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このところの来客につき -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 マリナのいる劇団は大衆向けの劇団なので、現代日本に慣れたアリシアの目にはその辺のクォリティは仕方ないと思わせるけれど、それでも庶民には充分楽しめるような工夫をされているし、評判の通り

王都の人も楽しんでいた。


 先日、劇場に引っ張り込まれた時に教えた三つ編みの事も本当に取り入れていて、「ウチは違うぞ」と、それを強調するためにわざわざ三つ編みにするシーンが挿入されていたし、演じているマリナも随分自信を持ってやっていた。


 この劇団はいくつかある他団体の中でも人気だそうで、アンナマリーのような貴族も、平民は入れない公演回が設けられていて、その機会に見に来ている。


 観劇の後は、あんまり劇団の邪魔にならないように、サッと挨拶をしてから、実家に向かうことにした。


「お前はまたそんな格好をして」


 父親からは服装の件でまた呆れられた。


「しょうがないじゃん、本物が本物の姿で客席に座ってたら劇団に悪いでしょー。はいはい、今日も料理を伝えて帰るよ。義姉さんいる?」


 今日は残された時間も少ないので、ハッシュドポテトと冷凍リンゴを教えていく。


 家族なんだし、あの冷凍箱をあげればと思うけれど、こんな庶民のお店でアイスを出そうモノなら貴族から睨まれるだろうし、盗難の危険もあるから、今の所渡す気は無い。


 その代わりとして、他店とのアドバンテージとして魔術師の義姉がいるので、簡単なデザートとして冷凍リンゴを作る魔法を教えていこうと思う。


 シンプルすぎるけれど、冒険中にも似たようなモノを作っていたし、それを安定して作れるようにして、大衆向け食堂でそんなに高価じゃない名物の一つにして貰いたい。


 父親に呼ばれて義姉が出てきて、魔法を教えながらの調理が始まった。


 ハッシュドポテトは、冷凍の方法を教えているアリシアの横で芋を加工して貰うとして、魔術の方はメモを渡して、今回はお店にある普通のフォークを使う事にしている。


「今回はフォークをちょっと刺して、リンゴに冷気を流し込んで貰うよ」


 この魔法はリンゴ一個につき一回の魔術では無くて、十個程度凍らせることが出来るように持続型にデザインしている。ワインを冷やす時のように長時間動き続ける魔法では無い。


「なんかお義姉さんに負担がありそうだけれど?」


 好評だという冷やしたワインもあるからと、エリアスは心配する。高位の魔術師になれたアリシアはそうそう魔力が切れることは無いけれど、義姉は普通ランクの人だったはず。


「ちゃんと義姉さんがどの程度保つのかは考えて、デザインはしてるよ」


 元々ワインを冷やす魔法は、自販機のビールのようにキンキンに冷やすわけではないから、魔剣化物を一個作れば一晩は持つように持続力を重視してある。


 今回のリンゴは凍らせるわけだけれど、対象はそれほど大きくないし、ある程度解凍した状態のモノをお客に出すのだから、凍らせ続ける必要は無い。


 それにリンゴをそんなに大量に仕入れるわけじゃないし、販売数を限定して貰えば、言い方は悪いけれど、ごく普通レベルの魔術師である義姉でもそこまで負担になる事は無い。


「芋を適当な大きさに斬ったら、軽く炒めて貰って、それを軽く潰して貰って、味をつけて、形を整えて、揚げるからねー」

「ああ、まず炒めるんだな」

「じゃあアリシアちゃん、やってみるわね」


 エリアスは見ているだけだけれど、お店の仕事を協力してやっていること、これが家族なのかなと見ている。


「エリアスちゃん、エリアスちゃん」


 奥の方から、アリシアの母親が手招きしてくる。


「この前聞けなかった息子の話を、ちょーっとね」

「あ、はい、今行きます」


 お店はまだ暇な時間。エリアスは家の奥に吸い込まれていった。


「変な話はしないで欲しいなー」


 息子が実家のために料理を教えているだってば。貴方の義理の娘さんだって真剣にやってるんだよ。


 外野はともかく、リンゴを凍らせる魔術は、下級の魔術をアレンジしたモノだし、既にアリシアが完成させているので、義姉は貰ったメモの通りに魔術を扱えばいいだけ。


 完成した魔術の籠もったフォークをリンゴに軽く刺して、10秒ほどするとカチカチに凍るのですぐに抜いてもらい、次のリンゴに刺すとまた凍る。


「魔術の負担はどうです?」

「全然大丈夫よ」


 今後は昼食や夕食の準備時間にこれを繰り返して冷凍リンゴを作っていって貰って、多少解凍したところをお客さんに出してもらう。リンゴは食べやすいように半玉にして。


 これはさすがにホテルミラーニカでは真似出来まい。ルビィなら自分でやって…、制御出来てなかったっけ? レポートはあげてたけどどうだっけ? でも先日から制御の練習をしているルビィなら大丈夫だろう。


「これで芋を揚げるぞ」

「元々もう炒めてるから、軽くねー」


 そっちの料理は板状にした形を固めるために、軽く揚げて終わり。


 塩味は揚げる前からついているので、そのまま出してもでもいいし、味が足りないなら唐揚げ用に作っているケチャップをちょっとつけて出してあげてもいい。


「いいじゃないか、美味そうじゃないか」


 裏から出てきた上の兄も出来上がったポテトを見て良さそうだと満足した。


 お店の新商品が出来上がり、両方とも味見をしに来た子供達にも好評だった。


 義姉は自分が学んできて、結局それほど形にならなかった魔術が意外なところで役に立って嬉しいようなので、貴族に睨まれないように、料理の仕上げにひと工夫入れるような別の魔法をまた作ってこようかなと思った。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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