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このところの来客につき -5-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 周辺は今日の就業時間が終わった横浜の一画にあるオフィスビルに、2名の取引先がやって来た。


 実際は取引業者では無く、水瀬カナタと舟形アオイだ。


 先日無事に協力者と合流出来たので、次の段階の打ち合わせにと指定された場所にやってきた。


 彼らの正体は「金星の虜」である「あかとき」という集団ではあるけれど、普段はこのオフィスで輸入家具の通販会社を真面目に運営している。


 テナントで借りている1階にはショールームがあって、担当者がしっかりとした商品説明もしてくれるし、販売している家具に何かが仕掛けられているという事も無い、いたって安全な家具を販売していて、世間的にもありふれた会社組織として知られている。


 基本的には社員全員が「金星の虜」であり、その隠れ家と活動資金の捻出を目的としている。


 メンバーは純粋な経営側と「あかとき」の実行部隊に別れていて、もし何かあった場合は実行部隊は「社員にそんなのがいるとは知らなかった」と斬り捨てられる運命にある。


 でもそれは覚悟の上で、組織自体は生き残り、マリネイラ神の為の破壊活動は続けばいいという信者の理念で運営されている。


 そんなオフィスに2人は取引先の客として通され、会議室に案内された。


 会議室にはこれまで何度かお店に来た2人と、新顔の2人が待っていた。その新顔2人は目が隠れる仮面をしている。


 表面上の社長と「あかとき」の実質上のトップの二人組である。


「この格好で申し訳ないが」

「いえいえ、良くあることですの」


 カナタの方も相変わらず顔を覚えられない細工をしているのでお互い様だ。


「話はいっていると思うが、協力者は無事に到着し、現在は我々が用意したある場所で別の準備をして貰っているところだ」


 その協力者には会うことはない。カナタもアオイも「あかとき」の戦力として手を貸すわけではないから、それが誰であろうと気にしてはいない。だから最初から会う気は無い。


「注文している魔工具の進捗はいかがかな?」

「設計は完了して、製造の方を始めていますわ。年末の話では作業を進めていいとの事ですしね。ところで、その協力者という人物は、そこまで信頼出来ますの?」

「名前を明かすことは出来ないが、欧米だけでなく世界的に名の知れた凄腕の魔術師だ」

「それとは別の専門家もお招きして、彼と一緒に宝物の入手にあたる事になっている」

「話は聞いていますが、実際その専門家は信頼出来ますの?」

「先日失敗してしまったが、彼らもこの仕事においては信頼のおける凄腕揃いだよ」


 まあその失態を見てましたからねえ、というのは内緒で、その件の下準備も頼まれている。

 

 実際にこれまで盗みに失敗した事は何度かあるそうだし、まあ一件や二件くらいは大目に見てあげよう。


「そうですの。それであれば安心ですね。ところでいくつかシールを購入して頂きましたが、戦力は足りていますの?」

「ふむ、それについてだが…」


 カナタの質問に仮面の2人は考え込んだ。


「『バングル』という別組織が活動停止状態な為、そこからの流入があって、人数は確保出来ている」

「その『バングル』という組織が何も出来無いまま失敗してしまったので、折角作った魔工具がきちんと動くところを見たいのですよね。私はさすがに手を貸すことは出来ませんが、人材が不足しているというのなら、これを差し上げましょう」


 カナタは小さめなプラスチックの箱に入った、いくつかの四角い塊を机の上に出した。


 例の、幻想獣を固めた塊だ。


「こんな形にしていますが幻想獣ですの。少し前に加工したので中身は何なのか忘れてしまいましたが」


 これまではある程度の衝撃を与えると元の幻想獣になる仕組みだったけれど、さすがにそれは持ち運びに難があるので、軽く魔力をこめてから衝撃を加えるように改良されている。


 その過程で、魔力をこめた人間は襲わないように設定もしているから、安全性も確保している。


 あのエルナークからの意見もあって、改良したはいいけれど、どちらも事件が解決してしまって、誰にも渡すことが出来なかった代物だ。


 折角なので、同じ「金星の虜」なのでサービスで幻想獣を渡すことにした。


「こんな感じなんだけど」


 アオイが撮ってあった映像を見せて説明すると、「これは素晴らしい」と引き取ってくれた。


「こんなモノまで作るとは、改めてその腕前を確信したよ。こちらもここまで順調に来ているのだから、最後まで計画を進めていかなければな」

「まあ見ていてくれ」

「では期待しつつ、任された仕事を終わらせておくとしましょう」


 今回の組織はその運営方法からいって、以前の、半ば仲良しサークル活動のようであった「バングル」とは違ってかなり堅実そうだ。さすがに何も結果を出せずに自滅することは無いだろう。


「これまでお客として色々な人を見てきましたが、とにかく焦りだけは禁物ですの。金星の接近という事で、スケジュールを気にされる方もいるでしょうが、これまでのお客のようにそれで身を滅ぼさないように、是非ともご注意を」


 運営方針からいって、先のことを見据えている組織のようだから、今回は欲に駆られたり、己を過信したりしないようにして欲しいモノである。


 そうでなければ困る。


 カナタも、自分の研究が最終段階になってきたからといって、そこまでのんびり出来るわけではないのだから。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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