お祝いとさよならと-6-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「シールの仕組みが解ったので妨害用の魔術を構築中でヤンスよ」
「出来上がったら警察にも横流ししてやれ」
「実際は彼らか神官達が相手をするわけざんすから、協会を通して関係トップには連絡済みだっぺ」
金星の虜はどの集団も人数はそこまで多くないから、基本的にはゲリラ的な襲撃が予想される。
そうなるとどこまでこの妨害魔法が効果を発揮するか解らないけれど、作っておいて損は無いだろう。
「あれからアイザックがどうなったか特に情報はないでありんすが、日本にいるモノとして考えた方がいいざんしょ」
本人の魔術師としての腕前も高いけれど、二つ名の通り、人形を使った遠隔からの活動が多い為、中々捕まえるのが難しい。
この人形はゴーレムの技術による無人タイプの場合もあると、技術的にも高いモノを持っており、本人は変装も得意と結構厄介。
犯罪の多くは盗みで、本人の趣味であったり、依頼だったりとまちまち。
彼はマリネイラの信者であるという調査結果もあるけれど、組織に所属していたり、本人自ら組織を率いていたりは無い。基本的には個人活動。
「とりあえずはマリネイラに関する魔工具等々が置いてある宝物庫や研究所には備えるように連絡は終わっているダスよ」
各施設の人間だけでなく、魔術協会も動いているから、職員達による設備の点検や巡回も行っている。
「魔法学院での意見交換会から向こうのセキュリティーの幾つかをピックアップして研究中でありんすが、さすがに間に合わないざんす」
「それは今後で反映させようぜ。中途半端に設置してもいい事はないしな。それよりよ、ダンジョン作ろうぜ」
「急にダンジョンとか変な事を言うでヤンスが、確かに話が中途半端になっていたダスな。そうなるとアリシア君に手を借りることになるでありんす」
「ルビィの方が詳しいとは言っていたが、結局こっちの世界であの魔術を使おうとすれば、術式だけでなく触媒の素材を解っているのは伽里奈だけだからな」
という事で、霞沙羅は伽里奈から簡単に解説されたダンジョン作成の事と、ライアとの戦闘で実際に体験した話をした。
吉祥院も魔法学院の宝物庫が実質ダンジョンである事には興味を持っていたけれど、その詳細な話にいたる前に事件が起きてしまった。
ゲームもやらないし漫画もアニメも殆ど見ない吉祥院でも、ダンジョンという創作物は、カタコンベやピラミッドのような、こっちの世界にも実際にあるような遺跡で、ある程度のイメージは持っているけれど、じゃああれを作れとなると色々と大変だなとも思っていた。
それが人手も使わずに、魔術師の手で作られてるのであればやってみたいと思うのが魔術師の性だ。
「横浜校にはまだ土地はあるだろ?」
「ホントにこっちの世界でも出来るものでありんすか?」
「小さいのは、公園の砂場で実験したらしいぜ」
どんな物を実験として作ったのかは解らないけれど、わざわざ口にしたのだから伽里奈が想定した魔術は発動したことは確かだろう。
「ほう、そうでありんすか。早速アリシア君を呼び出そうじゃないか」
と、電話をするとわざわざ伽里奈がやどりぎ館からやってきた。
「ダンジョンやるんですか? ボクもやりたいんですけど、本気でやろうとすると色々と素材が揃わなくて」
「その辺は吉祥院に任せようぜ」
吉祥院家の人間だし、魔術協会の理事、横浜校の教授、日本軍の中佐、これだけの肩書きがあって揃わない素材が無いわけがない。
「本当にこっち用の術は出来ているんだよね?」
「それは大丈夫ですよ」
「この自信だぜ。じゃあ何が必要か書け。吉祥院なら手に入らないモノは無い」
「じゃあまず作るのは一部屋分でいいかな。一応永続タイプにしましょうね」
大きいのを作ると生成魔術が終わるまでに時間がかかるし土地の問題もあるから、ワンルームマンションの部屋くらいのを一つ作る事にした。
「罠みたいなのは最初から仕掛けられるのか?」
「普通は最初からある程度仕掛けるんですよ」
この魔術への理解度が高くない2人はどういう設計をすればいいのかよく解らないので、最初という事で伽里奈が推奨する基本的な部屋を作る事にした。
罠はかかったら死ぬような物騒な物はやめて、電気が流れて痺れるとかコントのように冷却ガスが出る程度の仕掛けと、解除しないといつまでも先に進めなくなるような罠とかを提案した。
それとセキュリティーにいくつかの仕掛けと、扉自体もアシルステラではスタンダードな魔術の鍵を掛けることとする。
「千年世などという仰々しい名前をつけられたこの私ざんすが、知らない魔術を一から学ぶという事に、久しぶりに興奮をしているよ」
ダンジョン作成魔法についてはルビィの説明が中途半端だったので、伽里奈は再度その概要を伝えた。
地球の、この国の建築技術は確かに高い。魔術師である吉祥院もそれは信用している。
でもそれとは違う頑強なダンジョンを自分の手で作るという事には興味が湧いている。
「拡張方法は今のルーちゃんに聞いた方がいいでしょうねー」
旦那が建築に関係しているから、ダンジョンも勉強をしていると聞いている。
学生時代のライバルだった伽里奈もやり方は知っているけれど、ルビィの方が上手く作るだろう。
「お前は延々拡張しそうだな。下手したら寿命で死ぬ日まで」
「お宝を埋めたダンジョンなんていうのもあるのかい?」
「ありますよ。お金持ちに依頼されて、お墓として、ため込んだ財産と一緒に眠るようなのが、ホントに時々いたりします。生きてる内から何年もかけるんですよ」
そして死後はダンジョンの奥底で財宝と一緒に眠りにつくのだ。
たまにアンデッドとして自らが貯めた財産を見守り続けるのもいたりする。
という事で、伽里奈は必要な素材を書いて、吉祥院に手渡した。
「集まったら持ってくるよ。このくらいならすぐ集まるだろうね」
吉祥院はやる気が出ているので、明日横浜に帰ればすぐに動き始めるだろう。下手したら一日で全て集めてしまうかもしれない。
「デザインは、セキュリティーと罠を含めて作っておいて下さいねー」
罠については、伽里奈がある程度スタンダードなものを紹介してやどりぎ館に帰っていった。
こっちはこっちでリバヒル王国から客人が来る事に際して、頼まれていたことがあるからだ。
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