国家のお仕事-4-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
今日の王都ラスタルは久しぶりに湧いている。
何といっても数年ぶりにリバヒル王国から飛行船がやって来るのだ。
魔女戦争が始まる前にも、同盟国として年に何度かやって来る度に、空飛ぶ神殿だったり芸術品とも評されるその姿に、これまでも市民達は湧き上がったものだ。
大抵、来る時と帰る時にラスタルの上空を一周してくれるので、その船体は住民の皆が見ることが出来る。
勿論外交問題にならないように事前に王家の許可を得てやっているサービスだ。
フラム王国としても、リバヒルは芸術で売っている同盟国だから、その辺の花を持たせてあげているのもあるし、市民への娯楽の一つとして、王家は敢えてOKしているというわけだ。
そして、それとは別の話として、王家用の新造船が城の敷地内にやってきていた。
王家用でも相変わらず地味な姿ではあるけれど、学院に置いてある先輩船と比べると装飾もついていてちょっと豪華な見た目はしている。勿論王家の紋章もばっちり取り付けられていて誇らしげだ。
基本が出来上がってようやく納品されてきたので、ここからは王都にいる職人の手によって内装が整えられていくのだろうけれど、今日はその工事はお休み。
「王家用の飛行船がようやく出来たのか」
アンナマリーもお城の敷地内に飛行船がいる事にちょっと感激している。これがラスタル育ちのアンナマリーにとっては日常の風景なのだ。
ところで、結局アンナマリーも来る事になった。
久しぶりに船でやって来るリバヒルからの客人だ。その中にはリバヒルの将軍の一人も入っているし、こちらも三将軍が家族でお出迎えする事となり、今回もヒルダから借りてきた。
さすがに外交が絡んでいるから、ヒルダもオリビアも行ってこいと命令してきた。
「アンナマリー、久しぶりだな」
二人の兄もやってきた。
「何だその服は?」
今日はエリアスとアンナマリーの二人は揃って袴姿。最近は前王の所に赴任している下の兄は妹がこの服を来ているところを見たことが無い。
「向こうの国の民族衣装なんです」
これも王妃からのリクエスト。しっかりと見せびらかすように言われているのだ。
「隣の…、エリアスさんでしたか、お久しぶりです」
「お久しぶりです」
アンナマリーに色々とマナーを教えて貰ったエリアスはおっとりとした動作で挨拶をした。
上流貴族育ちの兄二人も、お、っと思うほどのいい動きだった。
「二人とも、今日はよろしくお願いする」
ランセル将軍夫婦もやってきた。
それにしてもエリアスはこの世界の中では背が高すぎるかなと思ってしまう。白い肌に銀の長い髪という目立つ見た目にして、更にここにいる多くの男よりも背が高い。
これがあのアリシアの奥さんだと知らない人間も多いので、周囲では「あれは誰だ」と囁かれている。
ただ、アンナマリーがずっと横にいるので、将軍家にツッコミを入れたくないのか、だんまりしている。
「あらアンナマリーさん、ごきげんよう」
今度はリアーネが声をかけてきた。ファースタイン家もやって来たようだ。ジェラルド将軍夫婦もいるし、リアーネの兄と弟もいる。
「なんだ、何の用だ?」
相手がリアーネとなると、アンナマリーは不機嫌そうな声を出して答えた。
「ところでこちらの背の高い方は?」
「アリシア様の奥さんだ」
「え、ホントに?」
お相手がいるという話は聞いているけれど、あの女っぽいアリシアの奥さんがあまりにも神々しい美女とは思わず、リアーネは絶句した。
いやまあ、美女をめとる事は英雄にふさわしいのではあるが、何となくイメージが違う。例えば距離的にも背丈的にもルビィと結婚するのを想像したモノだ。
アリシアがいなかった事もあるけれど、幼なじみで学院でのライバルだったルビィがあっさりと、どこから出てきたんだという学院の同僚の男と結婚した時には、王も含めて驚いたものだった。
