国家のお仕事-6-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
晩餐会会場では、次々に出てくる海鮮系の料理にリバヒルの客人は驚いていた。
これまでフラム王国の客人を海鮮系でもてなす場合は、港町ブルックスの別荘に移動して、という事をしていたけれど、王都ラスタルの王城でこれだけの種類が出てくるとは思ってはいなかったし、本国でも見たこともないような料理ばかりだ。
「フラム王国の料理も変わりましたな」
「いやはや、魔術だけでなく料理を勉強して帰ってきたアリシアが色々とやってくれておりまして」
「ベルメーンにもアリシアの料理が幾つか行っていると聞いていますよ」
国王も王妃も客人達の反応に満足している。勿論事前にアリシアから記録盤を使って説明されただけで、本人達も知らない料理ばかりなのだが。
「ええ、ライアの劇場ですね。私も以前に行きまして、シチューとエビのフライのファンになりました」
リバヒルの将軍ともあろう人が、料理目当てでわざわざ王都からベルメーンに観劇に行ったようだ。
「演劇と料理を楽しみに、我が国にも是非いらして下さい」
「船が完成後にはまたあの町で芸術を楽しませて頂こう」
ちょっとした反撃を喰らってしまった。でも一方的に自慢するよりも、この方がいいかもしれない。
ともかく、アリシアがウチの国の人間で良かったなー、と国王も王妃も3人の将軍達も各大臣も、リバヒルの人間に自慢するのもどうでもよくなって、自分達だって食べたことのない料理を楽しんでいる。
この料理がテーブルの上に並んでいるという事は、今度は、少なくともこのラスタルでは食べられるという事だ。ほんの少し前までは結構な手間がかかっていたのに、冷蔵の箱も学院が少しずつ製造してくれているので、ラスタルへの供給も増えてきた。
やはり魚介類運搬専用の船も早く作らせないとダメだ。幸いな事に火山対策の時に切った木材はまだたっぷりある。船体用の資材には事欠かない。
そして料理の解説役なのでエリアスも一緒になって会場で食べている。現時点では無理なモノは無理とアリシアが諦めていた料理も、ラシーン大陸向けにうまく作っているなと感心している。
元の料理を知っているアンナマリーも美味しく食べて納得しているから、フラム王国風なのだとして受け入れていのだろう。
アリシアなだけにそこはきっちりと割り切って、こっちの人が満足出来るように作り上げている。
「エリアス殿、今度のあれは何が来たのだ?」
もう何度目か、料理が乗せられたワゴンが会場に入ってきたのでマーロンが尋ねてくる。
今回もお品書きが配られているのだけれど、それだけではよく解らない次の料理、海鮮お焦げが運ばれてきた。
「揚げたお米に魚介と野菜の餡をかけて食べます。まずは音を楽しんで下さい」
エリアスの説明を聞いて、音を楽しめってどんな食べ物だよ、と思っていると
「それでは」
給仕の人間がアリシアに言われていたとおりに揚げたお米の入った容器に熱々の餡をかけると、派手に湯気を立ててジュワ~っと音を立てた。
「おお~っ!」
熱々なことが解るなんとも美味しそうな演出に、出席者が揃って声をあげた。
「母様、とても美味しそうです」
「すごーい」
同席している王子と王女もそのパフォーマンスを見て興奮した。
「そうですね。配られるのを楽しみに待ちましょう」
給仕が一人一人に取り分けていくのを全員が心待ちにしていた。
その後に続いた天ぷらも量的には少なめながらも、目の前で仕上げるというそのライブ感と、出来たてがすぐに運ばれてくる贅沢を楽しんだ。
* * *
苺のソースと凍らせて細かくクラッシュさせた苺をふんだんに使用した苺パフェがデザートとして出ていって、今日の調理は終わって、厨房の方も同じ構成の小さめなパフェを食べ始めた。
これ以降は絶対に王妃に「また作れ」と言われるのを見越して、厨房の人にもこれがどういう食べ物なのか、味を覚えて貰わないとダメなわけだ。
「果物そのものも凍らせていいのか」
口の中でシャリシャリとした苺の食感がとても面白い。
「あれ、料理長、アリシア様の実家でも半分凍ったようなリンゴが出てますよ。冷たくて、食事のシメに食べるといいんですよ」
「この前教えたんですけど、元々冒険中にやってましたしねー」
国一番のグルメの番人達の間でも評判のようだ。義姉さんに教えて良かった。
「本当に料理は色々あるものだな。しかしこのカレーがどう出来上がるのか気になる」
今もカレーは焦げないように弱火で煮込まれているので、厨房に漂うスパイシーな匂いが気になって仕方が無い。
「夕食用にまたご飯炊きますからね。ボクは夕食まではいませんけど、いい炊き方も教えていきますからねー」
「明日は王妃主催のお茶会だな。またよろしく頼むぞ」
この後エリアスに聞いたけれど、会場の方は来賓共々に好評であったようだ。
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