英雄様のお引っ越し -3-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
ジェラルド将軍が今回訪問してきた予定としては、今日はパスカール領の話しを聞かせて貰い、明日の昼食後にはお隣の領地に向かうことになっている。
あの後はヒルダと榊、ヒルダとハルキスの鍛錬を見てから、アリシアに「近衛騎士団の鍛錬に来るように」と言ってから、ルハードに案内されてモートレルの町を視察に行ってしまった。
「じゃあ、どうしよう。折角だし榊さんがやります?」
アリシア達の方はというと、続いては『気』の技の伝授だ。
「そうしようか」
とりあえずは武器を持った状態での切断技だ。練気で武器に纏わせた『気』に指向性を持たせて、刃を形成して、それで物理的な刃よりも鋭利に切断すること。
大陸でも上位に数えられる魔剣を持っている2人に果たしてこの技はいるのかという話ではあるけれど、場面によってはなんでもない剣を持っている事もあるだろうし、これはこの先に続いていく技の
基本なので身につけて欲しい。
でも2人も面白そうだと真面目に習得しようとしている。この辺はやっぱり、自分達と同じ位置にいる榊だけでなく、霞沙羅もアリシアも使えるから同じように習得したいという剣士の性でもあり、日々魔剣ばかりに頼っているわけではないからでもある。
「2人の練気については、今確認させて貰ったが合格の水準だ。ここから先はあれに形と性質を与える事を始めよう」
2人は榊の指導の下、それぞれの武器を手に、纏わせた『気』に意識を集中して、「刃」のイメージを送り込もうとする。
この『気』にイメージを投影するというのが、これから先に覚える技の基本。
さすがの2人でも、言われてからすぐには上手く刃を形作ることは出来ないから、色々と試行錯誤を繰り返すしかない。
「刃とはどういうものかという事を今一度確認するのがいいぞ。二人は自分の武器を自分で整備をしているか?」
そこで霞沙羅が口を出してきた。
「ある程度は、刀身を拭いたり、研いだりはしているわ」
それは冒険者だったので、自分の武器は自分で整備するのは当たり前という考えは今でも変わらずに持っている。
自分で手に負えなくなった場合は職人に相談するけれど、日常的に自分の扱う武器は自分で面倒を見るという習慣は忘れてはいない。
「その時に今一度刃とは何なのか、なぜ斬ることが出来るのかよく見るといい。そのイメージを『気』に与えるんだ」
「おう、帰ったら早速やってみるぜ」
この辺は鍛冶の霞沙羅が言えば説得力が高い。今一度、斬るという事がどういう事なのかを確認して欲しい。
2人共霞沙羅のその言葉に納得して、とりあえず今日の所は終わりとなった。ヒルダもさすがにこの後は夕食でジェラルド将軍達の接客が控えている。これからその席の準備をしなければならない。
「ではハルキスは私が送っておきますよ」
そろそろかなとシスティーもやって来て、ハルキスは帰っていった。
アリシアも夕飯の準備があるので今日はここまで。
その前にヒルダが屋敷からアリシアが使っていたランスを持って来た。
「なんだよこれ」
持って来たのは、とあるゲームの中で魔界と何度も戦いを繰り広げる苺パンツの騎士が投げるようなランスではなく、先端にちょっとした棒がついた長い柄だけだったので、その見た目に霞沙羅は拍子抜けしたが、これは明らかに魔装具だと解った。
確かにあんな長いモノを持って徒歩で冒険とかあり得ない。
「ここから魔力結晶を作るんですよ」
アリシアがちょと魔力を供給すると、棒の所から1メートルくらいの槍の形をした魔力結晶が生成された。
「長さは調整出来るんですよ」
「起動の鍵として、多少は魔法を使えないと使えないじゃないか。なんでヒルダに貸したんだ?」
「ヒーちゃんもハルキスも初級魔法くらい使えますよ。一般的には霞沙羅さんの言ってることがハードルになって、普通の剣士には使えなくて、欠陥品扱いになってたから、ダンジョンにしまわれてたんです」
「そういやそうだったな。榊が一切使えないから同じだという感覚が残るな」
魔術ではなく、魔力を流すだけで良いので、異世界人ながら霞沙羅にも使える。
長さも無いし、重くも無いので持ち運びには便利だ。強度も持続力も、実体のある槍に比べると不安定ではあるけれど、サブの武器としては優秀といえる。
「お前が武器を持ってない時に魔力結晶を使うのはこれのせいか?」
「発想としては便利じゃないですか。日本に行ったら『気』があってそっちも使いますけどねー。ボクは魔術師でもあるので」
「お前これ、使わないならしばらく貸せ」
「ええ、いいですけど」
アリシアが持っている愛用の魔剣に比べるほどの出来ではないけれど、これも一つのアイデアだなと、霞沙羅は研究用に借りることにして、今日はやどりぎ館に帰っていった。
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