国家のお仕事-3-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
伽里奈がラスタルからやどりぎ館に帰ってくると、吉祥院が早速ダンジョン作成用の素材を全て入手して持って来た。
話としては全部実家にストックがあったそうだ。さすが古来よりの魔術師一族なだけある。
土の方は念のためにダンジョンを作る横浜校の構内にある土を持ってきた。
儀式用の素材は今は横に置いておいて、ミニチュアを作るために土に混ぜる薬剤を作り、粘土状にしたそれを圧縮して、粘土細工のように加工する。
それを切ったり、成形したりして、思い描いた形として、罠などの魔術をこめるのであれば、また別に加工した紙に魔術基盤を施して、任意の場所に忍ばせたり、土台に貼り付ける。
毒針が飛び出てきたり、槍が降ってくるような物理的な罠は、実際にダンジョンとして形が成った後に取り付けていく。
「実に魔術らしい魔術だな。いやしかし、話しを聞くにつれ、魔術師なら誰もがハマるな」
ミニチュアを作るだけで無く任意の箇所に魔術を仕掛けるのは細かい作業ではあるけれど、魔術師は基本的には凝り性でなければやっていけない。
霞沙羅は更に魔工具や魔装具の製作も行うので、手先が器用だから細かい作業はお手の物。
吉祥院は研究大好き人間だ。
「もう次の部屋を作りたい気分だよ、アリシア君」
「焦らないで下さいね。ただ拡張をする気なら、次の部屋への出入り口や階段の大まかな位置を決めておいた方がいいですよ」
「ダンジョンと言えば下だな」
「そんな事は無いと思いますけど、横か下の両方想定しておけばいいと思いますよ」
「地球でやるなら3Dプリンターにも対応させたいじゃんか」
「その辺はお前に任せるぜ」
アシルステラでも作り方は自由なので、使う素材が儀式用のミニチュアとして成立するのであれば、自分のやりたいようにやればいいと思う。この地球でなら、人によってはCADソフトを使った方がいいという人もいるだろう。
「中に何か保管するんですか?」
「吉祥院だけの権限で動かせる宝物を幾つか置いてみようぜ。これの基本は石だろ。石の棺桶みたいなのは生成前にオブジェクトとして置いておけるのか?」
「出来ますよ。セキュリティーで一回限りのゴーレムやガーゴイルも作る人がいますから」
「ガーゴイル、そういうのいいねえ。でもまずは虫かな」
霞沙羅的にはそのうち宝箱も置いてみたいなとは思う。
「では私は保管用の箱を作っておこうじゃないか」
「このサイズなら二、三日あれば固定は出来ると思いますよ」
「こないだみたいに土に還らなくなるって事か?」
「そうですねー。岩として固定されます」
ひとまず術が終わった後も、周囲の魔力を少しずつ取り込んで、ダンジョンはゆっくりと強固になっていく。日本は地震の多い国だし、関東はその中でも結構小さな地震が多いので、耐久性は気になる。
それでも崩壊しなければ、ヒビくらいであれば時間をかけて修復される。それにとりあえず地下に埋める物だし、地上物よりは震度の影響は小さいはずだ。
「それとアリシア君、ライアという人の魔術の使い方が面白いらしいねえ。霞沙羅から概要は聞いたよ。また会えないかねえ」
「システィーがいるから時々ならヒルダの屋敷に連れてこられますよ。でも吉祥院さんですよ?」
「ワタシは霞沙羅と違って戦う気が無いので、どういう風に使うのか見たいだけさ」
それに激しく動くわけでは無い専業魔術師でも、ただ突っ立っているわけでも無いので、ライアの持っている何かしらの魔術が使えるだろうという考えだ。
「ライアも吉祥院さんの服が気になっているので、見せればいいんじゃないですか?」
「そんなものならいつでもいいよ」
わざわざ脱がなくても吉祥院は同じような服を幾つも持っているので、それを持ってくればいいだけだ。
「そいつも同じのが使えるぜ」
「元々ボクがデザインした魔法ですからねー。ただ、そこからライアが使いやすいようにアレンジしてますけどね」
「そうだよ、お前が出来る分でいいから、こっちで相手をしろ。その時は軍の演習所を借りるから思いっきりやれるぜ」
「まあいいですけど、あんな動きは無理ですよ。なにせライアの二つ名は蒼空の舞姫ですからねー」
「いいんだぜ。あいつとの対戦イメージが沸かないんだな、これが」
いずれ榊とやらせてみたい。あれがどこまで対応出来るのか見物だ。
とにかく今はダンジョン作成だ。2人は伽里奈の手を借りながら、深夜までコツコツとミニチュアを作っていった。
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