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まずは新しい年の始まり -5-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 久しぶりにヤマノワタイの実家に帰ってきたカナタは、まずは床掃除のために掃除ロボに電源を入れつつ、簡単に家の状態を確認した。


 一週間程度はここに滞在するので、まずは食材の有無を確認した。さすがに肉や野菜は残していっていないけれど、レトルト品やインスタント品がいくつかあるのみ。これは早々に買いに行った方がいいだろう。


 料理を作るのは自分ではなく、アオイの役目だから何を揃えるかは彼女に任せるとして。


 ここは郊外にある、水瀬家が持っている山の中だから、喧噪まみれの横浜と違って静かでいい。


 ただ、山の中という表現はしたけれど、山自体は田園地帯にほど近い所にあり、標高的には300メートルはない。そんな低い山の中腹あたりを伐採して平にして建てた家なので、鬱蒼とした森の中ではなく、目の前は開けていて、遠くの市街地を見ることも出来る。


 ちなみに、親達が住む家は、もう少し低いところに建っている。


 ひと山がまるまる水瀬家ということもあって、部外者の出入りが出来無いから、魔術の研究だけでなく、本職である鍛冶をするにも都合がいい。


 床を這うような四角い清掃ロボが静かに床掃除を始める中、カナタは賞味期限が近づいてきた新品のペットボトルのお茶を開けて、ソファーに座って一息入れた。


「私は買い物に行ってくるから」


 何を買うか決めたアオイは車に乗って出掛けていった。


「さてさて休みの間は何をしましょうかね」

 横浜では大きな作業は出来ないので、この一週間の内にやることをやってしまおう。それからでっちあげたレポートを協会に提出しておこう。


「これから金星の接近でマリネイラとやらの力が増すようですしね。私は知ったことでは無いですが、ちょっと大きな騒動を起こしてくれると、色々と観測が出来ますわね」


 当然、あの国の魔術師や軍なども警戒しているだろうから、組織的にも小さくて弱い信仰者達がどこまでやれるかという懸念はある。


 ただ、幻想獣の出現に乗じて騒ぎが起きるのなら、ちょっとは期待出来る。


「何かあればまたあの腕輪で希望者を融合でもさせますか。さて、そろそろ扉を開ける時間ですわね」


 時計を見るとそろそろ待ち合わせの予定時間が近づいてきたので、カナタは家から出て、山の森の中を進んでいく。


 木々に囲まれたその一角に一軒の洋館的建物の廃墟が見えてきた。


 いや、廃墟といってもそれは表側だけで、建物であったであろうその建築物に、その奥はなく、石作りの建物の表側だけが壁のように突っ立っているだけ。


 カナタはその廃墟にある立派な扉を開けて、一人の男性をヤマノワタイに迎え入れた。


 身長は170くらいの、180近いカナタよりは背の低い男性。多少細めで、比べるならアリシアほどではないけれど、中性的な雰囲気が漂っている。


「どうです、良さそうなのは見つかりましたの?」

「うん、この人がいいと思う。立ち位置的にも情報が入ってくる人間だからね」


 名前は沼倉ソウヤ。カナタの3人目の仲間だ。


 彼は超小型のカメラ機器を服からとって、カナタに渡した。


「それでは早速中を確認させて頂きましょう」


 2人は家に帰り、そのカメラで撮られた人物を確認した。


「調布にある軍の情報処理部門にいる一人だよ。少尉さんだったかな。東京の旧二十三区の観測所の一つに勤務してる」

「この人物に化けるわけですのね。それではここにいる間に解析して、準備をしましょう」


 しばらく寺院庁には近寄らないように決めたので、今度は軍人を利用する事にした。彼はその成り代わるターゲットを探してきたわけだ。


「店の休業中は何してればいい?」


「私は協会に繋ぎを付けつつ、ここでゆっくりするつもりですわ。あまり動くと、諜報機関に目立ちますからねえ」

「僕らが何かやってるの、なんで怪しまれてるんだろ」


 こっちでは本当に何もやっていない。まあ怪しげな連中にも武器を作ったりはしているけれど、それは水瀬家の通常営業だ。それはカナタの親もそうだったし、祖父もまだやっている。


「現役の館はいくつかありますからねえ。そこにヤマノワタイの人間が出入りでもしているのでしょう。館同士は繋がっていませんし、関係の無い人間には認識阻害が働くそうなので、いかな私でもそこにたどり着く事は出来ないでしょうから、警戒しておくしかないですかね」

「あの扉と繋がることはないんだっけ?」

「元館の廃墟は、かつての記憶を利用する事しか出来ませんわ」


 さっきの扉だけの廃墟は、昔にここにあった、やどりぎ館と同種の館の遺構だ。


 あの扉は現役時代に繋がっていた世界とを結ぶことは出来るけれど、それだけ。とうの昔に神々から放棄された館の抜け殻。


 カナタ達は館の記憶にある場所にだけ移動することが出来るので、それで限定された世界を移動している。


「行った先でやられてしまえばそれまでですが、まあそこは覚悟の上ですし、今後も慎重にいきましょう。事を起こしたい野心のある人間ならいくらでもいますからね。役に立って貰いましょう」

「今力を入れている日本には妙なのがいるからね」

「私が出張っていけば黙らせることは出来るでしょうけれど、その後ろの組織が大きいですからね、変に触らない方がいいでしょうね」


 似ている世界観だけあって、組織の大きさは解る。ちょっと遅れた文明とはいえ日本の軍隊に喧嘩を売るつもりはない。


 アシルステラとかいうかなり遅れた文明の世界は、国々の繋がりはバラバラだし、国の中も領主だの何だので細かく分かれているので、国のトップでも殺さない限りは連携の薄さもあってそれほど大事にはならないだろう。


 ただまああの世界は、実験場にはいいけれど、機械文明がないのでヤマノワタイの機械が使えないから動きづらい。それに人間の見た目の問題もあって、扉から移動出来る地域で動くにはやや不利で、あまり長居が出来ない。


 その他の世界にも行ってみたけれど、やはりあの日本を中心に動くのが都合がいい。


 あの世界の魔術を中心に、他の世界からもっと多くのサンプルを集めて、そうすればカナタの目的は果たせるだろう。


「私達が焦る必要はありませんわ。とりあえずこの一週間はのんびりしましょう」

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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