心躍る日々の始まり -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
シールについては、今日はいきなりなので完全では無いけれど、不明部分がどういう機能を持っていて、これに通じる基本的な技術は短い時間ながらアリシアとルビィの2人がよく纏めてくれた。
不明部分には、何者かの人格や思考パターン、それから戦闘に関する発想や思想、それから腕力や脚力や反応速度などの、身体的特徴部分までもが記載されていた。それを見るとアリシアが解析しても結構な人物だったようだ。
これを元に戦闘能力の増強を図るのだろう。
それでいて使用した人間の基本精神部分には干渉すること無く、登録された人物のデータを武器を持った人間に貼り付けるという代物。
「さすがにこの人の記憶は無理みたいですけど、クセみたいなものはここにありますね」
「サイズの問題で、そこまでの情報はかき込めないようだナ。書き込む気も無かったような感じだガ」
「結局システィーが壊しちゃったけど、モートレル事件でマリナちゃんが持ってた剣が完全版だったのかなー」
「アーちゃんの偽物をやらされた子カ? どうなんだろうな、あの子は役者だから演劇部分の記憶を使ったのかもナ」
「二人が揃うとやっぱすごいな…」
完全な解明には至っていないけれど、基礎部分は解った。パラメーターの反映方法などはさすがの高位魔導士の2人でも、この短時間では解明出来ていないけれど、いやいや、不明部分が何なのか解っただけでも有り難い。
「多分なんですけど、シールって簡易的な小道具だから、そんなに長くは保たないでしょうね。それで貼った人間の能力に応じて、目的であるブースト部分に使う魔力が増減するから、稼働時間に差があるでしょうし、想定通りには必ずしも動かないでしょう」
「それもあって、持ち主の精神を支配しないのでハ? 効果が切れた時には逃げないとダメだからナ」
シールを使って催眠状態になっちゃって、効果が切れた時にそれまでの記憶が無かったら、説明を受けていて解っていても戸惑ってしまうこともある。敵に囲まれていたのなら致命的だ。そうならない為に、常に本人の意識を保っていれば、効果が切れたと解った時にすぐに逃走に移れるのでは、という推測だ。
「呪いの剣とか、あるわよね」
「誰それの魂が入った呪いの魔剣とかな」
「冒険中にも幾つか壊したわね」
横ではヒルダ達がフロマージュを食べている。
「あれは作った人格じゃ無くて、こう、精神に破壊衝動とかそういうのを影響させてそう動かしたり、本人とか魔族とか魔物とかそういう精神とか魂を封印して操らせたりだよねー」
「でもここまで細かく人が作った人の情報が入っているのは今まで見たことが無いナ。何となくの方向性なんだよな、普通ハ」
霞沙羅と吉祥院はルビィが手描きで纏めてくれた説明レポートを熱心に読んでいる。
「これ、よっぽど剣術とかで戦う人間の体を知ってる人じゃないと作れないよー。単なる魔術師では不可能だねー」
逆に魔術が使えないとこれは作れない。両方解っているような、アリシアや霞沙羅のような人間の手によるものだ。
水瀬カナタはそういう人間だということが見えてくる。
「それもいいけどアーちゃん、このケーキみたいなのはこっちで作れるの?」
「ちょっと手間はかかるけど乳製品だからいけるよ」
「今度教えに来なさいよ」
「乳製品ならオレんとこもな」
「アーちゃん、ウチもナ」
「乳製品なら神殿もいけそうかしら」
フロマージュを作るのに砂糖は必要だけれど、今度の春から甘蕪の増産がこの国で広まるから、じきに国内流通価格も下がっていくことだろう。
それはともかく、霞沙羅と吉祥院には折角シールの仕掛けが解ったのだから、最後まで解明したい。
「これはもうちょっと細かく説明出来るか?」
「ラスタルに戻ってゴーレム関係の書籍を参考にすればもっと上手く纏められるゾ」
「そうなのか?」
「ただ、違う世界の魔術だから3人の内の誰かのサポートは必要だゾ」
「あのー、今日は榊さんの歓迎会なんですけど」
「む、そうだったな」
なんか思ったよりも順調に謎が解明しているので、霞沙羅も吉祥院も色々と忘れてしまっていた。
「伽里奈君、もうちょっとこの3人と話をしたいんだが、やどりぎ館に招待出来ないだろうか」
しっかりとフロマージュを食べながらヒルダ達と日常的な会話を楽しんでいた榊からの申し出だけれど
「別に住民のお前が客人として招けば、その程度の人数なら問題無いぜ」
「料理的には、何とかなると思いますけど」
今日は中華料理をずらっと並べる事にしている。下ごしらえはある程度終わってしまっているけれど、麵とかご飯ものとか、増やすことが出来る料理はあるので、アリシアならどうにかは出来る。
ルビィも王者の錫杖が作られた世界の技術なので、魔術師としてこの魔術基盤にはとっても興味があるからもう少し話をしたいところだ。
「今日の主役が招待してるなら、皆来る?」
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