「ところでアンナマリーさん、我が屋敷のネコちゃんが子供を産みまして」
「なに、ネコだと?」
「それ以来エリック君がよく遊びに来るようになりまして」
「お前のところの毛がフワッとしたネコなら、その子ネコも同じような毛並みなんだろうな?」
「ええ、それはもう可愛くて可愛くて」
ネコが嫌いなアンナマリーへちょっとした挨拶。でもあなたの所のエリックはネコもイヌも好きなので、遊びに来てるんだぞという話。
「私も見たいぞ」
「え?」
「実は下宿の方に朝まで猫の親子が泊まりに来ていてな、これがまた可愛くて。子ネコは二ヶ月ちょっとのが3匹いてな、これがもう。アリシア様、例の画像を」
「はーい」
この場でリアーネに会うだろうと、アンナマリーからのリクエストでネコの画像を記録盤に記録して来ていた。反撃したかったわけでは無い。単にネコ好きなリアーネに可愛い子ネコの話をしたかっただけだ。
「これがその子ネコたちだ」
画像には3匹の子ネコや親猫にアマツ、そしてその子ネコに頬ずりしたり、あまつさえ耳や額にチュッチュしているアンナマリーが映っている。
「可愛いだろ。ミーミー鳴いて甘えてくるんだ」
「ど、どうしたんですか、アンナマリーさんが」
「大きいのはまだダメなんだけどねー」
「え、え?」
確かに大人のネコは画像だけで、アンナマリーが遊んでいる絵はない。それでもリアーネには衝撃だ。
「何だったらこの子ネコが抱いているぬいぐるみをお前のところのネコにもやろうじゃないか」
「それボクが作ったヤツじゃん。あ、でもいるなら持ってくるよ」
子ネコが大事そうに抱いているのはハムスターの丸っこいぬいぐるみ。シンプルな造形の顔と飾りの無い丸いものを抱いて無邪気に転がっているネコがとんでもなく可愛い。
これを家の子ネコが抱いたなら、一体どうなってしまうのだろうか想像してしまう。
「それはぜひ」
それからもネコの話をしてくるアンナマリーにリアーネが戸惑っているところに、エレオノーラがやって来た。勿論隣には 夫であるレオナルド将軍の姿がある。
レオナルド将軍は三人の将軍の中でも特に武闘派な、猛将と呼ばれる男。帝国相手にエレオノーラと撃破数を競った末に、当たり前のように結ばれた。
その性格からヒルダの父親であるルハードとも気が合うし、ハルキスの部族で出来ている隊を統括することもしている。
「いやー、ようやく来ますな」
「王家の船が間に合いませんでしたが、近くにこちらからも使者を出しますから」
「我が方は内装にこだわっていますからな」
三将軍はアリシアを前に上機嫌。冷蔵箱と冷凍箱、温蔵庫、調理盤を乗せる事が決まっている。船内には会食用スペースをちゃんと作って、食事をしながらの遊覧飛行に誘って驚かせようという趣向だ。
そうすると遠くの空に飛行船の姿が確認され、やがてラスタルの上空にやって来た。
予定通りに王都の周りをぐるっと回っている間に、アリシアはタウの姿を見つけて
「あのー、探知装置を作ってきましたよ。これが説明書です」
探知装置は3個ある。
「おお、出来たのか。マーロン王、これが先日お話をしたアリシアの魔獣探知装置になります」
そしてすぐ側にいたマーロンに声をかけた。どうせお城に着陸するまでにはまだ時間がかかる。
こちらの世界には無い、あまりにも異質な姿にマーロンは驚くが、確かにシンプルでいてサイズも丁度いい。重量的にも重いわけでも無い。
なるほどこれなら持ち歩くのもいいだろう。報告によると既に配備されているパスカール領では好評のようだし、早速あそこにいる3人の将軍それぞれに渡して試験運用をしようと考えた。
「アリシアよ、よくやった」
「え、ええ、そうですか」
強力な力を持った魔工具ではないけれど、今までにない機能を持っているようなので、使い方次第では実に有効に働いてくれそうだ。
今回の事が終わったら早速将軍に説明をして現場で使わせよう。
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