お祝いとさよならと-5-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
ゴーレムを使ったシールのデータ検証が終わって、吉祥院と純凪夫妻はもう少し魔術の話しをするためにやどりぎ館に帰っていった。
「ここからは小樽校関係者専用の時間だ。耐久力の検証だからシャーロットも思いっきり魔法を撃っていいぜ」
X字の練習器具を作っている教授のところに行くと、早速試作品が出てきた。
「どうだい。今はジャンク品の塊だが、本番は業者に頼む予定だ」
「見た目はイメージ通りですねー」
「可動部分はどうだ?」
通常は細いXの形だけれど、実際に使う際には左右に広がるように出来ている。
足下にはストッパー付きのキャスターがついているので、自由に移動出来るから、室内だけでなく外に持っていく事も出来る。
結界の強度を変えるために、触媒が乗った容器をレバーひとつでレールの上を移動させる事もちゃんと出来る。
「これだ」
霞沙羅も満足している。
「じゃあシャーロットにやって貰うか」
「はーい」
横浜校出し抜き作戦に協力して貰っているから、イギリス本国でもこの発想を流用してもいいと言われているので、シャーロットも興味津々だ。
結局、レーンの代用品としては、一般的なクラスの生徒向けとなってしまうのだろうけれど、とにかく全生徒を対象に、体を魔術に慣らせるために日々の練習の機会を増やすことが目標なのだ。
シャーロットも年始に家で話をしたらジェイダンもその発想に興味を持っていた。近々また家に帰るので、今日の事も話しておこうとスマホで写真を撮った。
「じゃあいきます」
結界のサイズと強度を変えて、何度もシャーロットが様々な魔法を放ったけれど、結界の強度も問題無く、機材も破損することは無かった。中々想定の通りに出来上がっている。
「キャスターはもう少し頑丈にするか」
「テントのペグみたいに、地面に杭みたいなものを打った方が安定しませんかね?」
「それもオプションでつけておこうか」
地面に置いた容器も、結界内に向けて魔法を使ったところで転がるわけでは無いけれど、外に出すとなれば風の影響もあるかもしれないし、安定感も出てくるから悪くない。
「じゃあ杭を打てるようなパーツをつけておくことにしよう」
とりあえず試作品だから、量産に向けて実際にいるいらないを決めるために、考えられる機能をつけておいた方がいい。
「これは無理かもしれないけど…」
伽里奈もこの発想で作られた装置をアシルステラで作ろうと、写真を撮ってからやどりぎ館に帰っていった。
* * *
純凪一家はやどりぎ館で夕飯を食べるとヤマノワタイに帰っていった。
ユウトの祝勝会の日程が決まったらまた連絡をして、当日また来て貰うことになった。
「エナホ君も大きくなっていくな」
純凪一家が管理人をやめて、やどりぎ館からいなくなったのがエナホが2歳とちょっとの時で、もうそれから1年近くが経とうとしているから、まだ赤ん坊の頃から知っているユウトもその成長を見てひとしおだった。
「次はユウトさんですかねー」
「ははは、そうだね。優勝してからオヤジさんからも孫の顔が見たいような言葉が出てきたよ」
こういう会話からも、この人は出ていくんだなという雰囲気がひしひしと伝わってくる。
「子供が出来たら見せに来るのじゃぞ」
「その時にはおむつの替え方を是非教えて貰いたいですね」
「相談には乗るぞい」
エナホの乳母状態になっていたフィーネを見ているので、自分の子育てが開始したおりにはその辺の事を是非相談したいと思う。
じゃあその次は誰かな、という話題は何となく野暮だからやめておいた。日本軍の大佐ともあろうお方が急に乙女になられても困る。
「『気』の使い方はやはりユウトさんが一枚上手というところか。また明日もお願いしますよ」
榊も横須賀から帰ってきてすぐにユウトに付き合って貰っている。
ついでにアンナマリーも初歩の初歩、気の練り方を見て貰っている。
まだ練習をやり始めて一週間も経っていないので何とも言えないけれど、伽里奈から指示されてやっている事自体に間違いはないので、とにかく根気よく続けるようにと言われた。
イメージがつくように『気』を使った初歩の技も見せてくれるというので、最後の日まで頼ろうと思う。
「そういや、ユウトさんの世界には妙な魔術師が出入りしているような事件は起きていないのか?」
「大会開催中に、妨害するような事件は起きているが、魔術師の仕業では無かったな」
「そうですか、それならいいんですが、異世界の魔術を使用してくるので、妙な事件が起きたら相談にのるぜ」
「ああ、気をつけることにするよ」
直近で起きた、伽里奈のところの怪しげな事件も、結局はただの火山活動だったし、今の所は一旦退いてくれている状態だ。
「じゃあ私らは色々と対策会議だ」
魔術の話をしても榊は解らないので、霞沙羅と吉祥院の2人は霞沙羅の家に移動することにした。
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