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金星の接近が始まる -3-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「おう、やっと出来たでやんすね」

「実際の現場でも動作を確認してきたからな」


 千歳の演習場で偶然性能テストが出来たので、早速、もっとテスト地として向いている新丸子観測所でも試験運用を行う事にした。


 吉祥院もようやく地球用の探知機が出来たので喜んでいる。


「うーむ、このデザインなら全国で使っても浮かないでありんす」

「最初の探知機ってどうなったんです?」

「あれは大学に置いたままになっているぜ。小樽だからあまり出番はないんだがな」


 とはいえ、一度事件が起きているので、学生の安全確保のためにしばらくはアレを使って警戒しておいたほうがいい。警報システム自体がアップデートしていないから、学校周辺という狭い範囲ながら、早く動けるのはとても大きい。


 それとは別に、吉祥院が複製・改良した方は、今は関西の方で実験して貰っている。


「じゃあこれを持って安全地帯に行こうじゃないかい。その前に、こちらの人を紹介するよ」


 吉祥院は近くでモニターを見つめていた白人男性の肩を叩いた。


「キャメル傭兵団から宝物を取り戻すべく、イギリスから来ているライゼン=フォーマーさん。警察の魔術捜査官で、魔術協会の宝物管理もやってる人だよ」

「ライゼンです。あの新城大佐にお目にかかれて嬉しい」


 30代の男性。金髪をオールバック気味に纏めた男性だ。何となく、魔法使いというよりもビジネスマ

ンといったほうがしっくりくる感じがするくらい、背広が似合っている。


「噂に違わぬ美貌をお持ちで」

「ああ、まあそういうもんか?」


 霞沙羅はあんまりこういう挨拶が得意ではない。


「それでこっちが大佐と一緒に傭兵団を捕まえた伽里奈君でよかったかな?」

「ええまあ」


 ライゼンはフランクな感じで挨拶をしてきた。魔術師は物静か、と決まっているわけではないけれど、ちょっとにぎやかな印象の人だ。やっぱりビジネスマンが向いているんじゃないだろうか。


「それはともかく、ジェイダンさんから話しを聞いているようですが、一人の魔術師が日本に上陸を目論んでいましてね、勿論我が国としては国内から出す気は無いですが、備えとして、日本に派遣された俺が警戒にあたることもあろうと、この旧東京を見せて貰っているって話です」

「マリネイラ信者の人間のようだからね。来るとしてどこを目的としているかは解らないけど、首都周辺の現状をね、見て貰ってる」


 厄災戦からは外れていた欧州のイギリスにはこういう、幻想獣の発生場所となった激戦区跡は存在しない。


 当時ほどでは無いとはいえ、今なお現役で影響が残り、閉鎖されたかつての首都という存在は珍しく、魔術師としては興味をそそる。


 今扱っている盗難事件とは関係ないけれど、時々犯罪の関連場所にもなるし、マリネイラ絡みでその魔法使いとも無関係ではないわけで、警察視点でも見逃せない。


「結構時間が経ってるが、あの傭兵団の調査はどうなっているんだ?」

「我が国だけでなく、魔術の中心地である欧州国家はあの傭兵団にはかなりの被害を被っているからね、各国で協力して、一部とはいえ回収が進んでいるよ」


 傭兵団に盗まれたモノといえば、美術品もあるし、貴重な魔工具や魔装具も多い。その過程でコレクターや魔術師も捕まり始めている。


「まだまだ、許すつもりはないよ。全部搾り取ってやるつもりさ」

「協会の理事から見てもね、集まった各国の警察系魔術師には期待しているっぺ」


 日本でも幾つか盗まれているので、警察も精鋭を集めて取調中。専門外の吉祥院も勿論期待している。


 挨拶も終わり、吉祥院は霞沙羅から手渡された探知機をようやく起動した。


「おう、これはいいじゃん。いきなり幻想獣の反応が表示されちゃって、金星の接近を予感させるっしょ」


 旧型に比べて探知範囲は狭くなっているけれど、方向を全周囲から狭めていけば距離が伸びていく。


 更に範囲を犠牲にする事で、範囲内の情報量が増えて正確な数が解る。今は固まって3体がうろついているところだ。


「これもちゃんと何なのか解ったりするだべか?」


 窓を開けて重力波探知を開始すると、そこそこ離れているのにちゃんと幻想獣の形状をスキャンして、画面に表示が行われた。


「犬型。タイプ8番かな?」

「横に何か表示されてるぜ。9番か?」


 スキャンした形の横に番号が表示してある。何となく作った旧型にとは違って、形状からある程度どういう敵なのかを判別する機能を追加してある。


 現場の担当者に持たせるにはとてもいい機能だ。


「ある程度の判別データを入れてますけど、その辺の精度は使いながら直して下さいね。設定出来ますからね」

「ほお、やっぱアリシア君はすごいでありんす。あとで説明書を見ておくじゃん」

「じゃあ行くか。もっと近寄ってみようぜ」


 まるで新しい玩具を手に入れた子供のようにはしゃいでいるけれど、表示されている内容は遊びではない。二人は待機させておいた小隊を連れて出動していった。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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