渡りて来たる剣は復活せん、という言い伝えを広めておる。なので、我が暴れる際には、その星雫の剣を人は探すことになる。適当な頃に、そやつが何者かの手に収まり、それで我が分体を倒すという、そういう流れじゃ」
「星雫の剣は誰かの物じゃないんですね?」
システィーもラシーン大陸に来てから二、三回活躍をしたそうだけれど、寝ていたのをアリシアが起こして、マスターとなっている。
「あやつは誰の物にもならぬ。終わればその人間の手から去って行くだけじゃ。その辺は上手くやって貰っておる」
「それでやらせっていうのが」
「小僧のところもそうであろう? ただ違うのは我は必ず退くというところじゃな。あの異郷のひねくれた神々とは一緒にせんでくれ」
人が神を怒らせるからというのもあるけれど、毎度毎度勝手なルールを作って、失敗すれば、どんなに人が一つになって力を合わせようとも、最後の最後で文明をリセットしてしまうような意地悪はしていない。
フィーネがやるのは自惚れる人々へのお仕置きと、神という存在への畏怖を植え付けること。
「ここで毎度見ておるあやつらの戦いは、アリシアが気に病む必要は無い。前にも言うたが、あれは人の愚かな行いの結果じゃ」
そっと、フィーネがアリシアに近寄ってきて、肩に寄りかかってきた。エリアスと違って、フィーネの身長は若干大きいだけなので、それなりに具合が良い。
「それはどもかくアリシア、お主が毎度毎度別の服を買えというのでな、頑固な我も折れてやろう。ただし、買い物には付き合うて貰うがな」
「ええー」
「エリアスへ相談し、良さそうな店を紹介された。三日後にあの社長に用がある故、その時付き合うがよい」
「いや、まあ」
黒のドレス以外もいいのに、と言ったのはアリシアだ。別に奢ってくれと言われているわけでは無いのだから、まあ付き合うしかない。
「テレビ用の服じゃないんですよね?」
「あれはこの前会社に提案したであろう。我の占い師としてのイメージは黒じゃからな、番組もそれを求めておる。買うのは普段着じゃよ。まずは一着からな。お主のセンスを見せて貰おうではないか」
大変な事になってしまったようだ。
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