侮れない技術 -1-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
あのシールについては、いきなり完全とまではいかないものの、軍と警察にいる関係部署の人間へ説明するにはまず充分と言えるレベルまで解析は終わったので、ルビィはラスタルに帰り、霞沙羅と吉祥院はそのまま家に籠もってレポートを書き始めてしまった。
「なんじゃ、もう少し進展があると思うておったが」
折角榊が引っ越してきたというのに、と霞沙羅のこの動向にフィーネは呆れていた。
自分で未来を見れば解りそうな物だけれど、こういう面白い事は知らない方がいいそうなので、見ない事にしているが、折角の楽しみが一向に始まらない。
かたや榊達は今日もヒルダの屋敷に行って、またやりあいたいというので、なんとエリアスを連れて行ってしまった。
榊もエリアスの裏事情は知っている。だから、女神様の結界かー、とヒルダ達もそんな事をやっていいのかと気になっていたけれど、間違いなく人間では破壊出来ないから、頼んだ次第。
伽里奈はやどりぎ館の仕事があるので、4人のことはエリアスに任せて、掃除と洗濯を始めた。
「賑やかな一日だったなー」
榊があんなに喜んでアシルステラに行くとは思わなかった。ヒルダ達とすっかり意気投合しちゃってるし。
伽里奈がやどりぎ館に来た時も、休日になれば実家に誘われたり、密かに軍の演習所でやったりと、まともにやり合える人間が現れた事を喜んでいた。強すぎる人間の悩みだ。
「ヒルダ達も楽しそうで、良かったんじゃないですか?」
これからしばらくはハルキスの運搬をやることになるんだろうなとシスティーは思う。
「住んでる世界が違うけど、あのレベルの達人が3人も揃うとか、あんまり無いからねー」
伽里奈も久しぶりに同じ戦闘スタイルの霞沙羅と真面目にやってみたいところではある。
「そろそろ客人が来るころじゃ」
テーブルでお茶を飲んでいたフィーネが談話室のソファーの所へとやって来た。
「今日の服は初めて見ますねー」
基本は黒いドレスではあるけれど、袖や襟など、各所に白いラインのようなデザインが施されている。
真っ黒な服に比べると白のコントラストがある分、独特の輪郭が浮かび上がっている。
「メリハリがあっていい感じの服ですね」
「そうか? まあ見せてパッと見て良さそうであったからのう」
伽里奈に褒められて、何となくまんざらでもなさそうに、見せびらかすようにくるりと一回転してから、ソファーに座った。
「それはともかく、我は午後から店であるが、夜はあの吾妻と打ち合わせがある。夕飯はいらぬぞ」
冬季休暇も終わり、事務所も動き出しているから、早速テレビ番組出演の打ち合わせをするようだ。
それと同時に札幌でのファッションイベントもあるから、年始から事務所は忙しくなりそうだ。
「それで、誰のお客さんが来るんです?」
「霞沙羅じゃよ。アリサに連絡をしておったであろう」
シールの件でアリサの魔術知識を借りたいと、先日メッセージを送っていたから、やっと予定があって来るようだ。ただある程度は解明が出来ているので、現地の専門魔術師から最終確認が取れるだろう。
やがて裏口の扉が開いて、パタパタと賑やかな足音がしてきた。まあ着いてくるよね、という人物だろう。
「小童は我が引き受けておいてやろう」
姿を現したのは、聖誕祭にあげたクマのぬいぐるみを持っているエナホと、向こうの世界の携帯端末をを持って来たアリサだ。
「フィーネおばたん」
アリサと握っていた手を離してエナホは一直線にフィーネの所にやって来た。
「またか、そろそろおばさんはやめい」
と言いつつも、フィーネは上機嫌にエナホを抱き上げて膝の上に乗せた。
「霞沙羅さんは吉祥院さんと一緒に家の方にいますよ」
「そうなのね。フィーネさん、その子をお願い出来る?」
「仕方がないのう。ほれ小僧、この小童に何か用意せい」
「はーい」
伽里奈はとりあえずお菓子とジュースを用意し始めた。後で何か作ってあげよう。
アリサは相変わらずフィーネに甘えているエナホを見てから、霞沙羅の家に向かっていった。
「ネコたんは?」
「あやつはあと一分ほどで来るであろう。待つがよい」
フィーネが言うように、一分ほどして、アマツはシャーロットに抱かれた状態で、談話室にやって来た。
「あー、エナホ君だ。また遊びに来たんだねー」
「ニャーン」
「ほれ来たであろう?」
「フォーネおばたんはすごい」
そりゃあ未来が見える女神様ですから。
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