心躍る日々の始まり -4-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
賑やかな宴会のような食後はみんな温泉に入って、それぞれに与えられた部屋に引っ込んでいったり、霞沙羅の家に行ってしまったりと、やどりぎ館はすっかり静かになった。
人も多くて食器の片付けが大変だったけれど、それも終わり、伽里奈はエリアスに手伝って貰って次の準備を始めた。
「奇跡の力は込めないでいいからねー」
火山の通路はこっそりと塞いでくれたそうだ。しばらくすればもうガスの事件は収まるだろう。
それはともかく、モートレルの近くから持って来た土に薬剤を混ぜた物を、エリアスの力でぎゅっと固めて、羊羹のような長方形にして貰っている。
「そういえば、私と戦っている時にも作ったことがあったわね」
「町のバリケード代わりにねー。ルーちゃんもいるし、折角習得した技術なんだしさー」
固めて貰った土の塊をナイフで小さく切っていって、土台の上に組み上げて、一見ミニチュアのような物を作っている。
そこに霞沙羅がやって来た。
「あれ、シールの件はどうなったんです?」
「雑談しながら今やって貰ってるよ。それはいいが説明用にお前のPCを貸して貰うぞ…、何作ってるんだよ」
料理でもぬいぐるみでも服でも無い、伽里奈が今まで作っていることを見たことも無いミニチュアの城壁や石作りの建物を作っている。
「プラモか? そういやガキの頃は模型屋の隅に風物詩モノってのが常連としてひっそり売られてたな。メーカーが倒産したと思ったが、まだ売ってたか」
「違いますよ。霞沙羅さんにライアの力を見せるために、ダンジョンの技術を使って戦場を作ってるんですよー」
「人間のダンジョンはこうやって作るのよ」
「今回は地上物なのでどっちかって言うと塔ですかねー」
地球では建物の建設とか大型の再開発とか、そういう場合のプレゼン用に業者がミニチュアを作るというのはよくある。
「建築のプレゼン用か?」
「違いますよ。これは霞沙羅さんとライアでやってもらう戦闘フィールドなので簡易的ですけど、ダンジョンとか塔っていうのは、儀式魔法で作るんですよ。基本的にはどこでもいいので、ラシーン大陸の土に薬剤を混ぜて、こうやってコアになる模型を作って、現地で儀式魔法を使用して、その土地の土とか石とか岩を巻き込んで作るんです」
「お前の所の学校のダンジョンもか?」
「あれは各職員が自分の部屋の模型を作って、理事会っていうか天望の座に申請して許可をとって、それで拡張しているんですよ」
「地下や洞窟を掘ってるわけじゃないのか?」
「ゴーレムを使って掘っていく人も大昔はいたんですけどねー、それじゃ時間がかかりすぎるから、土魔法の発展型を開発して、作成しているんです。他人に作らせると自分の趣味嗜好が反映出来ませんから」
「こんなのでダンジョンは出来てるのか?」
冗談みたいな話だけれど、伽里奈どころかエリアスまでもが知っているやり方だから、嘘ではない。
「作った後に本人かゴーレムでも使って最終調整していくんですけどねー。で、ライアにも話をして、町の外にある、騎士団の鍛錬所を借りて貰ってるんで、そこでこれを作るんです。簡易的なので、時間が来たら土に還ってしまいますけど」
「そんな魔法があるのか?」
「疑うならルーちゃんに聞いても同じ事を言いますよ」
「すげえな、ダンジョンは机の上で作られるのか!」
「ホントのダンジョンはこう、もっと立体的にパズルみたいに組み上げていくんですけどねー」
ダンジョンともなると一日どころか、一週間かけた程度では完成しない。じっくりとこだわりを持って長い時間をかけて作っていくのだ。
それこそ基本部分を作ってから、何度も何度も、下手をすすれば年単位で拡張していく。
「いいモン見たぜ。今度教えろよ」
「それでボクのPCなんか使うんですか?」
「自前の魔導書を入れてるだろ。それを見ながら話しをするんだよ」
「魔導書ってわけでもないですけど、まあどうぞ」
霞沙羅は伽里奈のノートPCを借りて自宅に戻っていった。
「なんか色々聞かれそうな気がする」
「こっちでダンジョンを作る研究はしているの?」
「一応したよ。本格的に実行には移してないけど、公園の砂場で箱みたいなのは作ったし、薬剤も魔術の触媒も確定してる。でもこの世界の建物を見てたらいらなさそうだし」
「札幌にあるビルも、ドラゴンが体当たりしても窓が割れる程度でしょうしね」
「硬すぎるよね、この国の建物は特に」
特に耐震性能に優れるこの国の建物は爆破解体が出来ないくらいに硬いという。もし伽里奈が塔を作る機会があったとしたら、間違いなく鉄骨と鉄筋を忍ばせるだろう。
とにかく、ライアに会いに行くのは明後日なので、早く仕上げないといけない。
読んで頂きありがとうございます。
評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので
よろしくお願いします。